サッカーや自動車ファンの前にロボット達が大集合 【あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)レポート(1)】展示ブース編

愛知県が主催するサービスロボット社会実装推進事業「あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)」が11月3日(祝)、豊田スタジアムではじまった。同日には会場を愛知県知事が訪問し、ロボットの実証実験を視察したり、「キックオフトーク」イベントに登壇した。(関連記事「愛知県「ARX」が豊田スタジアムではじまる!県知事がロボットの実証実験を視察、「ARXキックオフトーク」も開催」)

セコムの警備ロボット「cocobo」。コンコースを警備実証した

スタジアム内のコンコースやレストラン等で、10種類のロボットが実証実験を行なった。今回の実証実験では自動運転の要素技術を活用した「自律移動」機能を持つロボットが多く見られた。

スタジアムのギャラリーの除菌の実証実験を行った自走式ロボット「TAKUMI CLEAN」(タクミクリン)




ARX展示ブースで展示されたロボットたち

また、この日の豊田スタジアムでは「名古屋グランパスvs柏レイソル」戦が行われ、多くのサポーターが詰めかけ、イベント広場では「トヨタ GAZOO」のイベントも行われていた(本来ならワールド・ラリー選手権開催に合わせたイベントだったが、コロナ禍でラリージャパンは中止になった)。



ロボットの展示会とは違う層の来場者たちに、ロボットを紹介するよい機会となった


搭乗型移動支援ロボット「COMOVE」(豊田鉄工)

そのイベント会場でも、ARXは展示ブースを設置して、多くの来場者にロボット達を紹介した。

トヨタ GAZOOイベント会場にARXの展示ブースを設置。多くの人が足を止めてロボットの展示を見ていた

愛知県知事のほか、豊田市の太田市長も来場し、ロボットを視察・体験した。

豊田鉄工株式会社の搭乗型移動支援ロボット「COMOVE」(コモビ)

「COMOVE」は、3輪の低速モビリティ。各種センサーによって歩行者との共存し、安全性を確保して走行できる。ハンドルがついた電動車いす規格に準拠したものとなっている。

日本の道路交通法では歩行者扱いとなるため、車道ではなく歩道を通行する

歩道などの歩行移動エリアは最大速度 時速6km/hで走行できる。車両への積み込みなどに便利な折りたたみ機構により持ち運ぶことも可能。利用者の外出先での移動の自由を拡大・支援する。


また、車イスのように足を揃えて乗れるタイプもある。前面と側面にディスプレイ(サイネージ)を備えている。前面のLEDパネルには、簡単なコメントやイラストを表示することができる。側面の液晶パネルはスマートフォンなどの通信機器のディスプレイとして使用できるため、歩行者とのコミュニケーションや広告ツールとして活用も可能だ。

コモビ 搭乗型移動支援ロボット・サイネージ付き。

豊田スタジアムは敷地内が広大なのでスタッフは通常、自転車で移動しているが、「COMOVE」が移動手段として活用できるか、どのような点に課題があるかなどを検証した。また、「ARXキックオフトーク」イベントでは、大きなグランパスくんがステージに登場したが、グランパスくんは会場まで「COMOVE」が引いた台車に乗っかってやってきた。意外と力持ちなのだ。






自律移動ロボットが集結

掃除ロボットや除菌ロボット、警備ロボットなど、普段は一般の人の目に留まる機会が少ないロボットも多い中、こうして人が多く集まる場所に展示されるのは、ロボットの存在を身近に感じる良い機会になったに違いない。


掃除ロボット「T380AMR」(クリーンスタジオ)

洗浄幅を小型化した自動運転対応のロボット型スクラバー(床洗浄機)。狭い場所での運動性能を高め、従来機では難しかった狭いエリアでの自律走行による洗浄作業を実現した。清掃するルートの指定は、人が運転して清掃ルートを走行するとそれ記憶して次回以降は自動運転で清掃してくれる。

クリーンスタジオ株式会社の掃除ロボット「T380AMR」。


自律移動ロボット台車「Talbot」

新明工業株式会社の自律移動ロボット「Talbot」。自動運転に使われるAIを応用し、タブレットで目的地を指定すると、クラウドサーバーから地図情報をダウンロードして自律移動する。センサーで周囲の環境を認知して人を避けて移動できる。
ロボットとしての要は移動するユニット台車の部分で、上部には様々な機器を付けて活用できる。写真の「Talbot」には空気清浄機を装着したもの。人混みが多いところに自律移動して、空気清浄を行うことができる。

遠隔操作で広場を移動する「Talbot」。空気清浄機を搭載しているバージョンなので本来は室内で使用する

ARXキックオフトークでは、県知事の横に置かれていた


「TAKUMI CLEAN」(ナ・デックス)

オゾンで施設の除菌・脱臭する自走式ロボット。SLAM技術を使って周囲の地図情報を作成して自律走行する。AIで障害物を検知、スムーズに回避して移動する。コロナウィルスをはじめとした各種ウィルスの不活性化にも効果があるとされる。当日は豊田スタジアム内のギャラリーで除菌作業を自走噴霧したが、スタジアムが開場したため、展示ブースへと移動した。ギャラリーでの除菌の様子は別途記事で掲載する予定。

株式会社ナ・デックスの「TAKUMI CLEAN」(タクミクリン)


コミュニケーションロボットがお出迎え

会話ロボット「Kebbi Air」(名古屋国際工科専門職大学)

展示ブースにはコミュニケーションロボットが設置されていて、来場者に話しかけていた。「Kebbi Air」(ケビー エア)は、店舗や教育現場など、様々なシーンに対応できる会話ロボット。特に台湾で導入が進んでいる。

会話ロボット「Kebbi Air」(ケビー エア) 

「Kebbi Air」には6つのマイクアレイと人感センサーを搭載、ロボットの前に人が来るとロボットが話しかけることができる。また、12個のサーボモーターによって滑らかな動きや、タッチセンサーによるインタラクティブな対応も可能となっている。

これらがARXのイベント展示ブースに展示されていたロボットたちだ。このほか、豊田スタジアム内で実証実験を行っていたロボットたちは次回に紹介しよう。お楽しみに。


スポーツ施設や病院、空港などで実証実験

「あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)」は、実証実験を希望するロボットベンダーと施設を募集、ロボットと施設のマッチングを実施した結果、様々な社会課題の解決に資する最先端のロボットと7施設で実証実験を実施する。2021年11月から2022年3月にかけて、今回の豊田スタジアムのようなスポーツ施設、大名古屋ビルディングのような商業施設、医療機関、農場、空港等で実証実験やデモンストレーションを実施していく(詳細は公式ページを参照)。

なお、実証実験は主に報道関係者向けのため、広く一般の見学は予定されていないが、豊田スタジアムのように一部を公開する可能性がある。また、実証実験の様子はARXホームページで、動画等で公開される予定となっている。
なお、11月25日から開催する「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」にて同事業のロボットが展示されたり、展示内容として一般の人が見学することができるコーナーが用意される。



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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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