新型コロナウィルス感染症により、企業と健康保険組合に求められる従業員の健康管理のあり方も大きく変化する中、テレワークをはじめとする急激な環境変化とそれに伴うストレスや運動不足、感染リスクに対する不安など、従業員の健康管理の課題は大きくなっている。
企業にとっても、従業員ひとりひとりの健康に配慮することが、持続的成長に不可欠な要素であり、その中で、人生100年時代に向け、予防医療や健康増進など人々の健康な暮らしを持続させるデジタルヘルスが注目されている。
このような流れの中、株式会社東芝の100%子会社である東芝データ株式会社は、東芝の浜松町本社と川崎本社の社員食堂において、12月1日より、東芝グループの電子レシートサービス「スマートレシート」を導入した。
同グループは、同社がスマートレシートによって収集した食生活関連データを、東芝が推進する「精密医療」領域におけるAI技術を活用したデジタルヘルス事業に組み合わせる実証実験を来期より実施し、従業員の健康増進をサポートすると述べている。
スマートレシート導入について
今回、スマートレシートを導入したのは、東芝グループの従業員約1万人を対象とした社員食堂だ。同サービスにより、利用者は、食べた日付・メニュー・金額などの利用データの確認に加え、食生活の振り返りを行うことができる。また、同社は収集したデータを分析し、個人に合った栄養バランスの良いメニューや野菜不足を補う一品を推奨するお得なクーポンを送付することが可能となり、従業員の食生活の改善のサポートに貢献できる。今後、同社では、スマートレシートを東芝グループの他の事業所の社員食堂にも展開するとともに、社員食堂で収集した食生活関連データと、同サービスを導入しているスーパー、飲食店、大手チェーン店などの購買データとの連携を図るとのことだ。さらに、ウェアラブルデバイス等で収集できる体温・血圧等の日常のバイタルデータとの連携も進め、希望者に対して個別化された健康アドバイスを行うといった、ヘルスケアサービスとしての展開も予定している。
▼【スマートレシート】
同グループは、同実証実験をモデルケースとして、デジタルヘルスを活用することで、with/afterコロナにおける従業員の健康維持と企業の健康経営の実現に貢献して行くと述べている。
「精密医療」領域におけるAI技術を活用したデジタルヘルス事業
東芝のデジタルヘルス事業では、健康・医療・介護の分野でAIやIoTなどのデジタル技術を用いて、疾患の治療や予防に役立てている。スマートフォンのアプリやウェアラブルデバイス等を活用し、心拍数や歩行距離など各種生活行動データから健康状況を把握したり、データ分析から発症の時期予測を行ったりするなど、その応用範囲は多岐にわたる。また、東芝グループでは「精密医療」領域におけるAI技術として、健康診断データから将来病気になるリスクを可視化できる「生活習慣病の発症リスク予測AI」を事業化しており、AIがこの発症リスクを下げるための生活習慣改善ソリューションを提案するサービスを2021年度上期から新たに開始予定だ。
生活習慣病の発症リスク予測AI
健康診断結果から生活習慣病発症のリスクを6年先まで予測する疾病リスク予測AIは、2018年10月、株式会社東芝と東芝デジタルソリューションズ株式会社がSOMPOホールディングス株式会社と共同開発したもので、2020年7月からサービスを開始している。
生活習慣病の発症リスクを下げる生活習慣改善ソリューションを提案するAI
生活習慣病の発症リスク予測AIIにより、将来病気になる可能性を可視化し、自身の健康や生活習慣を見直す機会の提供を進める中で、「具体的な改善提案が欲しい」「どの生活習慣を改善したらいいかわからない」という多くの声が上がったため、保健指導の場でも指標として使われる「体重」に注目し、生活習慣病の発症リスクを低減する改善ソリューション提案AIを開発(特許出願中)。各疾患のリスクを下げるための体重減少目標と、体重減少を達成するための生活習慣の改善ソリューションを、数十万人分のデータに基づいて学習したAIが提案する。