大阪大学とCA、自律制御と遠隔操作を組み合わせて一人で5体のロボットを活用 役所・空港・商業施設で調査へ

株式会社サイバーエージェントの研究開発組織「AI Lab」と大阪大学大学院基礎工学研究科の先端知能システム(サイバーエージェント)共同研究講座は、ムーンショット型研究開発事業の一環として、「ロボットによる次世代サービスの実現」をテーマに3つのフィールドで実証プロジェクトを開始することを発表した。同実証プロジェクトでは自律制御と遠隔操作を組み合わせて1人が5体のロボットを活用し接客を行うことで、各フィールドにおける新たなサービス提供およびビジネス機会の創出が実現できるかを調査する。


3つのフィールドで1人5体のロボット接客を実施

近年、少子高齢化に伴う労働力不足が懸念されるなか、これからの日本の発展のために若者から高齢者まで様々な年齢・背景・価値観を有する人々が自らのライフスタイルに応じて多様な活動に参画できる社会の実現が求められている。そのための手段として、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発事業」では人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を作ることをターゲットに掲げている。これまで「AI Lab」と大阪大学大学院基礎工学研究科の先端知能システム(サイバーエージェント)共同研究講座では、その一環として「遠隔ロボットで働く」をテーマとした実証実験を進めてきた。

ムーンショット型研究開発事業とは
超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する制度。ムーンショット目標1.2.3.6については科学技術振興機構が担当。「AI Lab」と大阪大学大学院基礎工学研究科の共同研究講座では、石黒浩教授がプロジェクトマネージャーとして推進しているプロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」の一環として、現時点での最新技術によるアバターロボット接客の実現可能性と課題の模索を目的に、様々なフィールドで実証プロジェクトを進めている。

これまでの実証実験からは、1人で1体のロボットを操作することで販売促進効果・顧客満足度の向上などが見られた一方、1体のロボットでは利用客に対し対応できる数に限界があり、潜在的な顧客ニーズの掘り起こしや新たな顧客との接点作りが難しいという課題があった。こうした結果から、1人で複数体のロボット操作が可能な仕組みづくりが期待されている。

このような背景のもと、このたび行うプロジェクトでは自律制御と遠隔操作のハイブリットで1人5体のロボット接客を実施し、接客者のパフォーマンスを拡張した次世代サービスの提供ができるかを3つのフィールドで調査する。


役所・空港・商業施設で調査

今回の実証実験ではコロナ禍における新たな接客様式としてロボット活用が期待されている行政・公共交通機関・商業施設において、実証を行う。各フィールドの業務規模・課題に応じて、操作者(接客者)とロボットの組数を変えることで顧客満足度を損なうことなく顧客へのサービス提供の実現ができるかを調査する。

第1弾:役所(豊中市)
・市民の声を聴きやすい新たなコミュニケーションの形を模索
・「操作者1人、自律と遠隔を組み合わせたロボット5体」での市民対応を実現


第2弾:空港(関西エアポート)
・空港内の魅力発信、ユーザーに新たな旅の体験の提供を模索
・「操作者2人、自律と遠隔を組み合わせたロボット10体」での接客を実現


第3弾:商業施設(東急ハンズ心斎橋店)
・困ったをすぐに解決、ユーザーの新たな購買体験を模索
・「操作者4人、自律と遠隔を組み合わせたロボット20体」での接客を実現


各フィールド企業様との取り組み詳細(実証期間・実証内容等)は、それぞれ順次公開予定。また調査結果については、12月以降に発表の場を設ける予定。同プロジェクトにおいて蓄積した知見を広く共有することで、実社会におけるロボット活用の可能性を広げるとともに、速やかな社会実装の実現に貢献していく。

今後も「AI Lab」と大阪大学大学院基礎工学研究科は、共同研究講座における実証を通して得た結果をもとにロボットによる遠隔対話の研究を進め、実用化に向けて取り組んでいくとしている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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