「JJPC 全国小中学生プログラミング大会」最終審査会レポート 宇宙/光の三原色/点字/清掃ロボ/高齢社会/コロナ対策、子ども達がアイディアを披露

「第5回 全国小中学生プログラミング大会」の最終審査会と表彰式が、2月28日にオンラインで開催されました。
コロナ禍で開催が心配される中、応募は昨年の第4回大会の351作品を大きく上回る、785作品が寄せられました。その中から11作品がこの最終審査会に進みました。最終審査会では、事前に審査員に提出された動画と、この日のインタビューを通して総務大臣賞・グランプリ等、各賞が選出されました。

オンラインで開催された「第5回 全国小中学生プログラミング大会」の様子。小中学生たちが開発した作品の紹介や、審査員からのインタビューが行われた

最終審査会に選ばれた作品の中には、光の三原色や宇宙をテーマにしていたり、AIが道路標識や交差点を認識したり、AIロボットが飲酒量を管理してくれたり、AIでイビキの有無を判別したり、IoTセンサーで運動量を測ったりなど、社会課題を解決する大人顔負けの視点で作られたソリューションもありました。

【最終審査に進んだ皆さん】
池田 蒼生 小学3年生 ほおずき電光表示板
宇枝 礼央 中学1年生 Color Overlap
尾崎 玄羽 小学5年生 太陽系シミュレーションゲーム
越智 晃瑛 小学6年生 点体望遠鏡(てんたいぼうえんきょう)
白川 瑛士 小学6年生 階段掃除ロボ Ver2
千葉 紫聞 小学2年生 Back2Back
広辺 洋輔 中学2年生 バランス迷路うちトレ
古山 芽吹 小学6年生 おじいちゃんの飲みすぎ防止システムⅡ
水谷 俊介 中学1年生 Birds AI ぴーちゃん
渡邉 太智 小学3年生 健康にすごそう ぼくのコロナ対策
シカゴ 中学2年生/小学6年生 いびきバスター
(シカゴ:ミシュースティン勇利・衣利那)
※敬称略



大会実行委員長の挨拶

イベントの冒頭、大会実行委員長の稲見氏が登壇し「コロナ禍で大変な時代だが、コロナ騒ぎが終息した後は、以前の状態に戻るということではなく、今後さまざまな感染症や災害に対応できる新しいアップデートされた社会がやってくる。オンラインやコンピュータを活用した社会やビジネス環境になり、その中では今回参加して作品を作った経験が活かされるに違いない」と語りました。

大会実行委員長(東京大学先端科学技術研究センター教授)の稲見昌彦氏(中央右)と審査委員長、協賛パートナーの方々。ちなみにロボスタはメディアパートナーとして大会を応援しています

大会の主催は全国小中学生プログラミング大会実行委員会(株式会社角川アスキー総合研究所、NPO法人CANVAS)、共催は株式会社朝日新聞社、後援は総務省、一般社団法人超教育協会。


グランプリ・総務大臣賞は「太陽系シミュレーションゲーム」

審査の結果、グランプリ・総務大臣賞には小学5年生の尾崎玄羽さんの「太陽系シミュレーションゲーム」が輝きました。準グランプリには中学1年生の宇枝礼央さんによる「Color Overlap」が選出されました。

グランプリ・総務大臣賞に輝いた小学5年生の尾崎玄羽さん(画像下) おめでとうございます!!


ほかに、優秀賞 小学校低学年部門に「Back 2 Back」、優秀賞 小学校高学年部門に「点体望遠鏡」、優秀賞 中学高部門に「Birds AI ぴーちゃん」が選ばれました。


では、当初プレゼンテーションが予定されていた順に各作品の概要を紹介します。


ほおずき電光表示板


ホオズキのガクを並べ、LEDライトを繋げて提灯のように光らせる電光表示板。ホウズキの標本から自身で作成しました。ハッピーやエンジョイという文字を表示したり、時刻やセンサーで測った気温も表示することができます。ハードウェアはラズパイ、言語はPythonを使用。Pythonの2次元配列を使っており、門が閉まるようなアニメの表示も可能とのことです。




Color Overlap

■準グランプリ

光の三原色をテーマにしたパズルゲーム。三原色を重ねて「白」を作り出すゲームです。昨年はスクラッチで作成しましたが、今回はUnity環境での開発に挑戦。新たに作り直して、ストーリー、絵、BGMを含めて全てオリジナルで作成しました。




太陽系シミュレーションゲーム

■グランプリ 総務大臣賞

太陽系の星々をできるだけ正確に再現するとともに、地球の周りの宇宙デブリも表現に加えました。家族で旅行した先の宇宙博物館で「宇宙エレベータ」の映像を見て、着想を得ました。この画像にも地球から伸びた宇宙エレベータが表現されています。惑星の再現にはお父さんから習った三角関数が使われています。苦労した点は「正確な比率を目指したが、実際の比率では太陽だけが大きくなりすぎるので調整しました」とのことです。




点体望遠鏡(てんたいぼうえんきょう)

