ソニーCSL『人類の未来のための研究』を「Sony Park展」で開催 超知覚の体験デモなど 7つのテーマで展示

Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)は2024年に完成予定の「新 Ginza Sony Park」に向けた建設工事を始める2021年10月を前に、ソニーが取り組む多様な6つの分野をテーマにしたファイナルプログラム『Sony Park展』を2021年9月30日(木)まで開催している。

『Sony Park展』は人類の未来のための研究に情熱を注ぐソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の研究員による最新の研究内容を展示する『人類の未来のための研究』を2021年7月24日(土)~8月10日(火)まで「Ginza Sony Park」(PARK B3/地下3階)で開催することを発表した。入場は無料で、事前予約は不要(人数制限あり)。


ソニーCSLの活動の中から7つのテーマを展示

所長の北野宏明氏が「人類の未来のための研究を行う」と宣言するソニーCSLでは、研究者ひとりひとりが自ら目標を立て、人類の未来のためとなる研究を行い、その成果をもって世の中を変えていくことを目指している。


これらの研究の中から、人間が関わることで生態系の多様性や機能を拡張する「協生農法などの拡張生態系」、国際宇宙ステーションで実験が進む「小型衛星光通信システム(SOLISS)」の実機モック、安定的に再生可能エネルギーを供給する「オープンエネルギーシステム」、健常者の記録を超えることを目指す「競技用義足」、自分の顔がいつの間にか他者の顔に変容する体験「Morphing Identity (モーフィング・アイデンティティ)」など、食や環境、エネルギーなどの地球環境や社会の課題を扱う Global Agenda(グローバル・アジェンダ) と、人間の能力拡張(Human Augmentation / Creativity)をテーマとした研究内容を紹介する。



ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長 北野 宏明氏からのコメント
研究をすることは、未来を切り開いていくことです。そしてその未来は、各々の研究者のイマジネーションの中に存在しています。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は、とてつもないイマジネーションをもつ研究者をサポートしていくことで、想像を超える未来を作ることに貢献する研究所です。

我々は、「人類の未来のための研究」を行うと宣言しています。その人類は、驚くべき潜在能力と大きな多様性を有しており、その創造性、知的能力、身体能力などを最大限まで引き出し、テクノロジーを使ってさらに拡張していくことは、人類の可能性にチャレンジしていくことになります。このような可能性がある反面、我々人類は、地球環境、貧困、高齢化、食料、医療・健康などで、極めて難しい問題に直面しています。これらの問題は、複雑かつ多様であり、我々に極めて過酷な現実を突きつけるものであり、その解決には、領域を超えた全く新しい発想と卓越した実行力が必要となるでしょう。我々は、新たな可能性のため、問題の解決のために行動し、世の中に独自に貢献する研究所になることを目指しています。

これはある意味で、各々の研究者が自らのイマジネーションの限界に挑むことでもあります。未来で起きること、実現すべきことの極限をできるだけ具体的かつ詳細に想像し、そしてそれを実際に実現させる能力が問われています。未来は過去の延長ではないのです。しかし、どのような未来をつくるかは、我々自身の行動の結果です。この未来のイメージこそが、今なすべきことの方向を決めます。

今回は我々の活動のなかから、7つのテーマを展示しています。各人の研究やプロジェクトを通して、人類や社会の未来の可能性を感じていただければ幸いです。


『人類の未来のための研究』展示内容



食や環境、エネルギーなどの社会課題を扱う「Global Agenda」

食や環境、エネルギーなどの社会課題を扱う Global AgendaソニーCSLが取り組む大きな研究領域のひとつ「Global Agenda」(グローバルアジェンダ)。地球環境の問題や地球規模の大きな問題に対してどうアプローチするかという分野から3テーマを紹介する。

シネコポータル – 協生農法をはじめとする拡張生態系への入口:舩橋 真俊 氏
人間は環境を破壊するのと同じ以上に、自然を構築することもできる存在。過去10年にわたる協生農法(Synecoculture)の研究から、人間が介在することで、生態系の多様性や機能性を拡張できることがわかっている。今回展示するシネコポータル(Syneco Portal)は、小さな拡張生態系を作りながら周囲の環境との交流を体験し、学ぶための入り口。小さな生態系は周囲の緑地や風・雨・光、そして他の場所にある別のポータルや未だ見ぬ人々とつながることを通じて、誰でも生態系の豊かさに根差した生き方を深めていくことができるきっかけとなるようデザインされている。


Syneco Portalのイメージ(協生農法はSDGsの17のゴールのうち、11のゴールの達成に貢献する。)

光ディスク技術を用いた宇宙光通信:SOL Project
インターネット環境が十分整備されていない地域でも通信可能にしたり、リアルタイム情報化社会を支えたりするために、衛星を使った通信に大きな期待が寄せられている。
SOL Projectでは長距離空間の大容量データ通信を可能とする、小型衛星に搭載可能な光通信システムの研究開発を行っている。

会場では国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟に搭載されて光通信の試験が実施されている「小型衛星光通信システム(SOLISS)」の実機モックを展示する。長距離空間光通信技術の確立によって、将来的には人類の宇宙への生存圏拡大など、世の中は大きく変わるかもしれない。

小型衛星光通信システム実機モック

オープンエネルギーシステム:OES Project
再生可能エネルギーの導入+電力システムの分散化を促進するシステム現代社会における電力システムは、災害による大規模停電や長距離送電のためのインフラ維持コスト上昇など、数々の課題を抱えている。また、地球温暖化や資源枯渇リスク増大から再生可能エネルギーへの期待は高まるものの、従来の電力システムでは天候により発電量が変動する再生可能エネルギーの導入量に限界がある。

