日本電気株式会社(NEC)は、ニューラル翻訳エンジンを活用した「一斉同報機能付き多言語音声翻訳システム」を開発。建設現場など、異なる言語が多く使われる環境でのコミュニケーション不足の解決を支援することを発表した。
具体的には、三井住友建設との協業によって、一斉同報機能付き多言語音声翻訳システムを開発し、三井住友建設の「どこみなフォン/DokoMinaPhone」に採用した。スマートフォンにインストールされた専用アプリで、利用者全員、あるいは指定された作業グループに対して、リアルタイムで音声翻訳された内容を一斉に同報、異なる言語での会話を実現するもの。
上のチャットの例では、まず日本語発話者の発言が、「原文」「翻訳文」「逆翻訳文」の順に同報表示される。英語発話者は「翻訳文」を見て内容を理解し、返答する。英語発話者の発言も同様の順序、「原文」「翻訳文」「逆翻訳文」で表示される。日本語発話者は「翻訳文」を読んで理解する。
また、「逆翻訳文」が表示されることで、正しく翻訳されているかどうかを確認することができる。
言語の違いによるコミュニケーション不足が課題
建設業においては、グローバル化が進む状況の中、国内において増加する外国人就労者や海外進出先のローカルスタッフとのコミュニケーションの円滑化が課題となっている。このシステムを使ってこの課題を解決したい考えだ。まずは第一弾として日本語と英語間の音声翻訳と一斉同報に対応する。
多言語音声翻訳システムの特長
人間の話し言葉に近い、より自然な翻訳を実現
国内にて研究開発を行っている国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のニューラル翻訳エンジンを搭載し、日本語から外国語、もしくは外国語から日本語へ、より自然な翻訳を実現する。
目的にあわせたグルーピングの動的設定
専用のスマートフォンアプリを起動してQRコードを読み取り、認証することで、あらかじめ設定されたグループに簡単に参加し、音声通話の自動翻訳によるコミュニケーションが開始できる。
チャット形式による時系列翻訳変換の表示
発話された内容は、録音され聞き直しが可能となっており、グループチャット形式で原文/翻訳文/逆翻訳文をグループチャット形式で画面に表示する。
現場作業員の意見を集めて改善へ
NECは三井住友建設への採用実績を活かし、引き続き建設業界に向けてこのシステムの採用を働きかけ、外国人就労者との円滑なコミュニケーションに貢献するとともに、実際に利用した現場作業員の意見を集め、対応言語数の拡充や作業員の安全性に配慮したハンズフリーな操作機能の追加、建設現場特有の専門用語や言い回しへの対応に取り組みたい考えだ。
こうした取り組みにより、世界の建設現場で活用されるコミュニケーションツールとなるよう機能の向上を進めるとともに、建設業界だけでなく交通や物流、流通、飲食業界など多様な産業分野へ展開し、さらには言語に関わるコミュニケーション上の課題を解決する新たなイノベーション創出を目指す、としている。