■優秀賞 高学年部門

ひらがなやカタカナで書かれた文章を点字に翻訳できるシステム。文章を点字ファイルとして保存して、ディスプレイやプリンタなどのデバイスに活用することもできます。また、3Dプリンタで点字を印字したプレートを作成して活用することもできる、とのことです。視覚障害者センターの方に協力して頂き、実験やテストを行ない、試行錯誤を繰り返しました。越智さんは「たくさんの人が点字をもっと身近に感じられるようになったら嬉しい」とコメントしています。




階段掃除ロボ Ver2


ルンバなどの家庭用掃除ロボットは階段を掃除することができないので、階段を昇りながら掃除できるロボットを作りました。これがあれば重たい掃除機を持って階段を昇り降りする必要がなくなり、高齢者の生活にも役立つと考えたそうです。「IchigoJam(イチゴジャム)」とBASICで開発しました。階段を昇るからくり人形を参考にして開発し、階段を登るためのモーターがあまりパワフルではなかったため、本体の軽量化にも工夫をしたそうです。


ロボスタとしてはこの作品の発想は「とても面白い」と思いました。コロナ禍もあり、家庭用だけでなく業務用のロボット掃除器も導入が進んでいます。清掃作業の自動化です。しかし、ほとんどの機種が平らな床を掃除することはできても、階段や手すり、テーブルや椅子の上を清掃することはできません。万能な掃除機の登場を待つよりも、それぞれ掃除したい場所に応じて掃除機を使い分ける方が現実的。実現性が伴っているアイディアだ、と感心しました。


Back2Back

■優秀賞 低学年部門

バスケットボールプレイヤーのための本格マルチ・アプリです。解説動画付きのトレーニングサポート機能やストップウォッチ機能、バスケットボールのルールの理解に役立つクイズやシューティングゲームもついています。練習中でも見やすい画面デザインを採用するなど、ユーザーに寄り添い、プレイヤー目線で開発したそうです。千葉さんは1年生からプログラミングをはじめ、今回の作品は大好きなUnityで開発したということです。




バランス迷路うちトレ


コロナ禍で外出自粛の生活になり、多くの人が運動不足に悩んでいます。そんな社会課題に対して「いろいろな人に身体を動かして欲しい」という思いから、家の中でも楽しんで運動ができるように作成したそうです。開発には2つのマイクロビットを使いました。




おじいちゃんの飲みすぎ防止システムII

■優秀賞 中学校部門

お酒を量を管理してくれるロボットで、レゴで制作しました。おじいちゃんの健康を気づかい、飲み過ぎを知らせてくれる機能があります。AIが11種類のお酒を識別して、アルコール摂取量を計算、一日の摂取量を超えると警告し、お酒の代わりに「水」を出してくれます。苦労した点は、AIの認識が背景によって正解率が落ちてしまうのですが、たくさんのお酒の画像を学習させることで精度を向上させました。




AIとロボットを組み合わせたロボスタ好みのシステムです。おじいちゃんの健康を気づかう、高齢化社会にもぴったりマッチしていますね。


Birds AI ぴーちゃん


自転車の事故の体験から、自転車の危険を察知して、音で警告するシステム。作品名は文鳥を飼っていて、鳥は視野が広くて遠くのものが見えることから名づけました。
2032枚の画像から道路標識を機械学習して認識精度を向上させました。苦労した点はAIの認識性能を向上させること、当初は誤反応ばかりでしたが、機械学習の開発期間は土日を使って半年くらいかかったそうです。



自転車の運転を支援し、AIが事故を防ぐという発想は素晴らしいですね。自動運転と同様の技術で、モビリティの変革が求められているこれからの社会には、すぐにでも必要とされるシステムだと感じました。


健康にすごそう ぼくのコロナ対策


手洗い、ソーシャルディスタンス、検温、マスクの着用、の4つのコロナ対策を検知できるシステム。コロナ禍で健康に過ごすのはどうしたらいいのかを考えて開発したそうです。当初、体温のセンサーが正確にはかれなかったので工夫したそうです。ひとつのマイクロビットで4つの機能を実現しています。



この作品もコロナ禍にあって、実用化が求められているシステムです。着眼点が素晴らしいと感じました。


いびきバスター


AI音声認識機能を搭載したレゴ・ロボット。音声認識がいびきを検知すると、ゴム手袋を回して顔をビンタして起こすシステムです。いびきがうるさくて眠れないという社会問題の解決を目指します。システムはスクラッチで開発、ティーチャブルマシンも活用しています。


AIとロボットを組み合わせ、ちょっとコミカルな微笑ましい作品です。イビキの被害は実は深刻にも関わらず、現在はまだソリューションがほとんどないので着眼点が面白いと感じたシステムです。

子ども達の発想には毎年、とても驚かされます。コロナ禍や高齢化、身障者支援、交通問題など、社会が抱えている課題を捉えたものも多く見られました。また、AIやロボティクス、センサーなど最新のICTを活用した大人顔負けのシステムも登場していてます。このイベントは2021年度も開催予定とのことですので、今後の展開がとても楽しみです。


【審査員のみなさん】
審査員長 河口 洋一郎 CGアーティスト、東京大学名誉教授
金本 茂 株式会社スイッチサイエンス 代表取締役
林 千晶 株式会社ロフトワーク 代表取締役
(代理:石塚 千晃 株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター)
増井 雄一郎 Product Founder & Engineer
松林 弘治 エンジニア/著述家
※敬称略

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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