動画配信サービスなど大容量のデータ通信を必要とするサービスが拡大している現在、ユーザーが快適にサービスを利用できるように、モバイルネットワークにおける通信容量の割り当てをダウンリンク(受信)に優先させることで、通信の最適化を行っている。
しかし、テレワークの急速な普及に伴い、ウェブ会議のように動画をリアルタイムにアップロード(送信)するサービスが利用される機会が増加し、アップリンク(送信)の容量がひっ迫することが課題となった。いわゆる軽い送信のために、画像の品質を下げて送信することが望まれるが、それではウェブ会議などの映像が粗くなってしまう。
ソフトバンク株式会社は、このような課題に対応するため、5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク環境で、エッジコンピューティング技術MEC(Multi-access Edge Computing)とNVIDIAが提供するAIを使った映像伝送向けプラットフォーム「NVIDIA Maxine」(エヌビディア マキシン)を組合せ、低画質の映像で送信しつつも、中継地点で映像の解像度と画質を高める“超解像”化の実証実験を実施し、高品質なウェブ会議を実現可能にしたことを2021年4月14日に発表した。
(冒頭の画像は“超解像”のイメージとなっている)
同実証実験について
実証実験では、ソフトバンクの5Gネットワーク環境で、低解像度(180p相当)の映像を伝送して、MECサーバーでAIによる“超解像”処理を行い、高解像度(720p相当)の映像を生成できることを確認した。MECサーバーを活用しない場合と比較して、少ないネットワーク帯域幅の利用で、同等の品質の映像を配信することができただけでなく、MECサーバーに音声ノイズ除去機能を組み込むことで、ユーザーが品質の優れた高価なマイクなど特別な機器を準備・使用することなく、クリアな音声でウェブ会議を利用可能なことも確認した。同実証実験の成功は、5G環境におけるアップリンクの通信に対して、AIとMECの有効性を証明したといえる。なお、この実証実験で開発された関連技術は、同社が特許出願済みだ。
同社は、ウェブ会議がより高品質で多機能化した場合でも、ユーザーがストレスなくサービスを利用できるように、5GやMEC、AIなどを活用した研究開発を進めていくと述べている。
NVIDIA Maxineプラットフォーム
202年10月にNVIDIAが発表した同プラットフォームは、クラウドネイティブのストリーミング ビデオ用 AI プラットフォームであり、開発者がクラウドベースのGPUアクセラレーションAIビデオ会議ソフトウェア スイートによって、インターネットで最も多いトラフィックの発生元であるストリーミング ビデオを強化する。
これにより、サービスプロバイダーはAIを活用した新たな機能を、毎日 推定3,000 万以上行われているウェブ会議に実装させることが可能に。クラウドで NVIDIA GPU をベースにしたプラットフォームを使用しているビデオ会議のサービスプロバイダーは、視線補正、超解像度、ノイズ キャンセリング、顔の再照明といった、AI の新しい効果をユーザーに提供できるようになる。
■【動画】AI-Powered Video Conferencing with NVIDIA Maxine(英語)
ソフトバンク株式会社