ドコモは東京の本社ビル内で「MWC 2021」に出展する技術のデモや5G高度化/6Gに関する取組み内容の説明と展示イベント「MWC2021 docomo Special Showcase in Tokyo」を開催した。前回「ドコモが5G高度化/6Gへの取り組みを報道向けに公開 「MWC 2021」の展示技術を「docomo Special Showcase in Tokyo」で」の続き。
5G/6Gのカバレッジを拡張する「つまむアンテナ」とは
ドコモは5G/6Gのカバレッジを安定・拡大するために研究している最新技術「HAPSを活用したNTN技術」「メタサーフェスレンズ」「つまむアンテナ」の3つをこのイベントで紹介した。「HAPSを活用したNTN技術」「メタサーフェスレンズ」については前回解説したので、今回は「つまむアンテナ」を紹介していこう。「つまむアンテナ」の技術はユニークだ。誘導体導波路を流れる電波がリークする特性を利用したもので、個人的には地下鉄で使われている通信技術「漏洩同軸ケーブル」の原理に似ているとも感じた。
基地局から飛ばしている電波は、遮蔽物が障害となって遠くに届きにくくなる。例えば、下図の右上ように、遮蔽物がなければ電波のやりとりができるが、遮蔽板があると電波が届かないエリアがででくる。実際にはドアや鉄板、壁などが相当する。
そこで誘導体導波路という技術を使う。誘導体導波路の中には電波が通っていて、誘導体導波路の任意の場所に「つまむアンテナ」を設置することでそこが基地局の代わりのような役目を果たす(上図)。
運用のイメージを言うと、例えば、廊下の壁に誘導体導波路を這わせておき、会議室のある場所に「つまむアンテナ」をはさんで設置することで、そこが電波の放射部となり、「つまむアンテナ」とデバイスとで通信ができるようになる。
デモの様子を動画で撮ってきたのでご覧頂きたい。
ベルトコンベアの動く様子(A)をビデオカメラ(B)が映像データとして捉え、ケーブルで金色のボックス:変換器(C)に送信する。
金色のボックス(C)は60GHzに変換して誘導体導波路に流す装置。
任意の位置に「つまむアンテナ」(D)を設置すると、そこから電波が送信され、ブースの左端にある受信器(E)に電波が届けられ、ベルトコンベアの動く様子が左のテレビ(F)に映像として映し出される。
次に故意に鉄板のドアを閉めて(G)、「つまむアンテナ」(D)と受信器(E)の間を遮蔽すると、60GHz電波は鉄板のドアに遮断されて動画は止まる(F)。そこで、鉄板の外側の誘導体導波路に、別の「つまむアンテナ」(H)を設置する。その「つまむアンテナ」と受信器の間はクリアなため、通信と動画映像が再開する様子が見られる。
■「つまむアンテナ」のデモ
従来だと、中継器や親機を設置することで(スマートフォンやパソコン等と)安定した通信環境を構築するが、回り込みの少ない高周波の電波だと中継器や親機の数が増えてしまい、高額になる傾向にある。その点を解決するソリューションとして「つまむアンテナ」を使うことで、比較的安価に、更には設置場所も簡単に変更することができるネットワークを構築することができる。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。