協働ロボット活用からメタマテリアル放熱シートまで 「テクノフロンティア2021」レポート

メカトロ・エレクトロニクスを構成する要素技術および設計支援ソリューション等を対象とする「TECHNO-FRONTIER2021/INDUSTRY-FRONTIER2021」が2021年6月23日から25日の日程で東京ビッグサイト青海展示棟で開催された。主催は一般社団法人日本能率協会。ロボット関連では技術商社のリョーサンが協働ロボットを活用したネジ締め等のデモを行い、東京ロボティクスが3次元カメラを使ったピッキングのデモを行った。簡単にレポートする。なお同展示会はオンラインでも開催中で、6/8-7/16日までの会期中は展示詳細をウェブで見ることもできる。


リョーサン 中国製&ドイツ製の協働ロボットアーム

リョーサン FRANKA EMIKA の7軸協働ロボット「Powertool」

リョーサンが出展していたのは国内代理店として販売している中国SIASUN(新松机器人自動化)社製の協働ロボット「DUCO」ファミリーと、ドイツFRANKA EMIKA社の7軸協働ロボット。SIASUN社の協働ロボットは世界30カ国以上で4000台以上の導入実績があるという。

リョーサン SIASUN社製の協働ロボット

SIASUNのGCR10は最大可搬重量20kgで、日本語インターフェースも対応した。SCRシリーズは7軸で0.02mmの繰り返し精度を持つ。大手でもまだ各プロセスの間では人手が用いられており、リョーサンでは、そこを協働ロボットで自動化する提案を行っているとのことだった。

■ 動画




東京ロボティクス ヤマハ発動機と開発中の力制御協働アームと3次元カメラ「SL40」

東京ロボティクスブース。不定形物のピッキングとして唐揚げの模型をピックするデモ。平均タクトタイムは2.5秒

早稲田大学発のスタートアップ・東京ロボティクスは今年1月から販売開始した3次元カメラ Torobo Eye「SL40」と、同社がヤマハ発動機と共同開発中の力制御協働アーム、また一般的な産業用ロボットを使ったピッキングをデモ。3次元カメラの「SL40」については過去記事を参照して頂きたい(関連記事「東京ロボティクス、小型軽量で高精度なロボット用3次元カメラ Torobo Eye「SL40」を発売」)。

東京ロボティクスとヤマハ発動機が開発中の力制御協働アーム。量産を目指している

■ 動画




THK 新しいナビ方式の搬送ロボット「SIGNAS」

THKブース

THKは搬送ロボット「SIGNAS」を出展。2020年9月から受注を開始している新しい搬送ロボットだ。積載荷重は150kg、牽引で500kg。

THK 搬送ロボット「SIGNAS」

特徴はナビゲーション方式にある。ルートテープは不要で、環境側に貼った「サインポスト」という目印をロボット内蔵のステレオカメラで常に見て、距離・方位を計測して移動する。右へ行け、左へ行けといった指示も出せるので、サインポストを設置するだけで経路を設定できる。経路変更もサインポストを移動させるだけで済む利点がある。価格は標準セットで200万円から。なお名前の「SIGNAS」は「Signpost Navigation System」の頭文字をとったもの。

独自の「サインポスト」でルートを設定する




CuboRex ねこ車電動化キット「E-Cat kit」

CuboRexブース

最近、テレビメディアへの露出も増えて来たベンチャーのCuboRex(キューボレックス)は、みかん収穫現場などの軽労化のためのねこ車(一輪車)電動化キット「E-Cat kit」、電動クローラユニット「CuBase」ほかを出展。大型汎用クローラ「CuGoMEGA」は最大積載重量100kgで、大型搬送台車の試作に対応する。

「E-Cat kit」。任意の一輪車を電動化できる




丸紅情報システムズ 自律走行型搬送ロボット「EffiBOT」

丸紅情報システムズは自律走行型搬送ロボット「EffiBOT」を販売中。フランスEffidence社製で、販売価格は数百万円台。長さ1450mmの大きな車体サイズ、直径40cmの大型タイヤによる高い走行性能が特徴。4WDタイプと2WDタイプがあり、2WDタイプは最大積載200kg、4WDタイプは最大積載300kg。オプショントレーラーを使った牽引は500kg。

自律走行型搬送ロボット「EffiBOT」




メタマテリアル放熱シート「VSI(ヴィサイ)」

メタマテリアル放熱シート「VSI(ヴィサイ)」。虹色に見えるのはマイクロキャビティによる回折光

今回、個人的に最も興味深かった出展物は、ニチコンブースで出展されていた赤外線波長選択型放熱シート「VSI(ヴィサイ)」だ。オキツモが開発した樹脂で密閉された空間で発生する熱を放射するためのシートで、表面に微細な加工が施されている。このマイクロキャビティ構造で熱源から発生する赤外線の波長を変換し、選択放射することができる。樹脂が透過しやすい波長の赤外線を放射することで、熱がこもることを防ぐ。

■ 動画

放熱効果は熱源の温度が高いほど高くなる。ロボットや産業用PCはもちろん、スマホや車載機器そのほかへの応用が期待される。課題はコストと生産体制だという。

CPUなど熱源の上に貼って用いる(左側)




趣味の宇宙開発「リーマンサット・プロジェクト」

リーマンサット・プロジェクトが開発した自撮衛星「RSP-01(Selfie-sh)」。衛星からアームが飛び出し自撮りした

そのほか面白かった展示としては「リーマンサット・プロジェクト」があった。一般のサラリーマンや学生による「趣味」の宇宙開発団体だという。自撮りをするキューブサット(小型人工衛星)の「RSP-01(Selfie-sh)」を2021年2月に打ち上げている。

自撮衛星「RSP-01(Selfie-sh)」の模型。手前が実際に衛星が自撮りした写真

現在、LEDを搭載した子衛星を打ち出すキューブサット「RSP-02」や、月面探査ローバー「ZIPANGU」なども開発中とのこと。

「RSP-02」。さらに小型の子衛星を打ち出して写真を撮る予定

月面ローバー「ZIPANGU」も開発中


ABOUT THE AUTHOR / 

森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

PR

連載・コラム