「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」(RCAP2021)がAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催されている。会場には一般入場(無料)することができ、家族連れを含めて多くの来場者で賑わっている(2021年11月27日のレポート)。
ロボカップにはいろいろな競技(種目/カテゴリー)があるが、共通する最大の特徴は「自律的に判断して行動する」ロボット競技ということ。原則としてリモコン操作や操縦はおこなっていない。
「RCAP2021」は3つの大イベントの融合
緊急事態宣言が明けた影響もあるだろう、会場には多くの来場者がやってきて、開場時には長い列ができていた。すべての来場者がマスクを着用、消毒液の設置やソーシャルディスタンスが呼びかけられ、感染対策が徹底されていた。また、消毒しながら移動するロボットも稼働していた。
世界的なロボット競技会「ロボカップ」
この会場での「RCAP2021」は、3つの大きなイベントで構成されている。
ひとつは世界的なロボット競技である「ロボカップ」のアジア太平洋地域の大会。コロナ禍の影響で残念ながら海外チームの実参加は少ない状況だが、それでも多くの来場者がロボット競技に目を向けていた。(オンラインでは海外から数チームが参加)
ロボカップの世界大会は、基本的には毎年どこかの国で持ち回り開催されている世界的なイベント。その発祥は1997年、日本でありこの愛知県だ。2017年には世界大会20周年を記念して、名古屋で世界大会が凱旋イベントとして開催された。
今回の「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」は名前の通り、アジア・太平洋地域で開催される大会(ただ、世界中のどこの国や地域のチームも参加することができる)。
「実況」や「説明員」がロボット競技を解説
今回のロボカップで「とても良い」と感じたのは、ほとんどの競技で「説明員」が配置され、競技内容や競技の実況がおこなわれていたこと。ロボカップは従来、競技自体が主体だったため観客に対しての配慮は十分ではなく、特にどんなルールなのか、目の前の競技は今どういう状況なのかがわかりにくいことが課題だった。2017年の世界大会の反省もあってか、今回はその課題に積極的に取り組んだ。多くの競技会場では、説明員や実況のスタッフを配置、なかには観客との交流も見られた。
ドローンによる競技も初登場。災害で被災した家屋に自律飛行ロボットが入って調査する作業を想定した競技「フライングロボットチャレンジ」。
■動画 【大歓声】サッカーヒューマノイドリーグに声援を送る観客達
■動画 サッカー小型リーグの様子
ロボット展示
もうひとつはロボットの展示会(ロボカップミュージアム)。ロボットやドローン、自動運転車などを活用した最新技術や体験コーナーが多数設置されている。
WILLERや名鉄バスによるハンドルのない自動運転バス「Nanamobi」の体験会(整理券を配布)。今回は自動運転ではなく、乗務員がコントローラで操作。
愛知県といえば2005年に開催された愛知万博(2005年日本国際博覧会)を記憶している人も多いだろう。愛知万博で活躍した懐かしいロボットたちも展示されていた。
その万博で芽生えた科学の文化を継承したいという想いから、愛・地球博開催継承事業の記念展示会「瀬戸蔵ロボット博」を開催している。そこで好評だった大型展示物も公開し、子ども達を魅了した。
藤田医科大学は各種リハビリロボットや生活支援ロボットを展示。ロボットを装着したり、ロボットに物を取ってきてもらう体験コーナーにどを設けた。
イライラ棒を見事にこなすロボットと競争するイベント、デンソーウェーブのコボッタを使った数々の調理ロボットの実演などにも、家族連れの長い列。
愛知県が主催するサービスロボットの社会実装を推進する事業「あいちロボットトランスフォーメーション」(ARX)もブースで参加。自律移動ロボットや消毒や清掃ロボット、配膳ロボットなどが会場で稼働していた。
ロボットのSIerの人材創出と育成を目的に、全国の高校生を対象とした競技会「高校生ロボットSIリーグ」が2022年度から開催される。そのトライアル大会がこの会場でおこなわれた。半田工科高等学校、春日井工科高等学校、愛知総合工科高等学校の3校が参加。
ロボット教室や未来体験、ワークショップが大人気
今回のイベントで特に観客が殺到していたのがロボットのワークショップや体験教室、未来体験のコーナー。それらが目当ての家族連れも多く見られた。
一番人気のひとつが、現実世界を舞台に、手を動かしてARのエナジーボールを放ち戦う競技、ARスポーツ「HADO」は大人気。整理券(予約)は午前中のうちにすぐに埋まった。
■動画 ロボカップ開錠でARスポーツ「HADO」を体験する様子
■動画 プログラミング体験
AI × ロボットの普及と発展に期待
ロボカップは前述のとおり、自律型ロボットによる競技のためロボティクスとAI、センサー(IoT)などの最新技術を駆使して競う。そして、競技に参加する人だけでなく、観戦する人、将来のロボカッパー(サイエンティスト)を目指す人(若者や子どもたち)を増やしていき、科学技術の認知度を向上させる目的も持っている。その意味でも、たくさんの来場者、特に多くの子ども達がロボットを囲み、興味を傾ける様子が多く見られたことは、このイベントの大きな成果だといえるだろう。
この会場での開催は11月28日(日)まで。11月29日(月)は別会場でシンポジウムがおこなわれる。
ロボカップアジアパシフィック2021あいち インタビュー特集
第1回 ロボットクリエイターの仕事、ロボカップの魅力、そして将来のサイエンティストたちへ
11月開催「ロボカップアジアパシフィック2021」公式ページがオープン ロボットクリエイター高橋智隆氏インタビュー記事も公開
第2回 コロナ禍で求められるロボカップ関連の最新ロボティクス技術
「ロボカップアジアパシフィック2021あいち」特別インタビュー第2弾は岡田浩之氏「コロナ禍で求められる最新ロボティクス技術」
第3回 病院や介護施設で活躍するロボット最前線
【医療ICTの最前線】藤田医科大学病院で活躍するロボットたち 手術支援/自動PCR検査/調剤/介護/リハビリ活用例 ロボカップAPインタビュー
第4回 ロボットと教育「未来へビジョンを示し、問い続けることが大切」
高さ4mの巨大ピラミッド「ロボミッド」とは? ロボカップAPでは鉄人28号や海亀ロボット、COBOTTA調理ロボットにも会えるかも
第5回 ロボカップにドローン競技が初登場「フライングロボットチャレンジ」のルールと魅力にせまる
ロボカップにドローン競技が初登場!RCAP2021「フライングロボットチャレンジ」のルールと魅力を大同大学 橋口先生が解説
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。