ソニーが監視/見守りのデータ通信量を1/100以下に削減できるモニタリングソリューションを開発
ソニーネットワークコミュニケーションズスマートプラットフォーム株式会社(以下、SNCSP)とSREホールディングス株式会社(以下、SRE HD)およびSRE AI Partners株式会社は、3次元空間認識技術とIoTプラットフォームを活用し、監視/見守りにおいてデータ通信量を1/100以下に削減しながら、性能も向上させられるモニタリングソリューションのプロトタイプを開発したことを発表した。
モニタリングソリューション開発の背景
実環境へのIoTの展開とAIサービスの提供においては、データ通信量の増大が課題の一つとして挙げられ、とくに監視/見守り領域においてはネットワークカメラを監視カメラに用いる際、膨大な容量の映像データが通信回線をひっ迫することが、これまで導入の障壁となっていた。
こうした中、3社は上記課題の解決に向けたPoC(Proof of Concept,概念実証)に取り組み、今回、映像から3次元空間情報を抽出し、映像そのものの通信を行うことなく、分析に活用できるデータのみをクラウド上のサーバに送信するソフトウェアのプロトタイプを開発した。同ソフトウェアは以下の処理を実行することで、入手容易な小型端末で実行可能な3次元空間認識を実現する。
2.3次元空間マップの変化から動的物体の場所を特定
3.構成した3次元空間マップの差分を抽出しクラスタリング、ノイズ除去処理を行うことで動的物体を個体ごとに検出
4.検出された各動的物体の3次元空間上の体積、位置、速度等を観測
モニタリングソリューションの特徴
これまで、監視カメラの映像全てをクラウド上に保存することは、膨大な通信コストを要するため現実的ではなかった。モニタリングソリューションではAIが映像から必要な情報のみを抽出するため、全ての映像を送る必要がなくなり、通信量を1/100以下に削減できる。
例えば、監視カメラ側のAIが検知を行い、侵入者などの異常が観測された一定時間のみ映像を送ることが可能。この際、MEEQを用いることで、多数あるIoTカメラで観測された映像や抽出された3次元空間情報などのデータを安全に集約し管理できる。さらに、以下の利点により、物体認識などの従来型の画像認識AIを用いた監視ソリューションと比べ、監視/見守りの利便性を向上させることが可能。
AIを用いた監視では夜間は赤外線・高感度カメラを利用する場合が多く、侵入者などの特定の動的物体を検知するAIの性能が、日中に比べ劣化することが一般的。同技術では暗所でも情報を取得できる深度センサーで取得可能な3次元空間情報を元に動的物体を検知しているため、夜間も監視を行うことが可能。
2.高価な専用機器を必要としない
従来型のリアルタイム物体認識AIと比べ、必要とする計算量を90%以上 削減できるため、入手容易な小型端末を利用できる。こうした端末は片手で持ち運ぶことができ、扱いが容易。導入にかかる費用/手間を抑えながらも、リアルタイムで動物体情報を認識する。
3.学習データが不要のため、容易にAI監視カメラを導入できる
従来の画像情報を用いた機械学習では人間や動物、車などの動的物体を画像から検知するために、対象の学習データの準備が必要だが、同技術では監視場面と体積の情報を活用することで、学習データなしに動的物体を検知することが可能。
今後の展望
監視/見守り用途においてはショッピングモールや病院、工場などの不動産施設のモニタリングのほか、介護施設や在宅介護での見守り等への活用を推進していく。物流業界においては倉庫やトラック荷台の充填率を測定することで、業務支援にも活用可能。従来のRFIDタグを用いた管理では庫内にある在庫の種類と体積はわかるものの、どのように配置されているかを補足することは困難だった。同技術により庫内の空き空間等の3次元空間情報をリアルタイムで検知することが可能となる。
3社は様々な産業における監視/見守りに適用可能なDXソリューションの創出を目指していく。また、引き続き、同技術を活用したソリューションを共同で開発し、業務課題を解決していくビジネスパートナーを広く歓迎する。
ABOUT THE AUTHOR /
山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。