マイクロソフトが対話型AIと音声認識サービス「Nuance」を買収 医療・ヘルスケアの業界クラウド戦略を加速
MicrosoftとNuance Communicationsは、マイクロソフトがNuanceを一株当たり56.00ドルで買収する最終合意に達したことを発表した。
上記の買収は4月9日(金)時点のNuanceの株価終値に対する23パーセントのプレミアムであり、現金取引ではNuanceの純負債を加味し197億ドルに相当する。NuanceはクラウドとAIソフトウェアのリーダー企業であり、数10年にわたり、ヘルスケアとエンタープライズAIにおける実績を積んできた。NuanceのCEOマーク ベンジャミン氏(Mark Benjamin)は現在のポジションに留まり、マイクロソフトのCloud&AI担当エグゼクティブバイスプレジデント、スコット ガスリー氏(Scott Guthrie)の直属となる。買収は2021年中に完了する予定。
Nuanceのソリューションについて
マイクロソフトは破壊的変化と新たな市場機会に対応できるよう、ユーザーとパートナーを支援する業界向けクラウドを提供する取り組みを加速してきた。このような取り組みの1つが急速に変化するヘルスケア業界のニーズに総合的に対応することを目指し、2020年に発表されたMicrosoft Cloud for Healthcare。今回の買収に関する発表は、マイクロソフトの業界向けクラウド戦略の最新のステップに相当する。
Nuanceは対話型AIとクラウドをベースとした、ヘルスケアプロバイダー向け医療インテリジェンスのパイオニアであり、大手プロバイダーでもある。Nuanceの製品にはDragon Ambient eXperience、Dragon Medical One、PowerScribe Oneなどがある。これらは、すべて、Microsoft Azure上で構築された医療関連の音声認識サービスを提供するSaaS。
Nuanceのソリューションは、EHR(電子カルテ)などのヘルスケアのコアシステムとシームレスに連携し、医療関連文書管理の負担を軽減し、患者体験を向上できるようヘルスケアプロバイダーを支援する。現在、Nuanceのソリューションは米国の医師の55%以上、放射線技師の75%以上に使用され、米国内の病院の77%で使用されている。
買収によってマイクロソフトが得られるもの
マイクロソフトによるNuanceの買収は2019年に発表された既存のパートナーシップの成功に基づくもの。NuanceのソリューションによるMicrosoft Cloud for Healthcare の強化、そして、Nuanceの専門知識とEHRシステムプロバイダーとの関係の活用によって、マイクロソフトはアンビエント医療インテリジェンスと他のマイクロソフトのクラウドサービスを組み合わせ、ヘルスケアプロバイダーへの支援を向上していく。
この買収により、ヘルスケアプロバイダー市場におけるマイクロソフトの獲得可能最大市場規模(TAM)は倍増し、約5,000億ドルとなる。Nuanceとマイクロソフトは拡大したパートナーエコシステムでも既存のコミットメントをさらに強化していくと共に、データプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスにおいても最高レベルの水準を維持していく。
なお、買収提案は、Nuanceとマイクロソフト両社の取締役会において全会一致で可決された。買収はNuance株主の承認、規制当局の認可、その他の慣例的条件が必要であり、2021年末までに完了する予定。買収が完了すると、Nuanceの財務状況はマイクロソフトのIntelligent Cloudセグメントの一部として報告されることになると、マイクロソフトは考えている。マイクロソフトは2022会計年度において、この買収による稀釈化の影響はわずか(1%未満)であり、予定通りに買収が完了した場合には、この買収が2023年会計年度の一株あたり非GAAPベース利益を増加させると見ている。非GAAPベースは会計上の調整、統合と取引関連の費用の影響を含まない。また、今回の買収は既存の自社株購入の承認の完了には影響しないとする。
CEOからのコメント
マイクロソフトCEOのサティア ナデラ氏(Satya Nadella)は次のように述べている。
NuanceCEOのマーク ベンジャミン氏(Mark Benjamin)は次のように述べている。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。