株式会社ピアズの子会社である株式会社Qualiagramは、人的資本を研究する研究者・大塚 美幸氏(九州大学大学院 馬奈木研究室所属)および株式会社エモスタと、表情解析によって対人コミュニケーション能力を測る実証実験を2021年6月より開始。以来、28名の学生の協力を得て解析を行なった成果の一部を公表するとともに、更なる研究促進のため追加実験に加わる法人及び教育機関の募集を開始したことを発表した。
感情認識AIシステムを使って感情解析
実証実験では大学生28名を対象に、zoomを使用した1対1のWEB面接を実施。ピアズの面接官が通常の面接時に行う既定の質問5問を投げかけ、学生が回答する様子を録画。模擬面接後には面接官、学生双方にサーベイを実施し、面接官はピアズの採用基準に沿って全学生の評価・ランク付けを行い、サーベイ・評価結果のデータベースを作成。一方ではエモスタの感情認識AIシステムを使って録画した模擬面接動画の感情解析を実施した。模擬面談、サーベイを通じて、以下の情報を当事者の同意を得た上で取得、解析対象とした。
・面接官が観察した学生の感情体験
・対人不安
・自己観
・対人コミュニケーション能力(印象、集中力、アイコンタクト、ラポール形成度合い)
・感情認識AIを用いた表情データ
・面接評価
解析結果
【主観的な学生の感情体験と面接評価の関係】
面談対象者の感じた感情は面談評価に影響がない
【面接官が観察した学生の感情体験と面接評価の関係】
「おびえた」感情のみ面接評価との関連が見られた。自己開示度合いを重視する面接官の姿勢が影響している可能性がある。
【対人不安、自己観と面接評価の関係】
対人不安(Social Anxiety)が大きいと面接評価にネガティブな影響がある。相互独立的自己感(Independent Self-Construal)の強さが社会不安を減少させ、面談評価を上昇させるモデルが観察された。一見「おびえた」感情の観測と面談評価との関連と矛盾するが、特定の話題における不安や「おびえ」は表明し自己開示を表現しつつも、面談担当者を対象としてそれら感情を表明しないことがポイントかもしれない。
【表情データと面接評価の関係1:特定の表情と面接評価の関係】
「怒り」の表情は面接評価を高め、「驚き」の表情は面接評価を低める傾向があった。「怒り」はアサーション(自他を尊重するさわやかな自己表現)を、「驚き」はナイーブさを想起させている可能性がある。同時に自己肯定感の強さを重視する面接官の姿勢が影響している可能性もある。
【表情データと面接評価の関係2:表情の組み合わせ、時系列パターンと面接評価の関係】
面接評価の高低それぞれのグループで異なるパターンが観察される。データが充分に蓄積すれば面接評価を高めるパターンの抽出が期待できる。
今後の展望
解析を通じていくつか有用なパターンや示唆が得られ、一定の成果は得られたものの、n=28とサンプル数が不足しているため更なる検証が必要。また、これらの中には面接を実施し、評価したピアズの採用におけるペルソナが色濃く反映された内容も含まれているため、採用ペルソナ像を意識した解析が重要だと考えられる。
ピアズは特に「接客」や「接遇」に関わるペルソナを重視している背景を踏まえ、当該業務が存在する「小売」「金融」「観光」「医療」などの業界に属する企業および関連する学部を有する教育機関で、実験パートナーを募集する。更なるサンプル数獲得により、上記のようなインサイトに加え、今回はデータ不足のため取り組めなかった「対人コミュニケーション能力(印象、集中力、アイコンタクト、ラポール形成度合い)」と「感情認識AIを用いた表情データ」の関連性についての解析も可能となる。
株式会社ピアズ
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。