NVIDIAはオランダがん研究所とヘルスケア企業のVyasa、iCADおよびRhino HealthがNVIDIA AI Enterpriseのソフトウェアスイートを使用して、エンドツーエンドのAIワークロードをいち早く実現したことを発表した。
解像度の向上で腫瘍のサイズや位置をより正確に特定
世界トップクラスのがん研究および治療センターであるオランダがん研究所(以下、NKI)は、NVIDIA AI Enterpriseのソフトウェアスイートを使用して、現在一般的に使用されているものより高精度の3DがんスキャンでAIワークロードをテストしている。NKIのAIモデルは以前、低解像度の画像でトレーニングしていた。しかし、NVIDIA AI Enterpriseが提供する大容量のメモリを利用することで、NKIの研究者たちは高解像度の画像でトレーニングを行うことが可能になった。このような解像度の向上により、臨床医は患者が治療を受けるたびに、腫瘍のサイズや位置をより正確に特定できるようになる。
NKIが導入したNVIDIA AI Enterpriseスイートは、AIの開発と展開を最適化できるように設計されている。NVIDIAによって認定およびサポートされているこのスイートを使用することで、病院、研究者、ITの専門家はオンプレミスのデータセンターやプライベートクラウドでVMware vSphereを搭載したメインストリームサーバー上でAIワークロードを実行できる。病院や研究機関は仮想化されたインフラストラクチャ上で治療を行うことで、既存のアプリケーションで使用しているのと同じツールを利用することができる。これにより投資効率を最大化できるとともに、革新的な治療をより手頃なコストで利用しやすくなる。
NVIDIA LaunchPadを使用してプロジェクトを素早く開始
NKIはNVIDIA LaunchPadを使用して、NVIDIA AI Enterprise上でプロジェクトを素早く開始させた。LaunchPadプログラムはデータサイエンスやAIワークロードのプロトタイプやテストを支援するために、アクセラレーテッドインフラストラクチャ上で動作する最適化されたソフトウェアへの即時アクセスを提供する。同プログラムは今月、Equinixの世界9拠点に拡大された。
LaunchPadで利用できるNVIDIA AI Enterpriseのソフトウェアスイートは、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoなどが提供するシステムを含む、VMware vSphereを搭載した主流の高速サーバーで高度なAIワークロードを実行できる。
NKIの研究者はHewlett Packard EnterpriseのコンポーザブルソフトウェアシステムであるHPE Synergy上で動作するNVIDIA AI Enterpriseを使用し、2Dおよび3Dの大規模なデータソースとAIを組み合わせて、放射線治療の各セッションの前に腫瘍の位置を特定できるディープラーニングモデルを構築した。
「医師は治療当日にCTスキャンの代わりにこのソリューションを使用して、治療計画を最適化し、放射線治療計画を検証することができます。」と、オランダがん研究所のグループリーダーであるジョナス トゥーエン (Jonas Teuwen)氏は述べた。
また、トゥーエン氏のチームはNVIDIA AI Enterpriseを使用して、シリコンバレーでホストされているサーバー内のNVIDIA A100 80GB GPUでワークロードを実行した。同チームの畳み込みニューラルネットワークは3か月かからずに構築され、300枚もない臨床肺CTスキャンでトレーニングされ、その後、再構築されて頭頸部のデータに一般化された。
NKIの研究者は将来的にこの研究を、心臓外科や歯科手術インプラントの際の動脈修復を可能にする画像下治療へのユースケースに転換していくことも考えている。
NVIDIA AI Enterpriseで病院のAI展開を加速
AIはがん検診の促進、偽陽性の削減、腫瘍の特定や治療計画の改善など、医療の革新と加速を実現する強力な存在。しかしその期待に反して、AIを実際のソリューションに統合することは多くのIT組織にとって難題となっている。
NVIDIA AI Enterpriseにより、仮想化インフラストラクチャ上にさまざまなヘルスケアアプリケーションや運用アプリケーションをホストする組織は、AIの導入を簡単にできるようになる。IT管理者はVyasaやiCADといったAIアプリケーションを病院の中核的なアプリケーションと一緒に実行できるため、使い慣れた環境でワークフローを効率化できる。コンピューティングリソースは数回クリックするだけで調整できるため、病院は患者と医療従事者の両方に対するケアを変革することができる。
【動画】AI-Powered Cancer Screening Applications Managed with NVIDIA AI Enterprise
ヘルスケアおよびライフサイエンス向けのディープラーニング分析ツールを提供しているVyasaは、NVIDIAAI Enterpriseを使用して、患者の治療記録などの非構造化コンテンツを検索できるアプリケーションを構築している。
NVIDIA AI Enterpriseを使用することでVyasaはディープラーニングアプリケーションの開発を加速し、非構造化データやPDFを調べてどの患者がよりリスクが高いかを評価できるようになった。1年以上健康診断を受けていない人を特定し、年齢や人種などのリスク要因を追加して絞り込むことができる。
VyasaのCIOであるフランス ラヴェツ (Frans Lawaetz)氏は、「NVIDIA AI Enterpriseはプラットフォーム要件の迅速なプロビジョニングにより、ソフトウェアパッケージを手動でダウンロードしたり統合したりする必要がなくなり、導入期間が半分に短縮されました。」と述べている。
放射線技師はマンモグラムの読影を支援するiCADの革新的なProFound AIソフトウェアを使用している。このようなAIソリューションにより、がんの早期発見、乳房密度のカテゴライズ、女性ひとりひとりのスクリーニングマンモグラムに基づいた短期的な個別乳がんリスクの正確な評価が可能になる。VMware vSphereを使用して高度なワークロードを実行することは、データ集約型アプリケーションを病院のインフラストラクチャに簡単に統合できるため、iCADを利用するヘルスケア現場の顧客にとって重要。
米国放射線専門医会(ACR)のAI LABや独自のフェデレーテッドラーニングプラットフォームを持つRhino Healthなど、他の多くのソフトウェアメーカーがNVIDIA AI Enterprise上でソフトウェアの検証を開始し、共通のヘルスケアITインフラストラクチャに統合することで展開を容易にすることを目指している。
ヘルスケア系のIT企業やソフトウェア企業にとって、AIを病院環境に統合することは最優先事項。Aidence、Arterys、contextflow、ImageBiopsy Lab、InformAI、MD.ai、methinks.ai、RADLogics、Sciberia、Subtle Medical、VUNO といった、多くの NVIDIA Inceptionパートナーは、このような環境においてNVIDIA AI Enterprise上で自社製品の展開のしやすさを検証している。
NVIDIA InceptionはAIやデータサイエンス、HPC分野のスタートアップ企業向けに市場投入サポート、専門知識、テクノロジを提供するプログラム。対象となる企業はNVIDIA LaunchPadで提供される選りすぐりの無料のラボでNVIDIA AI Enterpriseの体験に応募することができる。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。