太陽光発電/エネルギー業界の動向と今 アイ・グリッドが「仮想発電所 デジタル推進プロジェクト」と「スマ電CO2ゼロ」を発表

日本は「2050年までにCO2排出量実質ゼロ、脱炭素社会を目指す」という目標に舵を切った。世界的にもSDGsが叫ばれ、その中には気候変動問題や環境問題の解決とリンクして、脱炭素社会に向けての動向に注目が集まっている。
日本が「CO2排出量実質ゼロ」を達成するには多くの課題が立ちはだかっているが、キーとなる要素のひとつが「太陽光発電」だ。

「ロジスクエア川越II」太陽光パネルの設置例 (アイ・グリッド・ソリューションズ提供)

エネルギー業界の動向

「日本のエネルギー産業は大きな変革のときを迎えている。パリ協定や2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする政府目標など、脱炭素は世界的に不可避の流れにある」アイ・グリッド・ソリューションズの秋田氏は力強く語る。

株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 常務取締役 秋田 智一氏

株式会社アイ・グリッド・ソリューションズは、CO2削減と経済性を両立させるグリーンテクノロジーを推進し、2021年1月21日に「仮想発電所 デジタル推進プロジェクト」を発足、同時に非FITの再エネ電力を家庭に供給する「スマ電CO2ゼロ」の販売開始も発表した。

発表会には、 アイ・グリッド・ソリューションズの常務取締役の秋田氏、アイ・グリッド・ラボの取締役CTOの岩崎氏らが登壇した。

株式会社アイ・グリッド・ラボ 取締役CTO 岩崎 哲氏




FITとは

「FIT」(フイット)とは、太陽光や風力、水力や地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーによる発電を固定価格で買い取る制度。この制度によって買い取られた再生可能なエネルギーによる電気は「FIT電気」と呼ばれている。
「脱炭素社会」を目指すには石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の使用を減らしていく必要がある。電力調査統計など発表によれば、2020年の日本の全発電電力量で「火力発電が占める割合は74.9%」にものぼる (太陽光8.5%、水力7.9%、原子力4.3%、バイオマス3.2%、風力0.9%など)。

例えば、産業界や消費者が現状のさまさまなエネルギー利用を石油などの化石燃料から電気に変えていくと宣言したとしても、その「電気の大部分が石炭、LNG天然ガス、石油を燃やして発電する火力発電」によって生成されているうちは、電気の需要が高まるほど炭素は発生して「脱炭素」とは言えないのが実状だ(日本は先進国の中でエネルギー自給率がとても低い)。そのため、「脱炭素」には再生可能エネルギーによる発電の割合を上げていくことが重要であり注目していくべき、ということになる。
また、昨今の大規模災害発生時に系統が停電した場合の対応方法の模索の観点から、分散電源や蓄電池の活用と必要性が注目されている。

アイグリッドは、そこに更に踏み込む。
太陽光発電やFITの存在は、我々のような一般消費者にもお馴染みになってきたものの、まだ様々な課題があるようだ。例えば、FIT制度を利用したモデルでは、各戸や施設で発電した電力を「送電網」(系統)に直接送電するため、結果的にもともとの送電網のキャパシティを圧迫して負荷がかかるという。また、再エネ賦課金を上昇させることにも繋がるという。


そこで、VPP Japanが実施する「オフグリッドモデル」では発電した電力を送電網ではなく「施設」に送電することで、送電網キャパシティを圧迫しないしくみを取り入れた。この場合は、再エネ賦課金を上昇させない。いわゆる地産地消から、さらに自分で作って自分で消費する自産自消ということ。


しかし、自産自消の場合、今まで「太陽光発電は余剰に電力を発電しないように配慮」されてきたという。例えば、大きなショッピングモールの場合、屋根全面を使わずに一部にのみ太陽光パネルを設置するなどだ。実際にはもっと多くを発電できる敷地がありながら、送電網の圧迫を防ぐ意味でもあえて利用してこなかった。


太陽光発電は供給が不安定ではないのか?

一方、太陽光発電は不安定ではないか?という疑問を持つ人も多い。たしかに、晴れた日中は余剰電力が出るほど発電しながらも、雨や曇り、夜間には発電量は限られてしまう。それにはEV充電器や蓄電池の活用を見込む。
本来は、屋根全面にパネルを設置することで発電量のキャパを増やすとともに、AIを使って必要な発電量と、消費されるであろう受電量をより正確に予測する。

AI予測ロードカーブの画面例。電力の使い方のクセをAIが学習し、未来の消費量を予測して表示。事前に注意すべきタイミングがわかる。省エネノウハウとAI予測で、事業所ごとに最適な省エネアクションを提案する「エナッジ

更には余剰電力をEV充電器や蓄電池に溜め、それらの蓄電量もAIが最適に制御することで、地域内での再生可能エネルギーを最大に引き上げよう、というプロジェクトだ。


この全体のしくみを「REAL New Energyプラットフォーム」と名付けた。





「スマ電CO2ゼロ」

それを踏まえて、1月21日からはじまった「スマ電CO2ゼロ」とは何かを理解したい。
今回発表された「スマ電CO2ゼロ」は全国各地域のスーパー、物流施設などの屋上(ルーフトップに太陽光発電所を設置、余剰電力を集約して卸電力として小売りに活用、非FITの再生可能エネルギーとして家庭に供給するモデルとなる。


火力発電などの化石電源と、FIT電源に再生可能エネルギー指定の非化石証書を組み合わせることによって、実質的に再生可能エネルギー比率100%、かつCO2排出量ゼロとする電気。
「スマ電CO2ゼロ」は、同日にアイグリッドで発足した脱炭素社会の実現を加速化する「仮想発電所 デジタル推進プロジェクト」に伴い、地産地消の分散型発電所で発電されて余った電力を有効活用し、将来的に家庭へ非FITの再生可能エネルギー電力を届けるもの。
グループ会社のVPP Japan、アイグリッド・ラボと連携し、非FITの再生可能エネルギーの調達と最適な需給調整をAIを駆使して行い、環境に良く、経済性にも配慮した安定供給エネルギーを実現したい、という。(スマ電CO2ゼロのイメージキャラクターは”のん”さん)。


スマ電CO2ゼロの特徴

(プレスリリースより)
1) CO2排出量が実質ゼロ
・お申込み前にWebシミュレーションによって、CO2排出削減量が確認できます。
・ご契約後は、マイページ上で電気使用量に応じたCO2排出削減量が表示され環境貢献が実感いただけます。

2) 基本料金は0円
・エリアごとに電力量料金単価(1kWhあたり)を設定。固定の料金はなく、電気使用量に応じた料金のみお支払いいただきます。

3) 解約手数料は0円
・契約期間中の解約でも解約手数料は発生しないためお気軽にご利用いただけます。
※プラン・詳細に関してはホームページ(https://smaden.com/)をご覧ください。


【スマ電CO2ゼロプランを使用した場合の比較】
例えば4人家族(50A)の場合、年間で約5,000円お得※になります。
さらにCO2排出量は年間で約1,800kgの削減になります。
※年間約4,200kWh使用、2021年1月時点の東京電力エナジーパートナー従量電灯Bとの比較





「R・E・A・L New Energy Platform」構想

VPPJapanが設置した太陽光による再生可能エネルギーの発電施設を軸に、DER(分散型エネルギーソース)を中心とした分散型エネルギープラットフォームを展開し、余剰電力をEV充電器、蓄電池に溜める。AIで最適制御・コントロールして、地域内における再生可能エネルギーを最大化しよう、という構想。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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