愛知県では、サービスロボットの社会実装を促進するため、「あいちロボットトランスフォーメーション(ARX)」(旧あいちロボットショーケース)を県内の様々な施設で実施している。
内容は、スポーツ施設や病院、農場など、さまざまな実証実験の場を提供、サービスロボットのベンダーとそれを活用したい施設をマッチングするとともに、実用化を目指して現場での機能や課題が確認できる機会となっている。今回はトマト農場で行われた実証実験の様子をレポートする。収穫したトマトを自動運転で運ぶ自動搬送ロボット、作業スタッフの力作業をサポートするパワーアシストスーツ、トマトの検品作業を全自動化するAIロボットを紹介しよう。
トマロッソ東郷ファームで実証実験
2021年12月、愛知県の東郷町にある農場「トマロッソ東郷ファーム」で支援ロボットの実証実験が行われ、トマト栽培の圃場で、噴霧・搬送ロボット、パワーアシストスーツ、トマトの選別・仕分けロボットを実証実験した。(実施期間は2021年12月20日~22日)
噴霧・搬送ロボット(トクイテン)
噴霧・搬送ロボットは、名古屋-東京に拠点を置く株式会社トクイテンが開発している。2021年8月に設立した農業スタートアップ企業。同社は、得意なAIやロボットの技術を生かして「高齢化・人口減少社会に対応したロボット化農業」「環境負荷の小さい有機農業」「美味しさと収穫量を両立したAI農業」を通して、持続可能な農業の実現に取り組む、としている。
実際に農地を取得し、自社実験施設(20a程度の栽培施設)の建設を進め、将来的には2ha、 4haとロボットやソフトウェアで効率化を進める狙いだ。
噴霧・搬送ロボットは、圃場(ほじょう)を自律走行で巡回し、収穫物の運搬から、農薬噴霧まで行うことができるロボット。農園での使用用途に合わせて、既製ロボットをカスタマイズ、ソフトウェアを開発して提供する。
今回は、農場のスタッフが収穫したトマトを自動搬送、もしくは追従して走行する実証実験がおこなわれた。ビニールハウス内の数か所を目的地点として登録、各地点間を自動運転により移動し、収穫物を搬送した。
ルート移動は基本自動操縦。今回は噴霧のスタート~ストップの認識のために、QRコードを使用し、地点間をトマトを積んで自律移動した。
噴霧モード
噴霧モードの実証実験では、右後方(下の写真では手前)に取り付けられた噴霧器を使って農薬を散布した。
■動画 噴霧・搬送ロボット(トクイテン)の自動運転
パワーアシストスーツ (JTEKT)
パワーアシストスーツは株式会社ジェイテクトの「J-PAS LUMBUS II」を使用した。装着して重い荷物の積み下ろしや、同じ姿勢での作業を支援する。人の動作をセンサーで検出し、必要なタイミングで必要な大きさのパワーをアシストをするしくみ。今回は実際にトマロッソのスタッフにパワーアシストスーツを着用してもらい、トマトかご等の積み上げ、積み降ろしを行ってもらう実証実験がおこなわれた。
実証実験中は、JTEKT社員が着用時と非着用時でのスピードや心拍数などの作業データを収集したり、実際にアシストスーツを着用した際に、どれくらい作業負荷を軽減できるのかなどの計測を行った。
なお、特に効果が確認できたのが、搬送を行う軽トラへの収穫かごの積み上げ、積み下ろしの作業時だった。
■動画 JTEKTのパワーアシストスーツをトマト農場で実証実験
トマトの良品チェックとアームロボット「Dobot Magician」
アームロボット「Dobot Magician」は株式会社GRIPSが開発したアームロボット。小型パーツの配膳や荷詰めなど、生産設備内における軽作業の自動化を目的として開発された。今回の実証実験では、画像認識によるトマトの選別と仕分けを行った。
まず左側のロボットがトマトをコンベアにセットする。コンベアはトマトを中央まで運び、カメラでトマトを画像認識し、ディープラーニングにより「良品」「不良品」を自動判断する。判定に従って、右側のアームがトマトを把持して振り分ける。
事前にトマトの画像を数100枚撮影してデータを蓄積、良品か不良品かを判別できるように機械学習(AI:ディープラーニング)した。右手のiPadで状況は逐次確認することができ、アルゴリズムは随時更新される。
選別の作業をしているスタッフは「普段、トマトのかなり細かい傷までチェックしているが、スタッフによって判断基準が異なることもある。AIによる判別によって品質の均一化が行えるかもしれない」とコメントした。
■動画 AIロボットがトマトの検品して自動区分(良品/不良品判定はAI)
農業は高齢化や後継者不足という深刻な課題を抱えている。政府も将来の超スマート社会のひとつとして、ICTによるスマート農業の実現を推進している。AIやロボット、IoTなどの先進技術が農業の現場で実用化され、農業に携わる人達の作業負担が軽減できる日がいち早くやって来ることを、編集部も期待している。
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