オムロンが新「製造業のAI/IoT/ロボット/デジタルツイン/ローカル5Gの体験・検証エリア」公開 同社も45%の生産効率化を実現 ATC-KUSATSU

オムロン株式会社は、滋賀県草津市の同社の草津事業所内にある「オートメーションセンタ KUSATSU(ATC-KUSATSU)」を2021年1月12日にリニューアルオープンしたことを発表、同日に報道関係者向け公開ツアーを開催した。

ATC-KUSATSU

また、オートメーションセンタ KUSATSUには、5G、AI、IoT、ロボティクスなどの先進技術を組み合わせた新たなモノづくりの実証実験エリア「POC-KUSATSU」が新設された。

新たなモノづくりの実証実験エリア「POC-KUSATSU」ロボットPoCエリアの様子

新たなモノづくりの実証実験エリア「POC-KUSATSU」ロボットPoCエリアの様子

5G通信はメリットとともに課題も多く、当初は製造現場への5G導入に慎重だったが、草津工場でオムロンとNTTドコモ、ノキアとの3社で製造現場での5G実証実験を行なったという。その結果、5Gは機器間の通信を始めとして工場などの屋内空間でも高速・低遅延の性能の効果検証に良い評価が得られたという。


それを踏まえて、オムロンはローカル5Gの免許を取得し、新設した「POC-KUSATSU」ではオムロン自家製のローカル5G設置も導入した。そのため、無線を使った自由なレイアウトでラインを構築したり、自動搬送車などの活用実験が行えるようになり、研究・開発・デモしていく環境が整った。

「POC-KUSATSU」5Gを活用したセルラインシステム


全世界で37ヶ所のオートメーションセンタ、始まりの地

同社によれば、オートメーションセンタ(ATC)は全世界で37ヶ所。世界最高水準のオートメーション技術を製造業各社に提供し、クライアントと共に、課題を解決するソリューションを創る拠点となっているという。
その中にあって「ATC-KUSATSU」は、世界で初めてのオムロンのオートメーションセンタとして2011年に誕生、最先端のFA技術で製造現場の自動化を加速し、深刻な社会問題である、製造業の人手不足の解決に貢献してきたとしている。

「オートメーションセンタ KUSATSU」説明会に登壇したオムロン株式会社 執行役員 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 技術開発本部長 福井信二氏





リアルな工場をデジタル空間上に再現するデジタルツイン


ATC-KUSATSU

今回のリニューアルでは、デジタル技術を駆使し、最先端のFA技術でリアルな工場をデジタル空間上に再現することを可能にした。事前のシミュレーションや他のATC拠点とリモートでつなぐことで他ATCにおけるソリューションを体感、実機実証による顧客価値を創造する施設として生まれ変わったという。
これによって、同日に未来形を発表したオムロン独自の製造現場の革新コンセプトである「i-Automation!」(Next)の世界を実現していく考えだ。ATC-KUSATSU は、技術・開発・製造機能を同拠点内に唯一所有するATC。オムロンの持つ20万点以上にも及ぶ制御機器とソフトウェアやサービスを高度にすり合わせた技術と制御アプリケーションを使用し、クライアントの課題に合わせた解決策を実証できる環境であり、クライアントが各種機器の導入に必要となる技術トレーニングも提供できる。

ATC-KUSATSUは、オムロンの製品や技術、アプリケーションを体験する場であり、新たなアプリケーションの開発と効果の検証、実証実験を行うことなどが主な位置づけとなる

ATC-KUSATSUの棟の隣、草津工場の生産ラインをDXでモニタリング、カメラやIoTでデータ収集、改善を行った。スタッフの人流や製品のトレーサビリティも行えているという。生産シュミレーションを構築して結果の改善を行った結果、これまでも改善を行ってきたにもかかわらず、更に45%の効率化(時間あたりの生産量)が達成でき、オムロン自身も良い驚きがあったという。



POC-KUSATSU

実証実験(PoC)に適した環境として「POC-KUSATSU」も設置した。
クライアントの装置の持ち込み検証など、使用環境に合わせた実証実験が可能な最大の「POC-KUSATSU」も併設し、実機による各種アプリケーションのテスティング、導入課題の実機検証を実施できる。

ロボットPoCエリア

5Gとモバイルロボットを活用したレイアウトフリーライン。手前から供給工程、加工工程、検査工程の3エリアがフリーに配置されている

5Gとモバイルロボットを活用したレイアウトフリーライン

5Gとモバイルロボットを活用したレイアウトフリーライン



「ローカル5G」も装備、NTTドコモらとの共同実証も

また、「POC-KUSATSU」は、昨年末に「ローカル5G」無線局免許を取得しており、協調ロボットやモバイルロボットなど各種ロボットに加え、5GやAIなどの先端技術を組み合わせた実証実験が可能な環境となっている。

5Gを活用したセルラインシステム
【施設概要】
オートメーションセンタ KUSATSU / POC-KUSATSU
住所:滋賀県草津市西草津 2-2-1
面積: 708 ㎡ (214.17 坪)

■主な機能
・DX コーナーのコックピット(マルチディスプレイ)で工場のリアルな自動化事例を体感
・5Gを活用した、フリー生産ラインの実証、共同検証の実施
・お客様の課題解決に貢献できるデモ機の体験、技術交流
・課題解決のための「アプリケーションの開発」
・解決策の実現に向けた実証、共同検証の実施
・現場導入のための技術トレーニングの提供

■見学方法
法人のクライアントを対象とした事前予約制。
詳細は営業担当窓口で受付。
新規の法人は以下の営業拠点一覧から最寄りの営業拠点で受付あり。
https://www.fa.omron.co.jp/view/sales/local/ocShoplist.cgi

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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