技術の工夫だけではビジネスはできない MOGITATe北河氏が語るロボットサービスの提案

2021年11月10~11日の日程で、パシフィコ横浜にて「横浜ロボットワールド2021」が行われた。会場ではサービス分野を中心とした各社ロボット展示のほか講演が行われた。こちらでは特定非営利活動法人 ロボットビジネス支援機構(RobiZy)創設者で、株式会社MOGITATe(モギタテ) 代表取締役社長の北河博康氏による講演をレポートする。北河氏はコロナ禍によって加速したサービスロボットの社会実装の現状を紹介し、ロボット導入に必要なこととしてビジネスモデルや意識の持ち方が重要だと語った。


ロボットによる地方創生、一次産業活性化

株式会社MOGITATe 代表取締役社長 北河博康氏

北河氏は、もともとは大手保険会社の社員。ドライブレコーダーの活用や労災事故防止関連のサービスを開発してきた。その経験を踏まえて「これからロボットによる事故は必ず起こる。起こったときも相手の立場に立った提案をすることがビジネスにつながる」と考えていると述べた。

北河氏がロボットに関わるようになったきっかけは、地方創生関係の業務に携わってきたことと、労災防止業務の関連として、介護従事者の腰痛防止に繋がるロボット介護機器に触れたことからだったという。

さらに産業界のマッチング事業としてトマト収穫ロボットのプロデュースや、ドローン事業などスマート農業事業も行うようになるに至ったと紹介し、農業ロボットスタートアップ inahoのアスバラガス収穫ロボットとRaaSモデルでのビジネス展開、銀座農園の台車ロボット、IoTを活用した水田での水管理ソリューションを展開する笑農和(えのわ)による水田向けスマート農業サービス「paditch」を事例として紹介した。

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また草刈りロボットや、農薬散布用のドローンも進化していると紹介。特にオプティムはピンポイントの農薬散布や管理技術により、高付加価値を生み出している。北河氏は「これからはビジネスモデルが重要だ」と強調した。

林業分野については、レーザースキャナーを使った森林三次元計測システム「OWL」や、大坂林業による苗木の生産工程での協働ロボットを活用した省人化事例を紹介し、さらにフルデプスの水中ドローンなども紹介した。

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技術の工夫だけではビジネスはできない

さらにサービスロボット、掃除ロボットなどでの取り組みも紹介。掃除ロボットの実証実験では「机の下は掃除できない」「掃除速度が遅い」と言われることが多いという。顧客からそう言われたときに一般にロボットメーカーは「改良しよう」と考える。だが「そのような取り組みだけでは、いつまでもユーザー満足を獲得することはできない。どのあたりでビジネスにしていくかが重要だ」とし、北河氏は「机の下は人間がやればいいじゃないですか。掃き出しておけばロボットが掃除してくれるんだから」と答えていたという。要するに「人の清掃工数が減ればいいじゃないか」という割り切りだ。

北河氏はビコーによる清掃ロボット遠隔制御・監視システムを紹介した。同社のシステムは30台の掃除ロボットを遠隔監視できる。最初は止まることが多いロボットも、徐々に学習させていくことで、よりスムーズに動けるようになるという。また30台というのは同時稼働台数なので、充電中で休んでいるロボットも含めると100台程度を一人が見ることが可能と紹介した。清掃コスト削減を検討している大規模施設などから引き合いがあるという。

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このほか、藤沢市辻堂の体験スペース「ロボテラス」、ugoの警備ロボットアバター、アスラテックの搬送ロボット「RICE」などの取り組みも紹介した。

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飲食業界は戦国時代

また「飲食店での下膳・配膳ロボットは戦国時代になっている」と語った。配膳ロボット業界は、今や、中国製ロボットに席巻されている。だが「日本も負けてはいない」と、ARRKによるデザイン性の高いロボット「スタッキー」や、オリィ研究所による「分身ロボットカフェ」の事例を紹介した。

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そのほか、コネクテッドロボティクスによるたこ焼きロボットや駅そばロボット、モリロボによるクレープロボット「Q」なども合わせて「大事なことは工夫。人とロボットを活用する業務のすみ分けが重要であり、やるべきことはまだまだ多い。準備をしているところは確実に伸びている」と強調した。

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そして「行動変容が意識変容、技術変容へとつながる」と述べて、改めてNPO法人ロボットビジネス支援機構の取り組みを紹介して講演を締めくくった。

行動変容による意識と技術の変容が重要だという
関連サイト
株式会社MOGITATe

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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