スタートアップ企業のエクサウィザーズは、NVIDIA Jetsonプラットフォームを搭載した小型なエッジAIカメラ「ミルキューブ」を開発・提供している。観光施設や教育施設などで導入が進んでいるという。
顔認証、動線解析、ポーズ認識をはじめとした独自のアルゴリズムを組み合わせることにより、「三密」のモニタリング、店舗での顧客の行動解析、物流分野での動線解析、介護施設の見守りなど、さまざまなシーンでの活用が期待できる。NVIDIAが自社ブログで発表した。
なお、エクサウィザーズはNVIDIAのInceptionパートナーになっている。
「三密」の可視化
施設内の混雑率を計測して「三密」の可視化を行う。介護施設では、入所者の日常の様子をモニタリングして健康管理をサポートする。また、保育園では子どもの行動や表情を検知して自動で撮影することもできる。これまでカメラは映像を記録することから始まり、自動補正、顔認識などの様々な機能が追加されてきたが、AIを搭載することで、これまでの暮らしやビジネスを大きく変える可能性を示唆している。
エクサウィザーズは、NVIDIAのInception パートナーで、AIによる社会課題解決を目指すスタートアップだ。10cm四方と小型ながら高性能なエッジAIカメラ「ミルキューブ」を開発、独自のAIアルゴリズムとNVIDIA Jetsonプラットフォームが融合することで、ミルキューブは用途に合わせて複数のAIアルゴリズムを組み合わせ、同時に実行する処理能力を持つ。エッジ側で情報処理をリアルタイムで行い、必要なデータだけをサーバに送信するため、サーバ側の処理にかかるコストの節約やセキュリティリスクの軽減も実現できる、としている。
混雑状況の可視化
例えば、施設内の対人平均距離や混雑率を計測し、混雑が発生した場所をリアルタイムで特定。ソーシャルディタンスを測定するツールとして活用できる。
広島県の一部の美術館や資料館などはミルキューブを既に導入しており、プライバシー保護の観点から人物をアイコンに置き換え、広島県観光ホームページなどでリアルタイムに近い観光施設の混雑状況を発信している。
AIによるベストショットの撮影
教育施設や児童福祉施設等でも導入が進んでいる。実証実験を実施した静岡県掛川市の保育園、トットハウス掛川駅南では児童の行動や表情をAIが検知して、自動でベストショットを撮影するシステムを導入した。ブレている写真があれば補正し、専用サイト上でおすすめ順に掲載することで、日常の中で自然と生まれる最高の笑顔をたくさん写真に残すことができる、とした。今まで探すのにひと苦労だった「我が子の写真」もすぐに見つけることが可能になり、「普段は撮影できない自然体の写真であったり、保育士と遊んでいる写真が撮れる」という声が寄せられている。
この他にも、顔認証、動線解析、ポーズ認識など、さまざまなアルゴリズムを組み合わせることにより、介護施設での入居者モニタリング、小売店舗での店舗解析、物流分野での動線解析・業務改善、スポーツ分野でのデジタル化によるパフォーマンスの改善などが期待される。
NVIDIAのプラットフォームとエコシステムが開発を加速
低消費電力で、複数のアルゴリズムをリアルタイムで同時に実行できる演算能力の高さから、エクサウィザーズはNVIDIA Jetsonをミルキューブに採用。NVIDIA Jetsonには推論用のプラットフォームとして。AIアプリケーションを構築するために必要なシステムソフトウェア、ツール、最適化したライブラリのオールインパッケージが「NVIDIA JetPack」として提供されている。AIアルゴリズムのエッジ側への実装も短期間で行うことができる。エクサウィザーズは、その中でもAIモデルの推論を最適化するランタイム「NVIDIA TensorRT」を活用、推論のレイテンシーを最小限に抑えつつスループットを最大化させている、としている。
NVIDIAは、Jetsonプラットフォームを採用した製品を量産するうえで必要なノウハウを持つエコシステムパートナーのネットワークを世界中に構築。パートナーのエクサウィザーズもその他のパートナー企業と協力して、JetsonのモジュールとJetPackをミルキューブの要件に合わせて短期間でカスタマイズすることができた。
さらに今後、カメラシステムの構築には、コンピュータービジョンのためのMutimedia APIや、NGC Catalogなど、NVIDIAのソフトウェアスタックを活用して効率的なサービス管理の仕組みの構築を計画中だ。
NVIDIAは「ミルキューブが活躍するシーンは、ますます増えていくことが期待できる」と締めくくっている。
ミルキューブ 公式サイト