Uber Japan主催『MaaSが変えるモビリティの未来』基調講演は国交省、UBERが描く未来の公共交通のビジョンと課題

2021年9月9日、Uber Japanは同社主催のオンラインカンファレンス『MaaSが変えるモビリティの未来』を開催した。冒頭でUber Technologiesによる挨拶がおこなわれた後、基調講演に国土交通省、プレゼンテーションに日本航空、WILLER、Uber Japanが登壇し、現在のMaaSに関する取り組みと今後のビジョン等を語った。
また、元経済再生担当大臣で「モビリティと交通の新時代を創る議員の会(通称:MaaS議員連盟)」の会長、衆議院議員の甘利明氏から開催の祝辞が寄せられた。


MaaSに関するビジョンを語るWILLER株式会社 代表取締役 村瀨茂高氏


基調講演は国土交通省

国土交通省からはモビリティサービス推進課の石川課長補佐が「日本版MaaS推進に係る最新の動向」と題して基調講演に登壇。

国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 課長補佐 石川 雄基氏

公共交通をめぐる現状、高齢者のスマートフォン普及率、MaaSのデータ連携に関するガイドライン、スマートシティ推進の全体像など、政府の視点からMaaSの現状と課題、今後のビジョン等を語った。





「MaaS」とはなにか

「MaaS」(マース/マーズ)は既にお馴染みになってきたワードだが、モビリティ・アズ・ア・サービスの略称。電車やバス、タクシー、レンタサイクルや低速モビリティなど、あらゆる交通手段をシームレスに一元化、クラウドで情報を管理提供するサービスをさし、2016年にフィンランドのヘルシンキで開始されたMaaS Global社のMaaSアプリ「Whim」が発祥とされている。

日本では「乗換案内」や「ナビタイム」などが電車やバス、航空機をシームレスに検索できるので、目に見えるアプリ上のサービス形態としてはそれをイメージすると解りやすい。MaaSのコンセプトとしては、現在地から最終目的地に至るまですべての移動手段がルート検索が加わり、更に予約・決済なども行うことができ、最近では交通や店舗の混雑状況を提供したり、飲食やサービス、滞在時の過ごし方に至るまで、交通を核としながらもQOLの向上や快適な体験を含めたサービスに拡大しつつある。


自動車の個人所有は現状、公共交通が主体に

Uber Technologiesは既にモビリティやデリバリー事業でグローバルに展開するとして知られている。日本ではデリバリーの「UBER EATS」がいろいろな意味で注目されているが、世界的に見ればそれまでのタクシーの概念を大きく変えた、サンフランシスコ発祥のモビリティ「UBER RIDES」(モビリティ事業)が有名だ。


Uber Technologiesからはゼネラルマネージャーのパラメスワラン氏がビデオメッセージで登壇して冒頭の挨拶をおこない「コロナ禍は交通業界に大きな影響を与え、今後の移動のあり方を考え直す機会になっている」と語った。

Uber Technologiesのゼネラルマネージャー、Pradeep Parameswaran氏がビデオで登壇

また、日本でもまだ移動手段の中心にマイカーをすえる人が多いが、自動車の個人所有の減少は今後も続き、中心は「UBER RIDES」などのタクシーを含めた電車・バス・航空機などの公共交通機関であることを強調した。そして、移動の価値は人によって様々であり、多くの選択肢が提供されるべきであること(運賃が高くても最も速く目的に着く移動手段/たくさんの移動方法を比較して最も安い手段/乗換が少ない最も楽な手段など)を掲げ、既に世界では「テクノロジーによって公共交通のあり方が大きく変わってきている」「社会が持続可能で統合された(MaaS)交通にシフトすることを願っている」と続けた。
そして「私達はファーストワンマイルとラストワンマイルを含めたエンドツーエンドで交通を一元化し、予約や発券を含めたサービス展開を目指している」とともに「気候変動への悪影響を避けるために電気自動車(EV)の導入を始めとした脱炭素化、電動化へのシフトの積極的におこなっていく」とした。


脱炭素化への取り組み

UBERの車両は走行距離が多いため、多くの排気ガスを排出してしまっているのが実状だ。同社が昨年英国でおこなった調査によれば、年間の一般の車両の平均的な走行距離が約1万2千キロなのに対して、UBERの車両は約4万5千から5万キロとなっていて、UBERの車両がEVに変わることで、一般の人の乗り換えの4倍の排気ガスの削減に繋がることを認識しているとした。


UBERは今後20年で炭素排出量ゼロのマルチプラットフォームの構築を目指し、2025年までに8億ドルの資金を投入して世界中で数十万人のUBERドライバーがEVに移行することを支援、2030年までに米国・カナダ・欧州の各都市においてUBERドライバーのEV利用を100%にする等の決意を語った。

日本航空のプレゼンテーションの内容は別記事「JALが空飛ぶクルマやドローンがある未来社会をイメージ動画で紹介 Uber Japan主催『MaaSが変えるモビリティの未来』で」でレポートしている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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