全日本空輸(ANA)発のスタートアップ「avatarin」 (アバターイン)が6月に発表したテレプレゼンス ロボット「newme」(ニューミー)は、現在全国で4か所の観光施設で、世界中では100台以上が設置されているという。
その「newme」には、「NVIDIA Jetson Xavier NX」が採用されていて、NVIDIAのエッジAIプラットフォームを搭載することでSLAMによる自律性を実現、周囲の屋内マップを独自に生成して移動できるしくみを確立しているとしている。NVIDIAが発表した。
avatarinはAI推論に、将来的にAIの導入も見据えて「NVIDIA DGX」システムを活用。コンピュータ ビジョンタスクや対話型 AI 向けのニューラルネットワークもトレーニングしている。以下の本文はNVIDIAのブログより引用して作成。
全国4か所の観光施設を含め、世界中で100台以上設置
航空宇宙エンジニアである深堀昂氏と梶谷ケビン氏は、日中はANAに勤務しつつ、夜には共に、新しいコンセプトの開発に取り組んできた。昨年、彼らは自らが考えてきたアイデアの1つである「Robots as a Service」を大きく前進させたいと同社の取締役会を説得して合意を得た。
2人はロボット工学者のフェルナンド チャリス氏をパートナーに迎え、ANAホールディングスの元で、2020年にロボティクス会社を設立した。それがavatarin (アバターイン) 株式会社だ。東京を拠点とし、現在、同社のテレプレゼンス ロボットは全国4か所の観光施設を含め、世界中で100台以上設置されているという。
avatarin が独自開発したロボット「newme」には NVIDIA Jetson エッジ AI プラットフォームが搭載されている。コンパクトなAIスーパーコンピュータだ。これにより自宅のコンピュータからリモートで操作でき、美術館や水族館などの観光スポットのツアーを、低遅延、高解像度で提供することが可能となっている。
「newme」は、神奈川県箱根町にある箱根ガラスの森美術館など、日本各地の美術館に設置されており、物理的に美術館に訪問できない人たちが体験できる機会を創成している。ロボットには正面を向いたLCD画面スクリーンが搭載され、ナビゲーターがアバターとして表示されて人との対話が可能だ(上写真)。
newmeには空間認識能力と、ビジュアルのストリーミングを実現する2Kステレオのフロントカメラが搭載されており、現場やそこにいる人たちのリアルな映像を遠隔地からログインしたリモートユーザーに提供する。また、ロボットは足元に搭載されたフロアカメラで、自律移動が可能になっている。動画は「NVIDIA Jetson Xavier NX」で処理され、バーチャルでのやり取りや AI タスクに対応できるよう 毎秒60 フレームの鮮明なビジュアルを実現しているという。
Jetson Xavier NX はエネルギー効率が高いため、ロボットはフル充電で 6 時間稼働でき、処理能力はわずか 15 ワットで 21 兆オペレーション/秒を誇っている。avatarin では、小売、観光、および教育業界のパートナーとともに、ロボット サービスの試験運用を実施している。
Jetsonが支える自律性
「newme」は自律移動できるため、ユーザーの指示に従って館内を自由に動き周り、次のユーザーに備えて自律的に充電ステーションに戻って充電することもできる。avatarinは、自己位置推定とマッピングを同時実行する (SLAM) 技術をロボットに実装することでこの自律性を実現し、ロボットは周囲の屋内マップを独自に生成して移動できるようになっている。
同社は、SLAM と将来の AI における大胆な取り組みを newme に取り入れることができるよう、システムを CPUベースからNVIDIA GPU に切り替える必要があったという。「SLAM で NVIDIA GPU を使用するフレーム レートが高いほど、より正確なマップの点群情報を取得することができます」と、avatarin CTOフェルナンド チャリス氏はコメントしている。
SLAM技術により、ロボットは周囲を移動する際にセンサーを利用してマップ(点群)を作成する。また、アルゴリズムを使用することで、新しいセンサーデータをこれまで収集したセンサーデータと比較し、ライブで作成される最新のマップ上の位置や障害物を特定できる。SLAMの導入にはデータを多段階で処理する必要があるため、さまざまなアルゴリズムとGPUの並列処理機能を用いてセンサーデータを高速に処理する必要がある。
avatarinは NVIDIA DGX システムを活用して、ナビゲーションやコミュニケーションを強化するために将来搭載される可能性のあるコンピュータ ビジョンタスクや、対話型 AI 向けのニューラルネットワークもトレーニングしている。
深堀氏は「当社では、newmeによって、世界のほぼすべての目的地、さらには宇宙やメタバースさえもバーチャルで体験できる未来を見据えています。さらに、AIを使用してほぼすべての言語でリアルタイムにコミュニケーションすることが可能となるでしょう。」と語っている。
「これはオンデマンド型スクーターのようなシェアリングエコノミーがもう1段階進んだ形で、消費者はモビリティへのバーチャルアクセスが可能になります。当社のお客様にはロボットリソースをさらに多く利用していただけるようになるでしょう」と、avatarin のCOO 梶谷ケビン氏は述べている。
親会社の ANA ホールディングスは、テレプレゼンス ロボットを宇宙事業に投入するなど、非常に高い野心を持っている。同社は早くから XPRIZEのコンテストを後援し、梶谷氏やCEOの深堀昂氏の事業を後押ししてきた。
NVIDIAはブログ内で「ANA ホールディングスのように歴史ある大企業にとって「Robots as a Service」は普通では考えられない大胆な賭けであり、コーポレート イノベーションとロボティクスの未来を垣間見ることができます」としている。調査会社の Mordor Intelligence 社によると、世界のロボティクス市場は 2020年に277 億ドルと推定され、2026年までに741億ドルに達すると予測されているという。
コロナ禍でRobot as a Serviceに拍車
Robots as a Service (RaaS) は、企業がロボットを導入する際のコストとコミットメントを最小限に抑える新しいビジネスモデル。avatarin はこのモデルを活用してロボットを企業に提供している。
ロボットの需要はあらゆる業界で高まっている。Mordor社では、新型コロナ感染症によるロックダウンで、労働力不足が顕著になり、需要に拍車がかかったと見ている。ロボットを導入することで、ヘルスケア、食品デリバリー、製造といったいずれの業界においても、人と人との接触を最小限に抑え、新型コロナ感染症のリスクを軽減することができる。
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