アクセンチュアと国立国際医療研究センターが説明可能な「生活習慣病リスクのAI予測モデル」構築に向けた共同研究へ

アクセンチュア株式会社と国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)は、糖尿病・高血圧症・脂質異常症など、生活習慣病の将来リスクの確率を提示する、解釈性の高い人工知能(AI)モデルの構築を目指して、共同研究を開始することを発表した。10年近くかけて蓄積した約12万件におよぶ健康診断のビッグデータを基にAI学習を行い、AI推論のブラックボックス化をなくした「説明可能なAIモデル」を目指す。


生活習慣病のビッグデータを活用

今回の共同研究では、NCGMが実施している関東・東海地域に本社を置く企業が参加した職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集されたデータを活用する。J-ECOHスタディは、2012年にNCGMが開始し、働く世代における生活習慣病や作業関連疾患を予防し、職域健康診断の有効性や効率を高めることを主な目的とした大規模な職域多施設研究だ。
関東・東海に本社を置く10数企業の社員15万人以上を対象として、定期健康診断、循環器疾病・死亡・長期病休など事業場の健康管理資料を収集・分析する。さらに、働き方や食生活・運動に関するサブスタディも行われている。


疫学的にも解釈可能な予測モデル構築

このうち約12万件の匿名化された健康診断データを分析。健康診断データに含まれる「既往歴」「服薬状況」「血液検査結果」などの健康データや運動や喫煙、飲酒などの生活習慣データなどを分析し、生活習慣病のリスク要因について疫学的にも解釈可能な予測モデル構築を目指す。
医療業界においては、AIが予測する結果のブラックボックス化が課題になっている。AIが予測したプロセスが解らない、という問題だ。これに対して、同社は医療業界において、「説明可能なAI」の活用を目指す、としている。
この共同研究で構築するリスク予測モデルは、今後、論文等で公開する予定だ。アクセンチュアとNCGMは国、自治体や企業等と連携し、個人向けのヘルスケアアプリや医療従事者向け健康指導ツールなど、生活習慣の改善や健康増進を支援するソリューションへの展開も視野に入れた活動を行っていく、としている。


担当者のコメント

生活習慣病に関する予防医学の専門家であり、本研究の責任者を務める国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部・部長の溝上 哲也氏は次のように述べている。

溝上 哲也氏

糖尿病や高血圧などの生活習慣病は自覚症状が表れることなく発症し、重症化する危険性があります。病気にかかるリスクを正確に予測し、さらに個々人の行動変容につなげれば、発症予防に役立てることができます。幅広い業界でAI導入や課題解決の実績があるアクセンチュアと協働し、解釈が容易なAIリスク予測モデルを開発することで、生活習慣病予防を推進し、国民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に寄与することを期待しています。



アクセンチュア株式会社で、ビジネスコンサルティング本部 AIグループ日本統括マネジング・ディレクターを務める保科 学世氏(冒頭の写真)は、次のようにコメントしている。

保科 学世氏

今回、日本における予防医療・糖尿病研究の第一人者である溝上先生と連携し、予防医療におけるデータの利活用をさらに高度化させることで、生活習慣病の予防意識の向上に貢献できると期待しています。どのような要因がどの程度生活習慣病のリスクにつながっているのか、精度だけではなく解釈性も高いAIモデルを目指すことで、医療分野における責任あるAI活用の普及に努め、国民の医療費削減といった日本の課題の解決にも寄与してまいります。



この研究におけるデータ活用は、倫理審査委員会の承認を得たJ-ECOHスタディ研究計画書に則って適切に実施される、という。

なお、日本生活習慣病予防協会や厚生労働省の発表によれば、糖尿病、がん、循環器疾患といった生活習慣病は、国内の医療費の約3割、死亡数の約5割を占めると言われていて、効果的な生活習慣病予防による日本人の健康増進、ならびに医療財源逼迫の解消が期待されている。


【参考】
J-ECOHスタディの概要
http://epid.ncgm.go.jp/research/#001
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会「生活習慣病とその予防」
www.seikatsusyukanbyo.com/prevention/about.php

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