ドコモは東京の本社ビル内で、スペインで開催された「MWC 2021」に出展した最新技術のデモと、5G高度化/6Gに関する取組み内容を説明するクローズドな報道関係者向け展示イベント「MWC2021 docomo Special Showcase in Tokyo」を開催した。(MWCはMobile World Congressの略。モバイルや無線通信を中心にした世界的なイベント)
紹介された最新技術の中で興味を持ったのは別の記事「ドコモが5G高度化/6Gへの取り組みを報道向けに公開 「MWC 2021」の展示技術を「docomo Special Showcase in Tokyo」で」と「ドコモが5G/6Gのカバレッジを拡張する最新技術「つまむアンテナ」を公開」で解説した。今回はその続編として5GとVRを活用した最新技術を紹介しよう。遠隔カヤック操作システムとABALシステムだ。ABALシステムはドコモとディズニーとのコラボによって実現したディズニー「プリンセス展」でVRコンテンツも開発、現在、渋谷マルイで開催中だ。
5Gのメリットを体感しやすい「VR」
4Gからの拡張で期待されて登場した「5G」。現状では各キャリアのカバーエリアの拡大が思うように進んでいないこともあるが、高速や大容量といった5Gの進化が消費者にとっては実感しづらいものになっている。
「5G」には他にもいくつかの利点があるが、業界で最も注目されているのは実は「低遅延」、つまり反応性(レスポンス)の良さだ。自動運転やドローン、ロボットなどのデバイスの制御や反応、ゲームなどのリアル感にはレスポンスがとても重要な要素だからだ。ところが一部のゲーマーを除けば、一般消費者にはこの良さは伝わりづらい。
そこで各キャリアは「5G」のメリットを「VR」や「MR」で表現しようとPRに力を入れるという構図になっている。つまりわかりやすく言うと現状ではニーズよりシーズが先行している。
とはいえ「VR」は”体験したことがない””未来的と感じる”という人もまだまだ多く、視覚的であり面白いので展示の要になってくる。
今回の展示で紹介されていたVRサービスは、いずれも「ドコモオープンハウス2020」や「2019国際ロボット展」等でも展示されていたもの。目新しさはないが、ブラッシュアップされた内容になっていたり、導入実績が進んでいたりと、進化が確認できるものになっていた。
5G×BodySharing 遠隔カヤックシステム
これは「5G×BodySharingを活用した遠隔カヤックシステム」。会場のドコモ本社と品川を繋ぎ、ドコモ本社からあたかも品川のプール(スタジオ)に作られたマングローブ林でカヤックを操作しているかのような体験ができるシステムだ。
VRの視覚だけでなくカヤック操作を体験し、水の抵抗やマングローブの樹にカヤックやオールが当たった時の衝撃などフォースフィードバック技術も導入されているのでリアルな体験に繋がる。コロナ禍にも対応できる「リモートツーリズム」に活用できる。
遠隔地に触覚を伝える技術「BodySharing」の研究開発はH2L株式会社が行なっている。この技術は身体データの蓄積と活用をフィットネスやウェルネスにも応用できると期待されている。
■動画
遠隔からのVR空間での観光・買い物体験「ABALシステム」
最先端のVR技術を研究・開発しているABALが開発したリアル空間とバーチャル空間を掛け合わせたプラットフォーム「ABALシステム」。複数のユーザがバーチャル空間にアバターとして同時に入ることができ、ユーザ同士が会話することができる。
例えば、青森の物産展のVR空間に入った場合、VR空間の中の店員に質問したり、商品の説明を受けたりすることができる。更にはVR空間で青森の観光を視覚で疑似体験することもできる。
このシステムは5Gの高速大容量・低遅延を活用したものになっている。
今年の3月、東京駅で青森の観光地やビール工場を再現し、物産展で青森の名産品が買い物できるシステムとして実証実験を行った。約600名が体験し、7割弱が商品を実際に購入し、実用性を確認するとともに確かな実績を築いた。
VR空間を歩き回って探索
「ABALシステム」のもうひとつ特徴が、現実の空間を動き回りながら、VRゴーグルの中のVR空間を楽しむことができる点。例えば、デモの実際の会場はカーペットが敷かれた平面の空間だが、VRゴーグルの中では360度ライブ会場が広がっていて、大観衆と一体となって好きな場所に移動しながらライブステージを堪能することができる。
また、VR空間で実際のショッピングを楽しむこともできる。その場合も実際に歩きながら商品を選んだり、店員に説明を聞いたり、気に入った商品があれば視線入力で購入することができる。
「WHAT IS LOVE? ディズニープリンセス展 VR」開催
ドコモはこの「ABALシステム」を活用し、ディズニープリンセス展製作委員会と共同で、VR体験「WHAT IS LOVE? ディズニープリンセス展VR」を開催中だ。「ディズニープリンセス展VR」は2021年6月23日(水)〜7月29日(木)まで、渋谷マルイで行われているディズニープリンセスの展示会「WHAT IS LOVE?~輝くヒミツは、プリンセスの世界に。~」(ディズニープリンセス展)に併設されている、もうひとつのディズニープリンセス展。
「ディズニープリンセス展VR」は、VR技術によって複数フロアと奥行きのある広大なVR空間を構築し、VRゴーグルを装着した複数人のユーザが等身大のアバターを通じて、それぞれ異なる体験ができるコンテンツとなっている。VR空間内ではアバター同士のコミュニケーション、ショッピング体験も可能。
なお、音声ガイドは、ディズニー映画『シンデレラ』(実写版)の日本版声優を務めた城田優さんが担当している。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。