匂いをデジタル化すると何ができる?嗅覚センサーとAI解析サービスで I-PEXとヘッドウォータースが協業
デジタル嗅覚(e-nose)市場は、スマートセンサーの次世代トレンドとして自動車、食品、飲料から家電製品、パーソナルケア、化粧品に至るまで2020年に1790万ドルと評価され、2021年から2026年の間に11.8%のCAGRを記録、2026年までに3420万ドルに達すると予想されている。また、匂いシンセサイザー市場も、2021年から2026年の予測期間にわたって44.4%のCAGRで同様に成長が予想されており、これらのデジタル香りテクノロジーは、オンラインで購入する前に製品の匂いを嗅ぐという利点をユーザーに提供する。
この流れを受け、AIソリューション事業を手掛ける株式会社ヘッドウォータースは、 I-PEX株式会社と、匂いセンシング事業において協業を開始し、匂いデータ解析AIサービス「デジタルオルファクションサービス」を開始することを2021年4月22日に発表した。
協業の経緯
同社は、コミュニケーションロボットからAIソリューション事業に発展した経緯から、センシングデバイスの取得データを利用し、人間の五感をデジタル化するマルチモーダルインターフェースの実現に取り組んでいる。今回、I-PEXが提供する匂いセンシングデバイス「nose@MEMS(ノーズメムス)」を活用し、「嗅覚」のデータを集めることで、機械学習と統合した臭気アナリティクス、および嗅覚AIによるデジタルオルファクションソリューションを展開していく。
また、両社はI-PEXのMEMS技術を活かした匂いセンサの開発、改良を共同で行いデバイスの提供および販売活動を行うとしており、具体的には、ヘッドウォータースはセンサの販売活動を行うとともに、顧客の匂い課題に対応したAIコンポーネントの開発、データプラットフォーム構築、クラウドネイティブアプリケーションとの統合を提供するとのことだ。
匂いセンサ”nose@MEMS”について
”nose@MEMS”は、I-PEXが開発した、複数の検知素子が検出する「匂い分子のパターン」を認識し、識別する匂いセンサだ。 MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の頭文字からメムスと呼ばれている。メムスは、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイスを指す。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電薄膜に異なる感応膜を塗布した検知素子20種類を1枚のセンサチップ上に搭載。電圧をかけて共振している感応膜に匂い分子を付着させ、共振周波数の変化から数値データを取得、パターンを照合することにより匂いを識別する。PZTの圧電薄膜を用いたMEMSの活用により小型・低コスト化が見込めるとともに、検知素子の数を増やすことでより多くの匂いを識別可能だ。
・MEMS検知素子に、個別の匂い分子を吸着する感応膜を塗布
・複数の検知素子が検出する「匂い分子のパターン」を認識し、匂いを識別
・圧電薄膜(PZT)を用いたMEMSの活用により、小型・低コスト化が可能
・検知素子(=感応膜)の数を増やすことで、より多くの匂いを識別
■【動画】匂いを見える化する」デバイス、「noseStick」 / I-PEX
匂いデータ解析AIサービス 第一弾
同サービスの第一弾として、スマートストアに匂いセンサを置き、匂いの分子パターン解析とストア売上の相関関係を導き出し、スマートストア向け売上予測ソリューションを提供。これにより、ストア側は売上に一番効果的な「匂いによる集客」を意図的に仕掛ける事ができる。今後は医療・ヘルスケア領域における呼気、尿、血液などの体液中の揮発性有機化合物の分析、物流業や製造業における機械故障の匂い検知アラートと労働者の環境改善、スマートシティにおける地域の悪臭に対処する一環として臭気環境をデータ化するアナリティクス、複数センサからなるハイブリッドコネクテッドデータプラットフォームの構築を行っていく。
I-PEXからのエンドースメントは以下の通りだ。
I-PEX株式会社 常務取締役 技術開発統括部長 緒方 健治 氏
I-PEXは、2017年にMEMS技術を活用した匂いセンサ「nose@MEMS」を、2020年4月から(Commercial Sample)品の販売を開始し、一般販売開始に向けた開発を継続しています。また2019年より、センサやAIを組み合わせ食品の品質管理や空間上の臭気検知などの課題を解決する匂いセンシング事業を、凸版印刷株式会社とアライアンスを締結し推進しています。
このたび、ヘッドウォータース様とのIoT分野における協業により、「nose@MEMS」を活用した匂いによるセンシングが、幅広い場面で容易に利用可能な、これまでにない課題を解決するソリューションとなることを期待しています。