NECと小野薬品、AIが異物と泡を高精度に識別する技術を開発 ガラス瓶中の異物を泡と間違えずに検出

ガラス瓶に充填されたがん治療薬や感染症ワクチンなどの薬液を検査する工程では、自動検査装置による一次検査と、検査員の目視による二次検査で異物が混入している瓶を取り除くことが一般的だ。

一次検査では、薬液が充填された全てのガラス瓶に対し、画像を活用した検査を実施するが、正常品を不良として認識し排除されることが多く、そのほとんどが泡を異物と認識していた。さらに二次検査を行う検査員には高度な技術やノウハウが必要となり、検査品質のばらつきや、増産時の検査員の確保が課題となっている。

この課題を解決すべく、NECは小野薬品工業株式会社と提携し、AI技術を活用してガラス瓶に充填された薬液中の異物を検出する新しい技術を開発したことを2021年12月16日に発表した。同技術は、検査員による検査手法を倣い、ガラス瓶を傾けたりすることにより発生する泡と異物の”動き”の違いをAIで学習することで、これまで難しかった薬液中の微細な異物だけを高い精度で検出する。

両社は同技術を自動検査に適用することで、目視検査数を削減し、検査品質の均一化と増産計画等に迅速に対応できる検査工程の実現を目指し、2022年度の実用化を目指していくと述べている。



同技術の特長

同技術は、検査員の目視検査に倣うことで、高精度に異物を検出可能。また、“動き”に着目することで、様々な種類の微小異物に対応している。なお、同技術については、ビジョン技術の実利用ワークショップである「VIEW2021」(12月3日開催)にて共同で論文発表した。


検査員の目視検査に倣うことで、高精度に異物を検出

検査員による目視検査では、ガラス瓶を傾けるなどして薬液とその中の異物を動かし、異物と泡の”動き”の違いを見極めている。同技術はその検査手法をヒントに開発したものだ。具体的には、ガラス瓶を揺動した様子を高速カメラで撮影。その後、ガラス瓶の中の一瞬の動きをスローモーションのように解析して異物と泡の動きを正確に抽出し、その僅かな違いを認識する。これにより、異物だけを高精度に検出することが可能となった。


“動き”に着目することで、様々な種類の微小異物に対応可能

近年、深層学習に代表される機械学習技術を用いて対象物を画像中の“見ため”で認識するAIが注目を集めている。しかし、画像中の異物の見ためを学習させても未学習の異物には対応できず、微小な異物と泡を見分けられるほど拡大して撮像することは実用的ではない。同技術は、異物の比重や形状の特徴が表れる“動き”に着目して判別するため、様々な種類の微小な異物に対応可能だ。

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ロボスタ編集部

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