高専生が企業評価額を競う「DCON2021」本選の結果が公開 福井工業高専チームが過去最高額の企業評価額6億円を獲得

高専生が日頃培った「ものづくりの技術」と、AI(人工知能)分野で特に成果を出す技術「ディープラーニング」を活用して企業評価額を競うコンテスト「第2回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2021」(以下、DCON2021)の本選が4月17日(土)に日経ホールで開催した。コンテストでは過去最高額6億円の企業評価額を受け、福井工業高等専門学校 プログラミング研究会チームが最優秀賞を受賞した。2位は鳥羽商船高専のNoRIoTで企業評価額は5億円、3位は北九州工業高専の盲導Caneで企業評価額は4億円となった。


ベンチャー企業と同じ基準で評価するコンテスト

本選は最終的な作品の披露に対して技術審査員による技術審査が行われるのに加えて、ビジネスプランを現役投資家などが務める審査員が評価。技術とビジネスの両面での評価を総合し、企業評価額で表彰・順位が決まる。DCON2021本選では参加全43チームの中から二度の予選を経て勝ち残った10チームが出場し、昨年度に引き続きオンライン開催にて、白熱のプレゼン合戦が行われた。ステージ上には前回と同様に実行委員長として東京大学大学院教授 松尾豊氏、司会にタレントの小島瑠璃子さん、音楽クリエイターのヒャダインさんほか、審査員をステージ上にお迎え。今回もその技術力や事業としての完成度に高い評価が続出し、中にはグローバルでの展開を目指す内容も出てくるなど大会のスケールアップを感じられる内容となった。


最優秀賞は福井工業高等専門学校が受賞

最優秀賞は福井工業高等専門学校 プログラミング研究会「D-ON」が受賞。企業評価額6億円、投資総額1億円という評価を受け、副賞の起業資金100万円とともに、技術審査員賞、若手奨励賞も同時に授与。その技術の高い完成度と洗練されたビジネスプランが評価され、過去の大会を含め企業評価額最高額を更新する結果となった。

D-ONはコンクリートのような構造物にヒビ等の異常がないか、ディープラーニング技術を使って誰でも簡単に打音検査をすることを可能にした作品。「全ての老朽化から人の命を守る」をテーマに新しいアプローチで、小型で軽量・安価な打音検査機を実現した点が高く評価された。

以下、審査員・メンターからのコメント。

「人間が作ったものはいつか必ず壊れる。壊れているかどうか、AIを活用した打音検査で見抜き、さらに得たデータを老朽化の予測につなげるというアイデアが素晴らしかった」

「打音検査のソリューションはすでに実用化されているが、ここまで小型化できたことには大きな価値がある。」

「クラウドAIとエッジAIの技術をうまく活用している。マイコンをハンマーにつけるだけで世界中どこでも打音検査ができるという手軽さが素晴らしく 、グローバルな展開の可能性を感じる。多くの企業は彼らのアーキテクチャーを見習うべき」

「ハードウェア自体はチープだったとしても、ディープラーニングとの組み合わせ次第で全く違う価値を提供できることを示した発表だった。マイコンのような廉価に導入できるハードウェアを使ったアイデアは導入のハードルを下げ、ディープラーニング技術を企業が実際に使えるものにする」



<企業賞・全チーム評価額>

2位は鳥羽商船高専のNoRIoTで企業評価額は5億円、投資額は1億円。3位は北九州工業高専の盲導Caneで企業評価額は4億円、投資額は5,000万円。各表彰時には「地元の課題解決に取り組み、産み出したソリューションを広いマーケットに応用できている」「グローバルなチャレンジ精神を感じる」「地域から世界を変える期待を持てる」「ディープラーニングの技術をソリューションに活用する力が素晴らしかった」など、それぞれの視点からたくさんの声があった。





出演者からのコメント

大会を総括し、ステージ上の出演者は以下のようにコメントしている。

実行委員長 松尾豊氏

「高専生の発表を一般のビジネスと同じ評価軸で企業評価額をつけるDCONの取り組みは、テクノロジーを現実社会に結びつける上で大きな価値がある。DCONで勝つことが目的なのではなく、そこから発展して大きな事業を作り出していくことが最終目標。JDLAでは今後も実際に起業した高専のチームをサポートしていく」

司会 小島瑠璃子さん

「高専生には毎年本当に素晴らしい才能を見せてもらっている。大人が若者の才能を埋もれさせることなくしっかり育てないといけない。DCONに出場するような若者が自分たちの技術を活かし開発に集中できる環境を作っていくべきだと思う」

司会 ヒャダインさん

「社会的弱者に目をむけてテクノロジーの力で助けたいという思い、さらにそこで培ったソリューションを世界に展開していこうという気概を多くの発表から感じた。高専生がDCONから世界にどんどん羽ばたいて欲しいと思う」



起業資金を出資する「DCON Start Up 応援1億円基金」を設立

JDLAおよびDCON実行委員会は、今後もDCONの継続的な開催によりディープラーニングの産業活用を促進する若手人材の輩出を目指し、引き続きコンテストを運営する。また、JDLAは4月17日に高専生を対象に起業資金を出資する「DCON Start Up 応援1億円基金」を設立することも発表した。なお、第3回大会「DCON2022」の開催はDCON公式ホームページにて随時発表予定。

「DCON Start Up 応援1億円基金」について
【支援内容】
1.1社に対して200万円の資金提供

(ア) 起業資金として
会社設立の資本金、設立費用に充てる資金として 100 万円の寄付

(イ) 事業運営資金として
設立された会社に対して、普通株にて 100 万円への出資
(企業価値 5,000 万円、2%の出資)

2. 保護者的株主として経営を支援
(ア) ビジネス、ファイナンス、その他の面で定期的な相談の実施
(イ) バックオフィス業務の支援

【支援ポリシー】
1. 資金提供元 :
一般社団法人日本ディープラーニング協会 ・年次 1000 万円とし 10 年間実施

2. 支援判断 :
DCON Start Up 応援基金選考チーム(JDLA 内に設置)にて判断

3. 対象 :
DCON 1 次審査通過メンバーの高専生(高専卒業後 1 年以内)の起業 ・日本での起業を前提とする

4. 資金提供額 :
200 万円(100 万円の寄付、100 万円の出資のセット)

5. 支援 :
① 経営相談 (まずは月1回から実施し、成長に応じて実施。)
② バックオフィス支援 (管理部門業務)

6. 株式保有方針:
IPO 時 50%を売却、50%は長期保有

7. 収益使途 :
株式売却による収益は、高専の発展及び DCON 運営に使用

8. 申込方法 :
JDLA 事務局へ申し込みフォームより応募
DCON サイトより申し込む
https://dcon.ai/2021/

ABOUT THE AUTHOR / 

山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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