手術支援ロボット「ダビンチ」手術中の映像を遠隔で視聴できる認定医向け「リモート症例見学プログラム」の運用開始

内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」を開発・提供しているインテュイティブサージカル社の日本法人、インテュイティブサージカル合同会社は「インテュイティブ テレプレゼンス」(以下、ITP)技術を活用し、内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」を使用した手術を遠隔でリアルタイムかつインタラクティブに視聴できる、認定医向けリモート症例見学プログラムの運用を開始したことを発表した。

ITPによるリモート症例見学プログラムは当面、より高度かつ複雑な症例の手技習得を目指す認定医を対象として行い、今後はダビンチ手術認定医の資格を取得するために義務付けられている症例見学においても導入が検討されている。


ダビンチ手術を執刀する医師と遠隔にいる医師をオンラインで接続

リモート症例見学プログラムは外科医同士(peer-to-peer)の学びあいを通じて、ダビンチ手術の手技向上のための継続的学習を支援することを目的としたもの。同プログラムではダビンチ手術を執刀する医師(メンター)のいる手術室と見学する遠隔医師(オブザーバー)をITPを介してしてオンライン接続することで、オブザーバーはメンターの手技や手術の進行を音声と映像でリアルタイムに視聴することができる。また、メンターと同じ手術室にいるコーディネーター(医師)から解説を聞くことができ、コーディネーターと対話することも可能。全てのデータは暗号化して転送され、強固なセキュリティ保護が図られる。

ダビンチ手術を執刀する医師(メンター)側

見学する遠隔医師(オブザーバー)側

同プログラムを活用することにより、オブザーバーは移動することなく、どこからでも経験豊富なダビンチ執刀医の手術から学びを得ることができ、より多くの医師に学習の機会を提供できるようになる。



インテュイティブサージカル合同会社は同プログラムが医師間のネットワークの拡大にも寄与すると考えている。同プログラムは2021年6月に実施された三重大学医学部附属病院 婦人科での子宮全摘手術でのパイロット実施を皮切りに、7月および8月には藤田医科大学(愛知県)での上部消化管手術でも実施され、8月30日に三重大学医学部附属病院と、北海道、静岡県、愛知県の3病院のオブザーバーを結んで実施された例をもって、今回、本格運用に移行された。今後は他領域の症例見学にも導入される予定。

同プログラムの実用化に尽力した三重大学医学部附属病院 産科婦人科の近藤英司准教授は次のように述べている。

ダビンチ手術においては、これまでダビンチサージカルシステムのデュアルコンソールを用いた教育が最も有用でしたが、『ITP によるリモート症例見学』が新たな選択肢になり得ると感じています。当院は多くの医療機関に対しダビンチ手術の指導を行っていますが、今後、デュアルコンソールと ITP の組み合わせで、より効果的な指導を実践できればと思います

インテュイティブサージカル合同会社社長の滝沢一浩氏は次のようにコメントしている。

リモート症例見学にご参加いただいた先生方からは、『移動が制限される中、他施設のエキスパートの手術手技をライブで視聴し、学べるのは大変有用である』との感想をいただいており、当プログラムが利便性の高い有力なトレーニングツールになると考えています。インテュイティブでは、『Intuitive ecosystem(インテュイティブ エコシステム)』の一環として、ダビンチ手術の安全な普及に向けて、外科医の皆様に継続的な学習の機会をご提供することに注力しております。今後も新たなテクノロジーを活用したソリューションを提供してまいります



「インテュイティブ テレプレゼンス」のセキュリティについて

インテュイティブ テレプレゼンス(以下、ITP)はリモートアクセスソフトウェアとアカウントを用いて接続可能となるシステム。使用されるアカウントはインテュイティブサージカル合同会社により厳重に管理され、リモートアクセスソフトウェアは同社で管理された端末からのみアクセス可能となる。テレプレゼンス機器への接続はオブザーバー側からのアクセス要求に対して、手術室側のテレプレゼンス機器における受け入れ処理がない限り成立しない。

ITPで通信するデータには、「セッションデータ」と「ダビンチシステム画像」の2つがある。それぞれのデータの内容は以下の通り。

【セッションデータ】
ダビンチシステムに搭載されたテレプレゼンス機器とリモート端末にインストールされたリモートアクセスソフトウェア間の双方の映像および音声データはインターネット経由で送信されるが、データは全てパススルー形式であり、サーバー、クライアントに保存、保持されることは一切ない。また、これらのデータは全て暗号化されている。

【ダビンチシステム画像】
手術中の術野を写すもので、その画像が装置内に保存される事はなく、一過性のデータとなる。このデータの中には患者名、性別、年齢、病名等を含む一切のテキスト情報は保有できない仕組みとなっている。よって、病院情報システムとの連携により患者情報を取得する事もない。

セッションは適用するデータプライバシー法規を遵守したセキュリティが確保され、複数のレベルで許可がないとアクセスが認められない。また、事前に承認された遠隔オブザーバー以外は、テレプレゼンスビデオやオーディオストリームにアクセスすることはできない。ITPを用いてストリーミングされる画像はセッション中に参加者が一時的に取得して使用することはできるが、セッション完了後に保存することはできないため、ソフトウェアは音声や映像、画像を記録しない。したがって、インテュイティブ テレプレゼンス技術を用いてストリーミングされた画像が流出することはない。なお、同システムを利用する際には、実施する病院が患者に事前に承諾を得るなど、個人情報保護法に則った対応を求めている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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