スマホとコネクテッドカーの素敵な連携「SDLアプリコンテスト」開催 グランプリは新発想の遠隔同乗システム「ドライブ気分」

「クルマとスマホをなかよくする SDLアプリコンテスト2020」が2021年3月8日に開催された。SDLアプリコンテストは「SDL」の普及を目的とした「スマートデバイスリンクコンソーシアム(SDLC)」日本分科会が実施するもので、今回が3回目の開催となる。コロナ禍のため、オンラインで実施された。


SDLとはスマートデバイスリンクの略称で、クルマとスマートフォンを連携させるオープンソースの標準規格のこと。
「SDL」(SDLのAPI)を活用してクルマの安全運転や、快適なドライブを支援するスマートフォンアプリ(Android、またはiOS)を開発するコンテストだ。

「SDLアプリコンテスト2020」の最終選考には11社が進出した




自動車メーカー6社が参画

主催するSDLCには、自動車/自動二輪メーカー9社、トヨタ自動車株式会社、マツダ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、三菱自動車工業株式会社、スズキ株式会社、ヤマハ発動機株式会社、川崎重工業株式会社、いすゞ自動車株式会社が参画、およびサービスに関連する企業で構成されている。



【SDLアプリコンテスト2020 日程と審査員、償金等】
主催    :SDLコンソーシアム日本分科会、SDLアプリコンテスト事務局
日時    :2021年3月8日(月) 13時配信開始、13時30分~17時00分
会場    :ZOOMウェビナー
集合時間  :12:00~オリエンテーション
審査員長  :暦本純一氏(東京大学情報学環教授)
審査員   :川田十夢氏(クリエイター、AR三兄弟長男)
       岩貞るみこ氏(モータージャーナリスト/ノンフィクション作家)
       久米智氏(トヨタ自動車株式会社 e-TOYOTA部)
司会    :池澤あやか氏(タレント、エンジニア)
グランプリ :賞金50万円+(副賞)iPad Pro、PDF賞状
特別賞   :賞金10万円、PDF賞状


グランプリは遠隔同乗システム”ドライブ気分”

審査の結果、九州産業大学 理工学部 情報科学科 合志研究室(ごうしけんきゅうしつ)の「安全運転支援&コロナ3密回避 遠隔同乗システム”ドライブ気分”」がグランプリに輝いた。賞金50万円とiPad Proが授与された。


「ドライブ気分」はSDLの機能をフルに活かしたものに感じた。SDLで取得できる運転中の自動車の走行情報だけでなく、運転車の疲労を測定する「Sleep Buster」、車間距離と速度標識を識別する「Mobileye」などを追加、更にはダッシュボードの上に、自動車の前方にカメラレンズがくるようにスマートフォンを設置。スマホカメラはドライブレコーダー画像を送信し、運転車はスマホの画面情報が見られるようになっている。

“ドライブ気分”は走行している自車の情報や映像をオープンにして、外部の人と繋がり、同乗するシステム。誰でも閲覧・参加できるオープンサイトと家族や友人などに限定したプライベートサイトがある

これら自動車からの情報を発信し、その情報や画像を受信した人は同乗していなくても、あたかも同乗しているかのようにドライブ体験ができる(遠隔同乗)。更には、遠隔同乗者は運転車が信号や標識を遵守していること等に対して「いいね!」を送ることができる。


プライベートサイトから同乗している家族や友人などに限り、スマホから運転者に文章でメッセージを送ることもできる。メッセージは音声読み上げで運転者に届き、それに対して運転者は運転に支障がでないようにワンボタンで定型のひと言メッセージを返すことができる。例えば「鯛焼き買ってきて」と家族からの音声メッセージに対して「わかりました」と返信するなど。




高齢者ドライバーの見守りや長距離ドライバーの支援に

開発した合志研究室はユースケースについて問われると「コロナ禍でなかなか一緒にドライブにもいけない状況なので、遠隔から同乗してドライブを楽しもうとか、高齢の父母の運転が心配なので遠隔から同乗して見守ろうとか、コロナ禍で物流の仕事が大変になっているので長距離輸送のドライバーを応援したり、自動車教習所などで利用されるようになったらいいなと思います」と回答した。

プレゼン後、質問に応える九州産業大学 理工学部 情報科学科 合志研究室のふたり(上段)。下段は司会の池澤あやか氏(左)、審査員のひとり久米智氏(トヨタ自動車株式会社 e-TOYOTA部)

審査員長の暦本純一氏は「まさにコロナ禍の3密回避ということ、遠隔で同乗するというコンピュータやネットワークがないと実現できないアイディアも盛り込まれていたので、満場一致でグランプリに決定しました。ボタンやアイコンなどのUIをブラッシュアップできれば、ますます面白いアプリになるだろう、という期待も込められています」と評価した。

受賞した合志研究室は「受賞できるとは思っていなかったのでとても嬉しいです。長距離運転のお仕事に従事している人や自動車教習所などでも使って頂けることを目指して、今後も改善していきたいと思います」と語った。


特別賞

その他、特別賞の5作品は次の通り(下段はエントリー名)。

特別賞1
 キッチンカー支援アプリ Kitchen Meets(きっちん・みーつ)
 Kitchen Meets Project(きっちん・みーつ・プロジェクト)
特別賞2
 しおわんのきりばん!
 rino products(りの・ぷろだくつ)
特別賞3
TAXI風燃費レシート(タクシーふう・ねんぴレシート)
 市川雅明(いちかわ・まさあき)
特別賞4
 バイクは楽器
 TigerBrown(たいがー・ぶらうん)
特別賞5
 もこもこドライブ
 ちーむパンサル


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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