透明フィルムを貼るだけで5G通信の環境を改善 積水化学「5G通信向け透明フレキシブル電波反射フィルム」発表

積水化学工業株式会社の高機能プラスチックスカンパニーは、透明なフィルムを貼るだけで5G通信の環境が改善する画期的な製品を発表した。独自のフィルム、光学粘着材技術と、Meta Materials Inc.のメタマテリアル技術の活用した「5G通信向けの透明フレキシブル電波反射フィルム」だ。5G通信の電波を反射させることで、届きにくかった場所にも電波を届けるしくみ。
サンプル販売の開始予定は2022年度から。2026年度に売上高60億円を目指す。

電波環境評価に関しては、DOCOMO Innovations, Inc.の協力の下で検証を進め、5Gから6Gまでの周波数帯域をカバーし、従来にはない高い透明性・電波拡散性を併せ持ったフィルムであることを確認した。


5G通信の課題を「反射」で克服

5Gおよび6G通信では、既存のLTE(4G)よりも高周波である「sub6」(3.6GHz~)や「ミリ波」(24GHz~)が使用されている。ミリ波は、伝送情報容量が大きい特徴があるものの、電波の直進性が高く、建造物などの回り込みに弱く、電波が減衰、通信品質が低下するという課題がある。このような通信品質低下を解決する方法として、多数の基地局を追加設置したり、中継機を設置する方法等があるが、高額な追加投資を伴うことが難点だ。

最近、プリント配線基板上にメタマテリアル銅パターン構造を有したミリ波用反射板が開発され、同社ではメタマテリアル構造で景観を損なわない透明かつフレキシブルな電波反射板に着目したという。自社のフィルム、光学粘着材技術と組み合わせることでソリューションを提供できると考え、研究開発を推進してきた。

また、Meta Materials Inc.の持つ世界トップレベルの透明ナノ構造のメタマテリアル技術「NANOWEB」と、その製造技術「Rolling Mask Lithography – RML」を当社技術と融合することで、ミリ波帯域だけでなく、2GHz~60GHzの広帯域に対応した全光線透過率95%の透明フレキシブル電波反射フィルムを実現した。




電波を反射させて隅々に電波を届ける

このフィルムは、高次電波反射構造を有するメタマテリアル層と高透明粘着剤とフィルム表面を保護する特殊コーティング層、特殊粘着剤から構成される。

フィルムの構成

これを壁・天井などに貼ることにより電波を反射させ、遮蔽部に電波を届けることが可能となる。この方法により、基地局や中継機の設置に比べ、安価に短期間で通信環境の改善が可能となる。また、電源不要、透明、フレキシブルであるため、外観を損ねることなく、あらゆる形状の部位や場所に施工が可能となっている。 

フィルムの外観

特徴
1).Sub6~ミリ波帯域の電波を反射するフレキシブルフィルム
2).屋内外問わず使用箇所の景観を損なわない透明素材
3).簡易施工可能で電源も不要。いかなる場所の電波環境も改善

電波反射イメージ




効果をドコモやミライトと実証実験

DOCOMO Innovations, Inc. のシミュレーション技術を用いて、反射フィルムの効果を企画段階で確認し、株式会社ミライトの協創ラボにおける屋内実証実験で検証を行なった。
実証実験では、基地局から30m離れた反射フィルムを介して、基地局からの電波を適切に反射制御することによって、電波環境を広範囲に改善できることを確認した。

DOCOMO Innovations, Inc. による屋内電波環境改善シミュレーション

株式会社ミライトとの屋内電波環境改善実証実験(28GHz)


今後の展開

透明、フレキシブル、軽量、電源レスという特徴を活かして、オフィス、工場、ショッピングモール、医療・介護施設、各種競技場、農場・畜産場、スマートシティー、地下街、鉄道・道路インフラへの展開に加え、救急、工事現場、キャンプ等の一時的・緊急的な用途への対応も含め、用途開拓を進めていく。

サンプル販売の開始予定は2022年度から。2026年度に売上高60億円を目指す。

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ロボスタ編集部

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