「自律航行船」を利用した宅配サービスの実現に向けて 広島商船高専がエイトノットと実証実験 大崎上島から生野島まで商品を運搬

広島商船高等専門学校は水上EVデマンド交通のスタートアップ企業である株式会社エイトノットと、「EVロボティックスボートで水上デマンド交通の実現を目指す自律航行技術開発」の実証実験を行ったことを発表した。


実証実験の背景

島しょ地域における離島航路の存続は日本国土の保全性や利活用の観点から重要な問題であり、これらを支える担い手の減少に歯止めが利かない状況。その主因には、運航管理に関する固定費が実際の旅客輸送の需要と合わない、人材不足がある。こうした航路において、新しいビジネスモデルを築かない限り、持続可能な離島振興は難しくなる。そのため広島県所在の大崎上島沖にて実証実験を実施し、水上デマンド交通の実現可能性について検討を行った。

また、技術研究のみならず、船舶・運航管理を担う広島商船高専の学生に対し、基礎的な教育を実施し、実際に試作等を通じて、新しい水上デマンド交通についての管理や運航について学べるコンテンツの作成、検証を目的としている。


島民との打ち合わせ中の写真

航路確認中の写真
水上EVデマンド交通
電気を動力にして動くEV船を用い、タクシーのように利用者が使用したいというと思う時に、行きたい場所や利用したい目的に応じての船舶利用を実現する交通システムのこと。

EVロボティックスボート
見張りや船体運動をLIDAR(レーザー光を走査しながら対象物に照射してその散乱や反射光を観測することで、対象物までの距離を計測したり対象物の性質を特定する光センサー技術)などのセンサーを用いて検知し、AI技術を用いた制御コンピュータによって操船意図を決定し、舵や推進器を自律的に動かし運航するロボット技術を用いた小型船舶のこと。


生野島の住民が注文した商品を「自律航行船」で運搬

実証実験では株式会社フレスタ大崎上島店に協力してもらい、以下の手順で大崎上島から隣島の「生野島」へ「自律航行船」を運航させ商品の運搬を行った。

1.生野島の住民の方から、カタログ等を通じて商品を注文する。

2.株式会社フレスタ大崎上島店に滞在している学生スタッフが注文した商品を購入し、広島商船高専の桟橋まで陸送する。

3.桟橋から生野島間においては自律航行船で輸送を実施し、注文した商品を受け渡す。

4.生野島の島民から家庭ごみを回収し、再び自律航行船で桟橋まで輸送を実施する。


学生への教育成果について

自律航行船舶の開発には同校商船学科岸教員をはじめ、専攻科海事システム工学専攻科2年生2名、1年生2名、商船学科5年生2名の計6人が約2か月間にわたりエイトノットとともに携わった。自律航行船の開発を他機関と共に行うことで、普段操船している船舶との違いや新たな知見を学生に気づかせることができた、としている。また、今後も自律航行に関する様々なルールの策定や運航者として必要な議論やユーザーの要望等、多くの課題への解決を引き続き卒業研究として行う。

運航の確認中の写真

自律航行船運航中の写真
【広島商船高専の開発担当箇所】
・安全かつ実験の目的に沿った海域を設定するために、学生が日常的にその海域を使用している方々と乗船し、海域の確認を行った。そして海図等の情報と照らし合わせながら情報収集と整理を行い、危険な箇所や運航に適切ではない区域をgoogle mapに記録し、安全な海域の地図情報を作成。

・上記の要領で作成した地図情報をエイトノットの開発チームに提供し、実験の目的に応じて地図情報の改善を行った。結果、事故が発生することなく無事に実証実験を行うことができた。

・様々な船の運航や操船時の船体運動などについても議論を行い、自律航行船舶の改良への支援も行った。

・授業や実習等で培った技術をもとに、学生自ら船の管理(係留や整備など)を行い、実証実験が予定通りの行程になるようサポートに励んだ。

ABOUT THE AUTHOR / 

山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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