パネル展示をするOES Projectでは同プロジェクトで開発した技術を搭載した電力融通ソフトウェアによって、コミュニティ内で再生可能エネルギーを融通しあい、再生可能エネルギーを安定的に使う、地消地産型の分散電力プラットフォームシステムの実現が可能になった。



災害に強いインフラで安定的に再生可能エネルギーを供給する、世界中の人々に安心でクリーンな電力を届ける、そんな理想のエネルギー社会を目指し、現在、徳島県三好市のワーケーション施設ウマバ・スクールコテージを中心に実証システムを構築中。


人間の能力拡張 Human Augumentation / Creativity

身体能力や知覚・感覚、クリエイティビティなどの能力をセンサーやAIなどの技術を使用して拡張し、人間の可能性にチャレンジする「Human Augmentation」(ヒューマン・オーグメンテーション)の研究分野から3テーマを紹介する。

Human n + Technology = Human n+1:遠藤 謙氏
二足歩行ロボットの研究者だった遠藤研究員が取り組む義足プロジェクト。もしも足がなかったとしても、足と同じように動くテクノロジーで普通に歩くことも走ることもできれば、足がないことは障がいではなくなるかもしれない。『五体不満足』の著者でもある乙武洋匡氏とともに、ロボティクスで人間の身体の進化を目指す「OTOTAKE PROJECT」で実際
に使ったロボット義足の実機展示などを行う。

ロボット義足

また、ロボット義足の研究開発で得た知見を応用し開発した競技用義足も展示する。競技用義足をつけた選手が健常者よりも早い記録で走ることができたら、障がい者への世間の見方も変わるだろう。技術は障がいを取り除くばかりか、人間の本来持つ能力自体を拡張する手段となるかもしれない。誰もが多様化するそれぞれの幸せを追求して行けるような、そんな未来を想像してみよう。

競技用義足

遊びの理論:アレクシー・アンドレ氏
小さなキューブに好きなものを取りつけ、自由なあそびを楽しめるソニー・インタラクティブエンタテインメントのロボットトイ「toio」(トイオ)。キューブの位置と向きを、センサーで読み取る。設定したルールに基づき、キューブを動かす。というシンプルなコンセプトで、子どもたちを様々な創意工夫へと導くロボットトイ「toio」は自宅でも簡単にプログラミング学習できる商品。toioの初期コンセプトを提唱し「toio 博士」でもあるアレクシー・アンドレ研究員による、「toio」と身の回りにあるものを組み合わせて“描く”あそびに注目した、クリエイティビティを拡張するメディアアートをお披露目する。



Superception‒超知覚‒:笠原 俊一氏
コンピュータ技術を用いて人間の感覚に介入したり、人間の知覚を接続することで、工学的に知覚や認知を拡張、変容させる研究の枠組み「Superception(スーパーセプション) ‒ 超知覚」の研究の一つ「Morphing Identity」(モーフィング・アイデンティティ)を展示する。



自分自身が思う自分と、他者が思う自分がどのように変容し得るのかを探索する体験型の作品。二つのブースでカメラを通して映し出される映像は、二人それぞれ自分の体の動きを映し出し、やがて自分の顔ともう一人の顔とが次第に融合していく。人間の変化知覚特性に基づいて、計算的に作り出された滑らかな変化をリアルタイムに再合成することで、変化を知覚しない顔の変化を引き起す。


自分の顔だと分かっている筈なのに、自分だった顔がいつの間にか他者の顔に変容していく体験を通じて、人が持つアイデンティティについて迫る。


「ゆたかさ」を考える研究室

東京を拠点とし、パリに支所を持つソニーCSLは、昨年2020年4月に国内初の支所「京都研究室」を開設した。京都研究室ではテクノロジーが進化している中で、金銭的、物質的に満たされるものにはとどまらない「ゆたかさ」も追求できるとの認識のもと、「人類の精神性のゆたかさに貢献する」を価値の中心に据えて研究を進めている。

来園者参加型の展示「ゆたかな未来」では壁に書かれた問いに対して、自分の考えをシェアする。Global AgendaやHuman Augmentationの数々の「人類の未来のための研究」を観覧した後に、どんな未来が見えたのか。ひとこと付箋に書き残してみよう。効率化や自動化が人々の生活に利便性や充足感を提供する現代で、本当の「ゆたかさ」について考え、また、まわりの人々との関わりを考えることができるコンテンツとなっている。




子ども向けワークショップ

ソニー・グローバルエデュケーション(SGED)が「出会いやつながりを通じて子どもたちの生きる力を育む」「元来子どもたちが持つ力を社会実装する」ことを目的として実施している「Kids“Power”Project」とのコラボレーション企画。「アソビ化 – 掃除をアソビにしよう(仮)」をテーマに小学生を対象にしたワークショップを開催する。

「鬼ごっこ」「氷鬼」「だるまさんがころんだ」など、子どもたちの遊びがなぜおもしろいのかを考察し、その気づきや発見をもとにイヤなこと・面倒なことがどうすれば遊びになるかを考える。作った遊びをみんなに発表して、苦労した点なども共有し、異なる視点や考えにも気づいてもらう。子ども達のSTEAM教育に対する関心を高める内容となっている。

SGEDのエデュケーションエヴァンジェリスト清水輝大氏が内容を設計し、アレクシー研究員が登壇する「楽しいことを発想する視点」を子どもたちに追体験してもらうワークショップ。
日時 2021年8月7日(土)・8月14日(土)・8月28日(土) 14:00~17:00
場所 全日程ともオンライン開催
対象者 小学3年生~6年生とその保護者3日間とも参加できる人
定員 10組
募集期間 2021年7月15日(木)~7月29日(木)
応募ページ(申し込み多数の場合は抽選) https://www.sonyged.com/ja/2021/07/15/events-ja/kids-power-project-2/
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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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