三菱電機「多用途搬送ロボットシステム」とパナソニック「追従型モビリティ」を藤田医科大学病院で実証実験 あいちロボットショーケース

愛知県では、サービスロボットの社会実装を促進するため「あいちロボットショーケース」を開催している。
医療分野においては3月6日、「藤田医科大学 ロボティックスマートホーム・活動支援機器研究実証センター」と「藤田医科大学病院薬剤部周辺通路」で、三菱電機の「多用途搬送サービスロボットシステム」の実証テストが行われ、報道関係者に公開された。(関連記事:2月24日に行われた「藤田医科大学病院で人型ロボットと自動搬送ロボットの実証実験 除菌/殺菌やコンテナの自律搬送を公開 あいちロボットショーケース」)

「多用途搬送サービスロボットシステム」が自律搬送しているところ。2021年度以降の製品化を目指している

ロボット本体の前方の床に進行方向が表示されるのがユニーク。周囲の人も安全走行に協力してくれる。なお、エレベータの待機中はここにエレベータのアイコンが表示される

なお、3月26日には同じ場所で、パナソニックの追従型ロボティックモビリティ「PiiMo」(ピーモ)による実証実験が行われる予定になっている。


三菱電機が「多用途搬送サービスロボットシステム」の実証実験

三菱電機が開発した「多用途搬送サービスロボットシステム」は、自律走行ロボットとカートで構成され(脱着型カート方式)、病院向けや商業施設向け等、利用する分野向けにカスタマイズしたカートを用意することで、様々な現場に対応できるのが特徴だ。

「多用途搬送サービスロボットシステム」は自律走行ロボット(左)が、分野別にカスタマイズ設計されたカートと連結して運ぶシステム

業務に合わせて最適なカートを連結する

脱着型カート方式を採用したことで、カート単体でも利用可能、ロボットを呼び出す前にスタッフの収納作業が行えるなどのメリットが生まれた。自律走行ロボットセンシングや管制システムによって安全な自律走行を行う。また、同社が開発した「エレベーター・入退室管理システム」などの施設内設備と連携することで、エレベーターの乗降やセキュリティ管理されたセクションへの出入りも可能となっている。

同社が開発したスマートシティ・ビル「IoTプラットフォーム Ville-feuille」と接続することで、エレベーターや入退室管理システムなどと連携できる。

自律走行ロボットにはLiDARや3Dカメラなど、各種センサーを搭載していて、周囲の状況を認識し、人や障害物などを自動で回避する。また、管制システムが走行指示や運行管理などを自動で行うことで、ロボットの最適な配車やロボット同士のすれ違いなど、安全走行を管理できる。

ロボット前面のディスプレイは操作に使用するとともに、表情によってロボットの状態を表現する。左は通常時の表情で、エラーが発生したときは中央や右の表情に変わる


薬剤や検体等を自動で安全に運ぶ

「多用途搬送サービスロボットシステム」はまず、病院と商業施設における実証と実運用に向けた開発を優先して進めていて、今回は医療現場での運用の実証テストを行なった。
多くの病院では薬剤や検体等、毎日昼夜を問わず搬送業務が行われているが、スタッフには大きな負担となっている。また、医療スタッフが搬送しなければならないケースもあり、それによって本来実施すべき患者のケアに十分な時間を割けないという課題を抱える病院もあるという。コロナ禍で医療スタッフの人手不足や働き方改革が深刻な状態となり、業務の負荷軽減に加えて、非接触のニーズも高まっている。


同社は「さらに昨今のコロナ禍を受け、医療スタッフの負荷が急上昇している上、非接触のニーズもでてきました。そういった背景を受け、医療関係者の負荷軽減に貢献すべく、本製品の開発を行いました」とコメントしている。

実証実験に使われたカートの中の構造。薬剤や検体を個々に入れられるようにたくさんの引き出しがある


実証実験の内容と成果

実証実験では、薬剤部から病棟まで自動搬送ロボットがエレベーターを乗降して、一連の搬送デモを実施(今回の実証実験ではエレベーターへの指示は手動)。自律走行、障害物回避、エレベーター乗降、エレベーター内旋回、右側通行、一時停止等、必要な機能に関して問題なく移動できることを確認した。


実験に参加した看護師や薬剤師にロボットの使用感を聞いたところ「使いやすい」とコメント、実業務に利用できる可能性を感じることができたようだ。

「機能的には実用をほぼ満たしている」と語るRSH&AATセンターのセンター長、大高洋平氏

同社は「今後、更に実際のオペレーションを反映して、手軽に搬送業務が実施できるように検証を進めていきたいと思っています」とした。

【実証実験内容】
薬剤部から病棟のナースステーションへ、薬剤を模擬搬送する作業をロボットで実施した。
病院関係者に使い勝手や改善点等をヒアリングして商品開発に生かしたい考え。

■実証実験の動画


今後は商業施設向けにも展開

今後の展開先として商業施設も検討している。同社は「多くの商業施設ではECとの差別化を目的として、店舗の付加価値向上やお客様の負荷軽減、人件費削減を進めています。さらに、昨今のコロナ禍を受け、三密の回避や非接触のニーズも出てきました。そういった背景を受け、お客様の買い物のサポートをしたり、販促情報を提供したりすることができるロボットを検討しています」と語っている。




パナソニックの追従型モビリティ「PiiMo」の実証実験(予定)

3月26日には同じ場所でパナソニックの追従型ロボティックモビリティ「PiiMo」の実証実験が予定されている。
「PiiMo」は、走行ルート上の障害物を検出するレーザーセンサーを備えたモビリティ。高齢者や要介護者の屋内の移動を支援する。
自動停止機能と追従走行機能で、複数台の電動車いすを効率的に、かつ安心・安全に移動させることができる。先頭車両は介助スタッフがリモコンで操作し、その他の車両が追従してグループでの移動をサポートする。

自動停止機能を装備し、周囲の障害物を監視し、自車両の状態情報をもとに衝突予測しながら減速する「自動停止」と、衝突が予測される場合には出力を停止するなどする「安全停止」の2段階を備える。自動停止機能は常に有効で、1台での利用の場合や初めての操作でも安心・安全に利用できる。なお、これらの安全関連制御システムは国際規格適合証明(IEC62061)を取得している。


パナソニックは実証実験の具体的内容として「病院内での人の移動のサポートとしてどのような利用シーンがあるのか、そしてそこでの課題は何か、またグループでの移動というコンセプトの妥当性など、そういったことを今回の実証実験を通じて確認したいと考えています。具体的な実験内容は、5階の回復期リハビリテーション病棟からエレベータでB1階に移動し、バックヤード通路を通ってA棟に移動、B1階のリハビリテーションセンターまで移動するというコースを模擬患者様が搭乗した状態で移動します」とコメントしている。

■参考動画


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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