NVIDIAが「イチから分かる!Omniverse」を開催 デジタルツインや3Dデザイン構築を支援する「Omniverse」とはなにか

NVIDIAは2021年12月7日、日本の報道関係者に向けて「イチから分かる!NVIDIA Omniverse」オンラインミーティングを開催した。現在、急速に注目を集めている「デジタルツイン」や「メタバース」。それらに繋げるため、エンジニアやクリエイターのコラボレーション作業を支援するプラットフォームが「NVIDIA Omniverse」だ。2020年12月からオープンベータのリリースは始まっていて、日本は世界で3番目にダウンロード数が多い国にもかかわらず、詳細はあまり知られていないのが現状だろう。

そこでNVIDIAのエンタープライズマーケティング部門の田中氏から「NVIDIA Omniverse」に関する詳細な説明と、質疑応答の機会が設けられた。

エヌビディア エンタープライズ マーケティング シニア マネージャーの田中秀明氏


Omniverseとは

現在、3Dデザインは建築や土木、エンタメやゲーム、製品や工業デザイン、科学技術計算やシミュレーション、ロボットや自動運転開発など、幅広い分野で活用が始まっていることはご存じのとおり。


コロナ禍もあってこれらの業務に変化が起こっている。複数のチームメンバーで取り組むこれらの業務を、点在した拠点やテレワーク環境でも共有し、協業できる作業環境のニーズが急速に高まっている。


OmniverseはNVIDIA社内向けのソリューション開発がはじまったという。分散している開発チームを繋ぎ、協業して短期間で開発するツールが必要だった。また、NVIDIAは自動運転のAI学習向けのシミュレータ環境も積極的に研究・開発しており、そのノウハウもあった。


Omniverseは2020年の12月にオープンベータとしてリリースされていて、ワールドワイドでは既に94,000ダウンロードとなっている。日本は、米国、中国に次ぐ3番目に多く(英国とほぼ同じだが)、Omniverseに関する興味が高い地域としてNVIDIAとしては考えている。





Omniverseのしくみ

Omniverseのしくみを示した概念図は下記の通り。
左が各分野のエンジニアやクリエイター、真ん中がOmniverseに接続して、NVIDIAが提供しているシミュレーション・テクノロジー(USD、物理演算、マテリアル、パストレーニング、AI)を活用されていくことを示している。右のRTXレンダリングは、GPUを活用したNVIDIA得意のグラフィックスのリアルタイム・レンダリング環境を示している。


仮に左のエンジニアやクリエイターが複数のメンバーで作業した場合、データは共有できたとしても、最新データへの更新(作業環境へ最新版としてのデプロイ)がうまくデータシンク(シンクロ)できなかったりすることでトラブルに繋がってしまうという課題がある。例えば、同時に作業ができないために別の作業が終わるのを待つ時間が生じたり(効率が悪い)、誤って最新版を古いデータに上書きしてしまうなど、共有環境のワークフローならではのトラブルだ。Omniverseはコラボレーション環境でもデータシンクを迅速に行い、これらの課題を解決するソリューションプラットフォームとなる。

「Omniverse」の協働作業の例(下の画面)。複数のクリエイターが別のアプリケーション(Autodeskの3DS MaxやREVITなど)でひとつのプロジェクトの作業を同時に進行している。左上、左下、右下のメンバーが作業している状況を、右上のOmniverse Viewにほぼリアルタイム表示で反映することで、コラボレーション作業を一体的に進行させている。

Omniverseのコラボ作業画面例。左上、左下、右下のメンバーが作業中。右上の「Omniverse View」に3人の作業結果をほぼリアルタイムで反映している



「Omniverse」の5つの基本プラットフォーム

具体的には「Omniverse」は5つの基本のプラットフォームで構成されている。中でも「NUCLEUS」(ニュークレウス)が中心的な位置づけとなる。


下の図でも中心となっている「NUCLEUS」はOmniverseの肝となるアセットのデータベースサーバ。「NUCLEUS」に対して様々なアプリが接続され、協働作業できる環境が構築される。「NUCLEUS」の作業内容は「Omniverse Create」に生成され、「Omniverse View」で表示される。また、その他の連携したシステムでデータを出力することもできる。


コラボレーションを高速に処理して反映する、処理能力が際だったサーバとなっている。


「NUCLEUS」から出力されるデータのひとつが「USD」(UNIVERSAL SCENE DESCRIPTION)。ピクサーによって開発された、拡張性にすぐれたグローバルなフォーマットとなっている。


対応するアプリケーションの接続環境はプラグイン(OMNIVERSE CONNECTOR)として提供される。NVIDIAから提供しているプラグインもあれば、それぞれのアプリベンダーが提供するケースもある。これらのシステムを既に使用していて、共有環境で悩みを感じていたら、「Omniverse」を詳しく調べてみるとよいだろう。


今回はここまで。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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