アクセンチュア株式会社は「責任あるAIガバナンスガイドブック」をウェブで公開した。無料でダウンロードすることができる。また、書籍「責任あるAIの実践」(東洋経済新報社刊)を2021年8月20日に発売、それらに伴って「責任あるAI」についての勉強会を報道関係者向けに開催した。
アクセンチュアは、これから先も「AI市場は引き続き高い成長率を保持」するとみている。例えば、「世界のAIサービス分野の売上高」をみると、2021年のAI関連ソフトウェア、サービス、ハードウェアの総売上高は約35兆円、それが2024年には約59兆円へと拡大し、右肩上がりに推移していくと解説した。
また、2020年~2025年の「国内AIシステム市場 支出額」を見ると、2020年の国内AIシステム市場は、市場規模(エンドユーザの支出額ベース)は約1,580億、前年比成長率はプラス約48%。多くの業界がコロナウイルス感染の拡大によって打撃を受ける中でも、ICT支出抑制は影響を受けず、AIは高い成長率を維持。更には2020年~2025年の年間平均成長率(CAGR)は約26%で推移し、2025年には約4,910億円になると予想した。
そして今後、AIの更なる性能の向上に伴って、ヒトや社会に影響を与えるような重要な判断も、AIによる意思決定の支援が広がっていくと分析する。しかし、それは支援であって、機械とヒトとが協調しつつも、意思決定は人間中心のまま、ますます重要性を持つとしている。
多くの消費者は、「企業には社会にポジティブな影響を与える責任がある」「倫理に反する企業からは製品を買わない、サービスを利用しない」と考えていて、さまざまな判断をおこなう人間はもちろん、その判断を支援するAIにも倫理や責任を十分に考慮した能力が求められていくと考えられる。
「責任あるAIガバナンスガイドブック」を無償ダウンロード提供
こうした社会的状況の変化を背景に、アクセンチュアは同社のホームページにおいて「責任あるAIガバナンスガイドブック」をPDF形式で無償ダウンロード提供していることを発表した。
書籍「責任あるAIの実践」を出版
更に、書籍「責任あるAIの実践」(東洋経済新報社 刊)を出版し、「AIの「暴走」をどう防ぐか」、「技術」「ブランド」「ガバナンス」「組織・人材」の、4つのアプローチから「責任あるAI」を実現する方法を紹介していく。
ここで言う「責任あるAI」とは概ね「倫理あるAI活用」を指すもので、個人や組織の偏見やバイアスがかかったAI機械学習やその推論による意思決定についての危険性や、その懸念を避けるための対策を検討するもの。
AIの普及が進むからこそ、危険性の認識も必要
同社は「AIはビジネスにかつてない機会をもたらすと同時に、大きな責任をもたらします。AIシステムからの出力は、人々の生活に実際に影響を与えるため、AIの倫理、データガバナンス、信頼、および合法性に関する考慮すべき観点が存在します」と語り、現状では既にAIが社会活動において大きな影響を及ぼすが故に、その危険性を認識しておく必要性を説いた。
更に「企業がより多くの意思決定をAIの手に委ねるほど、風評被害、雇用・人事、データプライバシー、健康・安全問題などの重大なリスクにさらされることになります。しかし、アクセンチュアのグローバル調査によると、回答者の88%がAIによる意思決定に信頼を置いていないことがわかっています」と、信頼されていないAIの側面も指摘した。
では、どうすればAIを信頼できるようになるのか。信頼できるAIを構築できるのか。
責任あるAIの5つの行動原則
同社は「責任あるAIの5つの行動原則」を提示。信用できる(Trustworthy)、信頼できる(Reliable)、理解できる(Understandable)、安全が保たれている(Secure)、共に学びあう(Teachable)という要素が重要だとした。
また、「責任あるAIとは、従業員や企業に力を与え、顧客や社会に公正な影響を与えるために、善意を持ってAIを設計、開発、展開することであり、企業が信頼を得て自信を持ってAIをビジネス活用できるようにすることです。AIの倫理と向き合うことを避けて、AI導入を進めることはできません」と続けた。
そして、AIの開発・展開・利用においては、人があるゆる場面での意思決定の中心である必要があり、そのためには人に対しての行動指針=「倫理」が必要になる。AI倫理をベースにした4つのアプローチ、技術、ブランド、カバナンス、組織・人材によって「責任あるAI」を実現する、とした。
更に、「カバナンス」については「必要性」についてのアンケート調査の結果を紹介。「日本の経営者のうち77%が、AIを大規模に展開しなければ、5年後には著しい業績低下に直面すると考えている」一方で「63%がその方法がわからない」「60%のリーダーが、月に一度はAIシステムを人間が書き換えることの必要性を感じる」「24%が、一貫性のない結果、透明性の欠如、偏った結果のために、AIシステムの全面的な見直しを余儀なくされている」と感じていることがわかったという。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。