TIS株式会社とDataMesh株式会社は、株式会社大林組の工事においてBIM/CIMとMixed Reality(以下、MR)技術を活用し、工事現場の生産性向上に向けた作業手順を簡単にMR上で再現できるDataMesh Directorの試行を実施したことを発表した。(冒頭の写真は武蔵小杉駅の工事現場 MR上で補強斜梁の施工手順を確認しているところ)
今回TISがコンサルティングを行い、DataMeshが施工ステップなどの動的な3D手順を簡単に作成し投影できる「DataMesh Director」を提供し、鉄道工事の現場でのBIM/CIMモデルのMR投影が有効であることを確認した。
測量・調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理・更新の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図るもの
工事現場の課題と課題解決に向けた試行について
駅の改良工事など営業線近接の鉄道工事は一晩の作業時間が終電から始発までの数時間に限定されることから、作業の手戻りは大きな損失になる。そのため作業手順の確認には発注者、元請、協力会社の作業員の間で綿密な協議を重ね、各役割を徹底させるまで多くの時間を費やすことが必要だった。今回の試行では「Microsoft HoloLens2」やタブレット端末を使用し、デバイスに「DataMesh Director」で作成した作業手順を表示することで作業時間短縮を図った。
■実際の工事現場に重畳表示する確認を以下2つの現場にて実施
1.東海道本線戸塚・大船間横浜環状南線交差部上部工新設
橋梁架設工事では9線全線の線路を閉鎖して約100分という限られた時間内に主桁の送り出しを完了させる必要がある。安全かつ確実に作業を進めるため事前にあらゆるリスクを洗い出し、対策を実行した。この桁の送り出し手順をMR投影することで、作業の一連の流れが可視化され、施工手順や危険作業、危険個所の確認がしやすくなり、工程管理を効率化できることを確認した。
2.横須賀線武蔵小杉駅2面2線化他(鉄道駅のホーム増設工事)
ホーム増設工事では旅客の仮設通路内に補強梁が露出するため、旅客者の視線での作業計画が必要になる。複雑な施工手順をMR投影で可視化し、複数の作業員や職員で確認することで、実際の作業のスケール感や旅客への影響度を確認することができ、より良い施工計画立案に役立てることが分かった。
DataMesh Director試行の背景
建設業界では就業者数の減少や高齢化により、大量離職の懸念があるとともに土日の現場稼働の影響もあり他産業と比較して労働時間格差が大きく、今後若者を中心とした新規入職者の確保や、生産性向上による省人化ならびに長時間労働の是正など働き方改革や労働環境の改善が課題となっている。そのため国土交通省は2025年度までに20%の労働生産性向上を目指す「i-Construction」を掲げ、ICT活用やBIM/CIM活用を推進している。
「ICT の全面的な活用」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組み
大林組は施工管理者向けVR教育システム「VRiel」やAR合意形成ツール「FutureShot」などを開発し、XR技術を活用した人材育成を図っているが、主に施工物の完成形の表示であるため、現場作業の中での活用は限定的だった。そこで「Microsoft Mixed Reality」パートナープログラム認定パートナーであるTISおよびDataMeshとともに、作業ステップごとのBIM/CIMモデルを使用し、より効果的なXR技術の活用を目指した。
DataMesh Directorの特徴
DataMesh Directorは”XR技術実装の民主化を実現する”をコンセプトにDataMeshが独自に開発したデジタルツインプラットフォーム。
1.現地で動的3D手順を重ねて確認できるため、工事の生産性が向上
動的な3Dアニメーションで作業手順を現地で事前に確認できるため、役割分担の決定にかかる時間を大幅に短縮できる。また、若手作業者でも正しく作業を理解できること、施工中にも作業手順の動画を投影することで間違いを未然に防止できることから、生産性の向上が見込まれる。
2.BIM/CIMの現場での活用手段として有効
施工現場で詳細な作業指示や位置確認を行う場合は2次元の施工図面を切り出す方法が一般的だが、DataMesh DirectorではBIM/CIMを3Dモデルのまま活用可能なため、立体的な完成のイメージを確認・共有でき有効的。
3.誰でも簡単に動的3Dコンテンツを作成・投影可能
BIM/CIMがあればPowerPointのスライドを作成するように施工ステップを作ることができるため、従来よりも簡単に作成・修正が可能。また、作成物はクラウドに保存され、複数媒体で投影でき、遠隔地同士での情報共有など幅広い場面で活用できる。
試行についてのコメント
・武蔵小杉駅工事事務所 主任 越智啓太氏からのコメント
・JR横浜環状南JV工事事務所 工事長 錦織陽一氏からのコメント
更に技術が進めばより細かな現場検証や墨出し等への活用も期待できると考えます。これらICTやBIM/CIMを有効に活用することにより、現場業務の効率化をより図っていきたいと思います。
・生産技術本部 先端技術企画部 主任 山中孝文氏からのコメント
建設現場での活用場面は多くあります。今後は現場との意見交換を行いながら、現場で誰でも使える普通のツールとなるように、TIS、DataMeshと一緒に建設現場への実装を進めていきます。
今回のTISとDataMeshの協業に関し、日本マイクロソフト株式会社 Mixed Realityグローバルセールス アジア・パートナーリード 村中徹氏は次のようにコメントしている。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。