東京ロボティクス、小型軽量で高精度なロボット用3次元カメラ Torobo Eye「SL40」を発売

東京ロボティクス株式会社は2021年1月15日、新たにセンサ分野に進出し、その第一弾として Torobo Eye「SL40」を販売すると発表し、記者会見を行った。「SL40」はパターン照射による歪みを検出して奥行きを計測するStructured Light方式(アクティブステレオ方式)を用いた3次元カメラ。サンプリングレートはプロジェクション方式の深度計測カメラとしては業界最速クラスで10fps、奥行き計測の標準偏差は0.06mm。高速素子を使ったカメラと、コントローラーにはGPUを用いた並列演算を行うことで高速化した。

手のひらサイズ、460g

ロボットの手先に搭載可能

特徴は高精度であること、センサー本体は手のひらサイズで460gと軽量であること。そのため協働ロボットの手先や双腕ロボットの頭部などに取り付けることができる。奥行き画像とRGBを同時に撮影できるので、AI連携が容易な点も特徴の一つだ。主な用途としてはバラ積みピッキングや組み立て、外観検査、形状測定などを想定する。1月15日から受注を開始し、2月下旬からの出荷を予定する。

パターンを照射して、その歪みから奥行き情報を取得

高精度な三次元点群を安定して取得可能

価格は現在社内調整中だが、おおよそ100万円から130万円を想定する。目標出荷台数は初年度50台。2年目以降は100台以上を目指す。

「SL40」データシート


精度・価格が「手頃」なビジョンセンサー

東京ロボティクス株式会社 代表取締役 坂本義弘氏

東京ロボティクスは早稲田大学 菅野重樹研究室発のスタートアップで、2015年1月創業。主に全関節にトルクセンサを内蔵した力制御可能な協働ロボット「Torobo Arm」の開発を行ってきた。当初は研究用プラットフォーム向けだったが、2020年1月にヤマハ発動機と資本業務提携を行い、2億円を調達。現在は量産型ロボットアームの研究開発を共同で進めている。

現在の体制は、正社員数11名、非常勤・インターン22名。創業以来6期連続黒字だという。同社は以前からトルク制御に加えて画像認識技術を二本柱としたいとしていた(関連記事 「川崎「ロボットテックミートアップ」で東京ロボティクス、クボタ、GBSの3社が講演」)。今回のTorobo Eye発売でそれが実現することになる。東京ロボティクスが新製品発表会を行ったのは創業以来、今回が初めて。

東京ロボティクス株式会社 代表取締役の坂本義弘氏は、「創業当初からロボット事業ならではの成長を意識し、小規模でも顧客に受け入れられることを重視してきた」と述べた。将来目標は人間共存ロボットの実現だが、そこまでの道のりは遠い。そこで力制御や移動マニピュレータなどの技術を磨いてマネタイズしながら進めている。

将来目標は人間共存ロボットの実現

産業用ロボットの世界でもようやく、事前のティーチング・プレイバックだけでなく、ロボット自身が見て考えて動くロボットが使われ始めている。東京ロボティクスは特にモーター制御に力を入れている。Toroboシリーズはこれまでに企業の研究所や大学35機関に約50台を販売してきた。そしていまヤマハと提携して量産化しようとしている。

Toroboシリーズ

ロボット開発するなかで、良いビジョンセンサがない、精度も価格も手ごろなものがないと考えていたという。それが今回のセンサー販売につながっている。ではどんなセンサが必要なのか。坂本氏は3点を挙げた。一つはロボットの手先に取り付けられるくらい軽量小型であること。そのほうが段取り替えが容易だからであり、協働ロボットの利点を活かすことができる。固定カメラでは協働ロボットの強みが活かせない。

二つ目は3次元を計測できること。奥行きがわからないとロボットがどこまで手を突っ込めばいいのかわからない。3つ目は高速・高精度であること。産業現場ではタクトタイムが重要だからだ。これらの要件のもと、1年9ヶ月前にプロジェクトを発足させて、開発主任の岡弘之氏、 プロダクトマネージャの川西亮輔氏の二人が中心になって開発を進めてきた。

求められている3次元センサ




投光色を変更可能、多様な色の物体でも高精度で認識

東京ロボティクス プロダクトマネージャ 川西亮輔氏

デモは開発主任の岡弘之氏、製品説明はプロダクトマネージャの川西亮輔氏が行った。なお川西氏の前職は三菱電機で、2015年から2017年にかけて行われた「Amazon Robotics Challenge(旧名称 Aamzon Picking Challenge)」にキーマンとして参加していた。

「SL40」はデプス画像、3D点群、カラー画像を取得することができるセンサーだ。操作するソフトウェアのGUIもシンプルで、簡単にカラー表示やレンジ表示に切り替えることができる。複数の異なる色の物体が存在していても欠損なく奥行き情報を得ることができる。

デプス画像、3D点群、カラー画像を取得することができる

また特徴として投光パターンの色を変更することができる。そうすることで様々な色の対象であってもノイズが少ない情報を得ることができる。計測アルゴリズムは複数搭載されており、選択することができる。

顧客のシステムに組み込む場合には提供されるAPIを用いる。ROSパッケージも提供しており、研究者にとっても使いやすくなっている。

ユーザーのシステムに合わせた組み込みが可能

想定シーンはバラ積みピッキングやピック&プレース、組み立て、キッティングなど。カラー画像も同時に取得できるので、AIと併用してマシンビジョンとして用いることもできる。3次元情報とカラー画像を用いて外観検査、形状判定、良否判定などのアプリケーションに用いることができる。

今後は、ロボット手先用の「SL40」だけでなく、さらにラインナップを拡充する予定。より広視野のカメラや別方式のセンサも開発中だという。

センサー本体とコントローラー間はUSB3.0で接続する

コントローラー背面




社内デモ・展示会出展も予定

小さなM2のネジのデプス・点群も安定して取得可能

東京ロボティクスとしては、製品を世に出すことで想定ユーザーからレスポンスを得たい考えで、「SL40」は2月16日から18日の午前中に社内デモを行うほか、3月9日-12日の日程で幕張駅で開催される予定の「FOODEX JAPAN 2021」に出展する。社内デモはウェブサイトから申し込みできる。

社内デモ・展示会にも出展予定

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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