昨今、少子高齢化社会における深刻な労働力不足や、新型コロナウイルス対策に伴う接触機会の軽減の観点から、サービスロボット活用への期待が寄せられる一方、段差等の障害物の排除など、ロボットの活用にあたり施設側の環境整備などの課題もある。
この課題を解決すべく、総合不動産デベロッパーである森トラスト株式会社とソフトバンクロボティクス株式会社の他、組織をまたいだコミュニケーションの推進と市場に足りない要素の提供を行うことで、サービスロボット市場の成長を加速させるべく2021年5月に設立した株式会社Octa Robotics、および三菱HCキャピタル株式会社の4社で実施する研究開発事業が、経済産業省による補助事業「令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された。
今回の採択を受け、4社は、施設の屋内におけるサービスロボットのスムーズな運行を可能とし、サービスロボットの普及に向けた、ロボットを導入しやすい「ロボットフレンドリーな環境」の構築に向けた調査、および研究開発を開始することを2021年9月30日に発表した。(冒頭の画像:研究開発に用いる配膳・運搬ロボット「Servi」©SoftBank Robotics)
今回の研究開発について
今回は、森トラストが保有するオフィスおよびホテルにてサービスロボットを走行させ、運用時の障害を洗い出すことで、サービスロボットを活用しやすい施設環境の調査を行うと同時に、その環境で稼働するサービスロボットの性能や投資対効果などの検証をする。同検証結果をふまえ、段差や床・壁の材質、通信環境などの観点から、サービスロボットが問題なく作動し、業務を遂行できる環境に関する要件の整理を行う予定だ。
各社の強み
森トラストは、不動産開発から管理運営までを一気通貫で行っており、ビルに関するハード面や運営面での知見を有している。さらに、サービスロボットを利用した実証実験や導入実績により蓄積されたノウハウを生かして、今回の研究開発を主導して行くと述べている。また、ソフトバンクロボティクスの多岐にわたるサービスロボットの開発およびさまざまな現場への導入実績、OctaRoboticsの標準化力とサービスロボットの開発力、三菱HCキャピタルの新たなロボットサービスの実現を見据えてRRIの一員として築いてきた、ロボット分野における 強固なパートナーシップやソリューション構築力などの強みを生かし、4社でロボットフレンドリーな環境整備、持続可能な社会の実現に貢献するとのことだ。
将来的な展開イメージ
ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)と連携し、同要件をサービスロボット導入に関わるさまざまなパートナーと共有できるガイドラインとして提言することで、施設の維持、管理におけるロボット導入の加速に貢献することを想定している。
▼ 同研究開発の概要
目的 | サービスロボット運用上の環境因子項目の実測に基づく洗い出し・分類、ロボットフレンドリー環境下でのロボット側・環境側双方の要求仕様の整理 |
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場所 | ・城山トラストタワー(東京都港区虎ノ門4-3-1) 東京マリオットホテル(東京都品川区北品川4-7-36) |
実施期間 | 2021年9月~2022年3月 |
▼ 各社の役割
森トラスト | ・プロジェクト管理、成果の取りまとめ ・プロジェクト実施場所の提供 |
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ソフトバンクロボティクス | サービスロボットの実証実験・研究開発を用いたロボットフレンドリー環境の測定 |
Octa Robotics | ・ロボットフレンドリー環境の標準フレームワーク案作成 ・ロボットフレンドリー環境を前提とした移動型サービスロボット仕様の検討 |
三菱HCキャピタル | ・移動型サービスロボットプロトタイプの保有、および提供 ・サービスロボット普及に向けた新たなサービス等の検討 |
「令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」について
同事業は、ロボットの導入が進んでいないサービスなどにフォーカスをあて、ユーザー側の既存の業務プロセスや施設環境などを見直すことを前提とした、「ロボットフレンドリーな環境」を構築するための開発を行う者に対して補助金を交付するものだ。今回の採択は、特に人手不足が顕著な施設管理、小売、食品製造の、3分野を対象に研究開発を実施する事業者を募集した結果、合計4社が採択されている。
https://www.meti.go.jp/press/2021/09/20210930003/20210930003.html