愛知県が主催するサービスロボット社会実装推進事業「あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)」の第一弾が11月3日、豊田スタジアムで行われた。スタジアムには10種類のロボットが実証実験や展示に参加。社会実装に必要な機能や課題の確認をおこなった。
そのレポートの最終回は豊田自動織機の自律モバイルロボットとセコム株式会社のセキュリティロボット。2機種とも、最大の特徴はキビキビと動作すること。俊敏性が際立つロボットだ。
豊田自動織機の自律モバイルロボット「AiR-T」
豊田スタジアムのコンコースでは、豊田自動織機が自律モバイルロボット「AiR-T」(エア・ティー)の実証実験をおこなっていた。スタジアム内のお土産店などで、倉庫から店舗まで商品を運ぶ状況を想定して検証をおこなった。
豊田自動織機は通常から工場や倉庫向けに搬送ロボットの開発や実証実験がおこなってきた。「AiR-T」はそのノウハウを詰め込んだ自動搬送ロボットとなっている。
特徴としては「経路自動生成」「障害物回避」「ヒト追従」「全方向移動」の機能を備えていること。レーザー光で周囲を見回し、自分の位置を認識、障害物を避けながら、最適経路で、指定された目的地まで自動運転で走行することができる。
また、もうひとつの代表的な利用方法が、前を歩く人に追従して走行する機能。これは比較的力仕事には向いていない女性や高齢者の労働を支援することになる。重たい物を人に代わって運ぶ作業をロボットが代替できるからだ。
追従走行の場合でも障害物検知機能は働いていて、追従走行している最中にロボットの前に人が割り込んできても停止して、衝突を回避することができる。
前後に1基ずつLiDARを搭載して360度の状況を把握、2DマッピングによるSLAM技術で自律走行する。可搬重量は約40~60kg。最高時速は8km/h。工場や倉庫など、物流現場での利用も意識して、人が小走りする速度に対応している。
■動画 Automatic transfer robot demo at Toyota Stadium
ロボット本体下部の駆動機構の台座は自動走行や追尾機能の技術に重要だが、上部アタッチメントを変更することで様々な用途・シーンでの活用が可能としている。
■動画 走る県知事を追う「AiR-T」
■公式動画 実証実験事例 自律モバイルロボット「AiR-T」
セコムの新しいセキュリティロボット「cocobo」
この日、豊田スタジアム内のコンコースを警備していたのは、セコムの新しいセキュリティロボット「cocobo」(ココボ)だ。デザインが特徴的だが、それもそのはず、家族型ロボット「LOVOT」(らぼっと)をはじめとする、多くの工業製品のコンセプト企画や開発を手掛けた根津孝太氏が担当したもの。「公共空間との調和」「威厳と親しみやすさ」をコンセプトに中性的で凛としたデザインが採用されている。
「cocobo」はキビキビと自律移動する。人が横切ったり、進路をふさいでもピタリと停止したり、回避する。
移動しながらカメラで防災センターに映像を送ることができる。AIを搭載していて、カメラの映像から不審者や置きっぱなしにされている不審物を自動で判別して通知する機能も持っている。
コンコースでは一般の来場者が集まったり、囲まれたりした一面もあったが、「cocobo」は問題なく避けながら警備活動を続けていた。
■動画 The latest security robot “cocobo” from SECOM at Toyota Studium
ちなみに、「cocobo」には不審者を爆発音と煙で威嚇する機能も搭載されているが、もちろんこの日はその機能の実演はされなかった。(関連記事「巡回だけでなく不審者の威嚇も!セコムが新型AIセキュリティロボット「cocobo」(ココボ)を発表 デザインは「LOVOT」の根津氏」)
■公式動画 セキュリティロボット「cocobo」を開発
「あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)」
「あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)」は、愛知県が県内の7施設で行うサービスロボットの実証実験。社会実装に向けて、実証実験をおこないたいベンダーと、実験の場を提供する施設とを結ぶマッチングイベントとなっている。
計38機のロボットが参加する(同一のロボットが複数の施設に参加する場合があるため、以下、各施設のロボット数の合計と一致しない)。一般公開を目的としていないため、実証実験は一部を除いて報道関係者のみが公開対象となっている。
実証実験の対象施設
豊田スタジアム(豊田市)
時期:11月3日(水曜・祝日)
内容:施設管理やイベントで活躍する案内や警備、清掃・消毒、搬送ロボットなどの実証実験
ロボット:12機
施設種類:スポーツ施設
藤田医科大学病院(豊明市)
時期:11月9日(火曜日)~12月23日(木曜日)他(調整中)
内容:医療現場をサポートする薬剤搬送ロボットやモビリティなどの実証実験
ロボット:4機
施設種類:病院
トマロッソ東郷ファーム(東郷町)
時期:12月(調整中)
内容:トマト農場の作業をサポートする噴霧やパワーアシスト、清掃ロボットなどの実証実験
ロボット:5機
施設種類:農場
鈴木菜園(田原市)
時期:12月(調整中)
内容:トマト収穫ロボットの実証実験
ロボット:1機
施設種類:農場
大名古屋ビルヂング(名古屋市中村区)
時期:2022年1月(調整中)
実施内容:オフィスや商業施設で活躍する案内や配膳、警備、清掃・消毒ロボットなどの実証実験
ロボット:16機
施設種類:商業施設、オフィス
中部国際空港(常滑市)
時期:2022年1月~3月(調整中)
実施内容:空港業務をサポートする消毒やサイネージ、搬送ロボットなどの実証実験
ロボット:6機
施設種類:空港
Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)(常滑市)
時期:2022年1月~3月(調整中)
実施内容:施設管理業務をサポートする、清掃・消毒や配膳ロボットなどの実証実験
ロボット:9機
施設種類:展示場
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。