劇団四季のミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』を観てきました(ネタバレなし)。
劇団四季オリジナル一般ミュージカルとしては16年ぶりとなる作品。雑誌「ミュージカル」誌が発表した「2020年 ミュージカル・ベストテン」で作品部門第1位を獲得するなど、高い評価を得た作品でもあります。今回はその再演となります。
主人公は、何ひとつ自分で成し遂げることができない無気力な男性「ベン」と、壊れかけのロボット「タング」。でも、ロボットが主人公なのにSFではありません。SFの要素があるものの、劇団四季らしい「生きることの素晴らしさ」を感じる、温かいヒューマンドラマとして仕上がっています。
ロボットの「タング」はいかにも旧式でみすぼらしいけれど、どうやら高性能なAI、ディープラーニングが搭載されているコミュニケーションロボットだということが、お話の途中でわかってきます。タングは経験を通してたくさんのことを学ぶことができるのです。
現代のロボットやAI研究の最前線でも「ロボットは味方か敵か」「ロボットに感情は必要か」「私達はロボットに生命を感じることができるか」「そもそも生命とはなにか」「ロボットとの共存には何が必要か」そんなテーマで議論されることがしばしばあります。
タングとベンの旅を通じて、こうした難問をもう一度、考え直す機会を与えてもらったような気がします。そうそう、ラストに向けて衝撃の展開にも期待してください。
今回、観劇した回はベンを田邊真也さん、タングを長野千紘さんと安田楓汰さんが担当。田邊さんのベンの演技と歌が素晴らしく、さらにはタングの声が特にとても愛らしくて、物語に夢中になりました。
ロボットには心がないはずです。でも、実は私たち人間も心とは何かを知りません。相手が心を持たないはずのロボットだからこそ私たちが抱く独特の感情や絆を、観る者はみな体験することでしよう。そして、心が温かくなる特別な時間を共有することになります。
■動画 劇団四季:『ロボット・イン・ザ・ガーデン』:プロモーションVTR
竹芝エリアに劇団四季の劇場が3つも
観に行ったのは浜松町、竹芝エリアの「自由劇場」。私ははじめて行きました。劇団創立50周年記念で建てられた劇場で、客席数は約500席。劇団四季としては小規模ですが、小劇場も大好きな私としてはちょうどいいサイズでした。
東京公演は2022年1月23日(日)まで、その後、京都公演、全国公演へ続く予定です。
気がつけば、竹芝エリアにはこの自由劇場のほかに、JR東日本四季劇場[春]、[秋]と3つの劇団四季の劇場があるのですね。更にはすぐ近くの新橋にも 電通四季劇場[海]があります。
ライブ配信も
「ロボット・イン・ザ・ガーデン」のライブ配信が1月に行われます。1月22日(土) 13時公演、17時30分公演、千秋楽となる23日(日) 13時公演を「劇団四季ライブチャンネル」「U-NEXT」「Rakuten TV」で配信。詳細はこちら「ロボット・イン・ザ・ガーデン ライブ配信実施のお知らせ」をご覧ください。
手元のスマートフォンやタブレット、自宅のパソコンなどでも楽しむことができます。
そうそう、小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』を原作にした映画『TANG タング』(主演:二宮和也、監督:三木孝浩)が2022年8月に公開予定となっています。そちらも楽しみですね。
主なストーリー
「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の原作は2015年に出版された英国の作家デボラ・インストールが書いた同名小説。翌2016年にはベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選出され、高く評価されました。
物語の舞台は近未来のイギリス。人間そっくりなアンドロイドが人間に代わって家事や仕事を行なっています。アンドロイドが家庭に入って役立つ一方で、仕事を奪われたことでアンドロイドを憎み、社会に不満を持っている人達もいます。そこではヒト型の最新型アンドロイドと、昔風の旧式のロボットは明確に分けられています。
主人公はイギリスの田舎町に住むベン。結婚していて、妻のエイミーは仕事ができる弁護士、ハッキリとした積極思考、効率を優先する性格です。一方のベンはそもそも内向的な性格、両親を事故で失ってからというもの、一層無気力になり、目指していた獣医師の勉強も諦め、自分でも「何ひとつ成し遂げることができない」そんな性格を恥じています。
そんなある日、ベンの家の庭にいかにもみすぼらしいロボットが現れます。ロボットの名前はタング。
記憶を失っているのか、話がチグハグ。ベンはタングが壊れかかっていることを知り、直したいと考えます。そんなベンをエイミーは激しく批難します。「壊れかかっているんだからそんなロボットは捨てるべき」というエイミーに、「壊れかかっているのに放り出すなんてできない」とベン。
ついにベンに愛想を尽かして家を出て行くエイミー。ベンはタングを修理することを決意し、製造メーカーを訪ねて旅に出ることを決めます。めざすは遠いアメリカのシリコンバレー、そしてやがては日本へ。
旅先で出会う人達とのさまざまなエピソードを通してストーリーが進み、タング誕生に関わる衝撃の真実も明らかになっていきます。
■東京公演
上演期間:2021年12月22日(水)~2022年1月23日(日)
会場:自由劇場
チケット料金:
・バリュー(平日夜):S席一般 9,900円、A席一般 8,250円、A席学生 4,125円
・レギュラー(平日昼・土夜):S席一般 11,000円、A席一般 8,800円、A席学生 4,400円
・ピーク(土日祝昼):S席一般 12,100円、A席一般 9,350円、A席学生 4,675円
※初日・千秋楽は上記と異なる。
※学生=大学生・専門学生以下(公演当日、入館時に学生証を提示する)
※公演当日3歳以上有料(膝上観劇不可)。2歳以下の入場不可。
協賛:第一三共株式会社
協力:東日本旅客鉃道株式会社
■京都公演
上演期間:2022年2月23日(水・祝)~4月16日(土)
会場:京都劇場
チケット料金:
・バリュー(平日夜):S席 9,900円、A席 8,250円、B席 6,050円 C席 2,750円
・レギュラー(平日昼・土夜):S席 11,000円、A席 8,800円、B席 6,600円、A席 3,300円
・ピーク(土日祝昼):S席 12,100円、A席 9,350円、B席 7,150円、C席 3,850円
※初日・千秋楽は上記と異なる。
※公演当日3歳以上有料(膝上観劇不可)。2歳以下の入場不可。
共同主催:JR西日本
共催:京都商工会議所
協賛:第一三共株式会社
後援:京都府/京都市/京都府教育委員会/京都市教育委員会
協力:京都市交通局/近畿日本鉄道/京阪ホールディングス
■全国公演
2022年5月14日(土)開幕予定
ABOUT THE AUTHOR /
神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。