『手術支援ロボット』は腹・胸腔の内視鏡手術で使用され、医師が内視鏡の画像を見ながら、ロボットアームに取り付けた手術器具を操作する。従来の手術と比べ、手ぶれをコンピューターが補正するため精度に優れており、手術時間は短く、手術中の出血量も少なくて済む。
コロナ禍で医療のひっ迫感が強まり、医師の目や手として働き、精緻で安全な手術を行える『手術支援ロボット』が注目される現状において、資産運用会社である三井住友DSアセットマネジメント株式会社は、経済イベントや市場動向に関するマーケットレポートを日々発行しており、2021年7月7日に「『手術支援ロボット』の開発競争が加速」についてのマーケットレポートを発行した。
同レポートでは、これまで『手術支援ロボット』は米インテュイティブ・サージカル社のダヴィンチ(冒頭の写真)が圧倒的な地位を占めてきたが、主な特許が切れたことを契機に、価格が大幅に下がる可能性が高まったため、国内外の多くの企業が『手術支援ロボット』に参入して開発競争が加速していると述べている。
『手術支援ロボット』のシェアについて
1999年に米インテュイティブ・サージカル社がダヴィンチの名称で初めて製品化し世界シェア7割程度と圧倒的な地位を占めてきたが、ダヴィンチの特許の多くが2019年までに期限切れとなる。これにより、億円単位の導入費用がかかっていた価格が大幅に下がる見込みとなり、参入が相次いで開発競争が加速。各社は軽量化や機能の簡略化などによりダヴィンチを大幅に下回る価格に抑えてシェア獲得を目指している。
国内外企業が開発を急ぐ
産業用ロボットを手掛ける川崎重工業と医療機器メーカーのシスメックスが共同出資し設立した「メディカロイド」は、2020年8月に厚生労働省から製造販売承認を取得。12月には国産初の『手術支援ロボット』ヒノトリを発売した。日本人の体格に合うようにロボットを小型化し、買い増しや更新、サイズや価格面で『手術支援ロボット』を導入できなかった病院などでの新設需要を狙う方針だ。
また、東京工業大学発のスタートアップ「リバーフィールド」は、ロボットアームの駆動システムに空気圧を使用し、「手で触れている感覚」を伝える『手術支援ロボット』EMARO(エマロ)を製品化。シンプルな機構で軽量コンパクト化が可能なため、ダヴィンチの中心機種の約半額を目指しロボットを導入している大病院などの2台目需要を狙う方針だ。
【今後の展開】『手術支援ロボット』の用途拡大や価格低下にも期待
独占状態にあったダヴィンチの特許の期限切れにより『手術支援ロボット』の開発競争が加速。共同出資会社の「メディカロイド」は高速通信規格5Gで『手術支援ロボット』と5G回線を使う遠隔手術の実証実験を始め、遠隔手術を目指すなど使用法の多様化も進み始めた。『手術支援ロボット』の潜在的なニーズは大きいとみられており、使用法の多様化や価格低下などによる市場の拡大が期待される。なお、同社では、今回のレポートにおいて個別銘柄に言及しているが、同該銘柄を推奨するものではないとしている。
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