量子暗号通信で東芝とシンガポールSpeQtral社が協業 QKDシステムで安全な長距離の量子暗号通信の実現へ

データがますます重要となる今日において、物理学と量子力学の法則を用い盗聴を防ぐ暗号通信を実現する量子鍵配送(Quantum Key Distribution: QKD)は、安全なデータ通信の解となる。量子暗号通信の実装は、すでに先進国市場の注目を集めており、多くの政府機関や企業は、おのおのの要件に合った量子暗号通信のユースケースとネットワーク構成の開発に取り組んでいる。

現在のシステム内外におけるデータ通信の安全を確保する暗号技術は、第三者が解読するには非常に複雑な計算が必要であり、解読までに天文学的な計算時間を要することから、現実的に通信内容が解読・傍受される懸念は無いと考えられてきたが、スーパーコンピューターの1億倍もの演算速度を持つといわれる量子コンピューターが実用化されれば、短時間のうちに無力化されてしまう可能性があるといわれている。

特にシンガポールは金融業界のグローバルハブであり、この地域の通信、データセンター、クラウド接続基盤の中心として機能し、非常に重要で価値の高いデータを扱っているため、通信のセキュリティを継続的に検証し、将来の脅威に対処するために現在のシステムをアップグレードすることが重要であると考える、東芝デジタルソリューションズ株式会社と、シンガポールに本社をもつSpeQtral Pte. Ltd.,は、シンガポールなどの東南アジアにおける政府機関や企業といった顧客の開拓、市場参入戦略の策定等に関する業務に係る協業について合意したことを2021年8月31日に発表した。

両社は同合意に基づき、東南アジアの潜在的なユーザーがデータ通信を保護するために、量子暗号通信の必要性を理解し、実装を検討し推進することを支援していくと述べている。また、今日のセキュリティ基盤に対する量子コンピューティングの差し迫った脅威、およびこれらの脅威に対処する量子暗号通信の適用について、ワークショップやセミナーを通じて政府機関や企業へ有効なガイドを提供していくとのことだ。



今回の協業の目的

株式会社東芝は、20年以上にわたる研究開発により業界をリードする性能を持つ光ファイバー方式のQKDシステムを開発し、2020年10月にこれらのQKDプラットフォーム製品の事業化を正式に発表した。これらの光ファイバー方式のQKDシステムは、数百キロ範囲の大都市圏における量子暗号通信に適している。また、SpeQtralは、衛星方式のQKDソリューションを開発しており、大陸間などの長距離量子暗号通信への適用を目指しており、同合意に関して、両社は以下のように述べている。

SpeQtral CEO Chune Yang Lum氏

シンガポールは、QKDなどの新しい最先端テクノロジーの採用を促進しています。デジタルエコシステムのサイバーセキュリティに重点を置いており、復元力のある通信インフラストラクチャを構築しています。東芝デジタルソリューションズと協力してQKDソリューションを市場に導入し、東南アジア地域の政府機関や企業のデジタル通信の量子セキュリティを強化する上で主導的な役割を果たしていくことを嬉しく思います。また、長距離量子暗号通信では衛星系と地上系の両方が必要であり、今回東芝デジタルソリューションズと協業することで強力に補完できると考えています

東芝 執行役上席常務/最高デジタル責任者 兼 東芝デジタルソリューションズ 取締役社長 島田太郎氏

東芝は、量子暗号通信の産業界への早期展開に関して、日本、米国、英国で業界パートナーシップを確立してきました。今回東南アジアでSpeQtralと協業することで、当社の量子暗号通信事業のグローバル展開を加速できるものと期待しています



■【動画】【TOSHIBA】ロイタータイアップアニメーション動画「QKD篇」(英語)




SpeQtralについて

SpeQtralは、量子革命のために世界のネットワークを変革することを使命とする量子技術企業だ。シンガポールの量子技術センター(Centre for Quantum Technology: CQT)で開発された技術を搭載したSpeQtralのシステムは、通信ネットワークとインフラストラクチャのセキュリティを懸念しているクライアントに、量子セキュリティのためのソリューションを提供しており、SpeQtralの中心的な専門知識は、宇宙ベースの量子プラットフォームを使用して、グローバルな範囲で長距離量子ネットワークを確立することにある。

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