超歌舞伎「中村獅童×初音ミク」の新作に視聴者が熱狂 初音ミクが初めて悪役に挑戦、約33.3万人が視聴『御伽草紙戀姿絵』

初音ミクが初めて悪役に挑戦!!
2021年4月24日(土)、インターネットの祭典「ニコニコネット超会議2021」が開幕。オープニングを飾る目玉イベントとして4月24日と25日に、幕張メッセで2年ぶりとなる「超歌舞伎 Supported by NTT『御伽草紙戀姿絵』が上演された。今回の記事では『御伽草紙戀姿絵』のイベントレポートを紹介する。


2日間で約33.3万人が視聴

日本最大級のインターネットの祭典「ニコニコネット超会議2021」のオープニングを飾る目玉イベントとして、4月24日・25日、幕張メッセで2年ぶりとなる超歌舞伎 Supported by NTT『御伽草紙戀姿絵』が上演。昨年は新型コロナウイルスの影響で有観客公演が中止。今回はそのリベンジということもあり、主演の中村獅童と初音ミクら出演者たちの強い思いが伝わってくるような、パワーみなぎるステージが実現した。

©超歌舞伎 Supported by NTT

その気合いに呼応するように会場に駆けつけた超歌舞伎ファンはもちろん、オンライン視聴のニコニコユーザーも“待ってました!”と熱狂。会場では新型コロナウイルス感染拡大防止のため「大向こう」や「掛け声」の代わりに出演者毎に指定された色のペンライトを振り、会場に一体感が醸成された。歌舞伎の要素が増量し、立体的でキメ細やかな画質も美しく、随所に新しい技術と試みが詰まった革新的な作品を2日間で約33.3万人が視聴した。また、NTTのリモートワールドを体現する3D空間型オウンドメディア「DOOR」内で再現された京都・南座の舞台でも同時刻に上演された。


土蜘伝説を題材とし、壮大な悪との戦いが展開

幕が開き、口上がスタート。裃(かみしも)姿の獅童から、昨年春、断腸の思いで中止した「超歌舞伎」がやっと開幕できる喜びと感謝が伝えられた。例年であれば会場から大向うが飛び交うところだが、今年は残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響で掛け声が禁止に。声援のかわりにペンライトを思いきり振る観客の姿に、獅童が感動で言葉を詰まらせる場面も。続いて初音ミクも登場し、両人が並んで挨拶。そして、ダイナミックなオープニング映像へなだれ込み、観るものを一気に「超歌舞伎」の世界へさらっていった。


©超歌舞伎 Supported by NTT

©超歌舞伎 Supported by NTT

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上演された新作『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』は土蜘伝説(つちぐもでんせつ)が題材。七綾太夫(ななあやだゆう)と、源頼光(みなもとのよりみつ)の恋を軸に、日本を魔界にしようと企む女郎蜘蛛(じょろうぐも)の精・山姥茨木婆(やまんばいばらぎばば)といった物の怪たちの野望の顛末と、勇ましい平井保昌(ひらいのやすまさ)と袴垂保輔(はかまだれやすすけ)兄弟の活躍を描き、壮大な悪との戦いが展開する。

©超歌舞伎 Supported by NTT

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今回獅童は七綾太夫に想いを寄せる気品漂う源頼光と荒々しい盗賊・袴垂保輔といった対極的な二役を演じ、その演じ分けも鮮やか。お家のため、化物退治のため、保輔が命を捨てる場面は印象的で、心の奥底に隠していた思いを兄に吐露する台詞は涙を誘う。中村蝶紫の妖気漂う山姥茨木婆役は存在感たっぷりだ。澤村國矢演じる頼光の重臣・平井保昌役は大きく、颯爽としたかっこよさ。様式美をしっかり見せながら工夫を凝らした立ち廻りや、バク転、側転など、アクロバティックな技を生き生きと見せる俳優たち、また、華やかに舞い踊る女流舞踊家たちと、超歌舞伎ならではの多彩な顔ぶれが揃った座組は楽しい。

©超歌舞伎 Supported by NTT

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初音ミクは全盛を誇る傾城・七綾太夫役で蠱惑(こわく)的な魅力を放つ。獅童演じる保輔が「お前の心を盗みに参った」と口説くように見せかけて七綾太夫を斬る場面は、驚きの展開。太夫の亡魂と女郎蜘蛛が合体し、発光しながらみるみる隈取が現れ、悪へと変化していく場面は大迫力だ。この初音ミク悪役初挑戦は大きな見どころとなったが、しっとり唄い踊る姿も、指先まで美しくあでやかだった。

©超歌舞伎 Supported by NTT

©超歌舞伎 Supported by NTT

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「超歌舞伎」ではこれまでも古典歌舞伎で練られてきた演技、演出術、物語性が取り入れられてきたが、今回はさらに拡大。暗闇のなかで宝物を奪い合う“だんまり”様式美ある殺し場、拍子舞や悪事を働いた人間が善人に戻る“もどり”など、古典ならではの演技、演出、趣向溢れた作品でぐいぐい観客を惹きつける。今年はバーチャル・シンガー鏡音リン&レンの大薩摩(勇壮な唄と三味線演奏)まで披露され、これでもか!と歌舞伎のエッセンスが詰めこまれていた。

©超歌舞伎 Supported by NTT

©超歌舞伎 Supported by NTT

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芝居心あふれるアナログ演出とデジタル技術の融合が超歌舞伎の特色のひとつだが、今回、舞台上の俳優と3D映像がリアルタイムで同じ動きを見せるNTTの超高臨場感通信技術「Kirari!」の「リアルタイム被写体抽出技術(分身の術)」がパワーアップ。「リアルタイムスタイル変換技術(超越の術)」によって、ユーザーのコメントが獅童演じる頼光の体にぐんぐん取り込まれるかのような映像が出現、ユーザーのコメントで力を得て、輝いていくように見えた。


「超歌舞伎」では獅童には「萬屋(よろずや)!」、初音ミクは「初音屋!」とユーザーのコメントが画面に踊る。ユニークなのは女性舞踊家たちには「はなびら屋!」、NTTの最新技術には「電話屋(でんわや)!」と、ユーザーが発明した自由な大向うが掛かるところ。今年はアクロバティックな動きで観客を魅了した巨大蜘蛛の役者や蜘蛛の眷属をつとめるアクション俳優たちに向けて「タランチュ屋!」という、遊び心溢れる大向うが誕生した。さまざまな思いが大量のコメントによって可視化され、舞台と観客と「それぞれの場所」で画面を見つめるユーザーとが一体感を感じたことだろう。


©超歌舞伎 Supported by NTT

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頼光主従に襲いかかる蜘蛛との立ち廻りは、これまた歌舞伎らしさが詰まった場面。和紙でできた蜘蛛の糸「千筋の糸」が紙テープのように舞台にパッと散る様は見事だ。巨大蜘蛛に対峙し、頼光が幾重にも絡まる糸の中心で決死の立廻りを見せる場面は、手に汗握る凄まじさ。ラスボス感あふれる初音ミクに観客は大興奮だ。苦戦する頼光が「さぁニコニコユーザーよ、数多(あまた)の人の言の葉と白き炎(ほむら)を」と呼びかけると、観客は即座に白いペンライトを灯し、画面もユーザーが打ち込む白一色に。化生の執心が鎮められて七綾太夫は吉祥天女に昇華し、平和が訪れた。

©超歌舞伎 Supported by NTT

ラスト、劇中曲としてdorikoが作詞・作曲した「ロミオとシンデレラ」を和服姿の初音ミクがギターをかき鳴らしながら歌い上げ、獅童が客席に「逢いたかった!」とまっすぐな言葉を投げかけて観客をさらに盛り上げる。蜘蛛の糸のような白い紙が舞い、さらには、金の吹雪が降り注ぎ、最高潮の盛り上がりと熱狂の中、いつまでも拍手が鳴り止まなかった。配信約1時間半の総コメント数は、初日が約7万、最終日が約7.6万と驚異的な数字を叩き出した。最終日は忠信の姿に早拵えをした獅童が登場。「千本桜」の曲と共に観客を熱狂に包み込み、コメントは桜で溢れた。

©超歌舞伎 Supported by NTT

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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