世界最大級のオーディオブック、音声コンテンツ制作・配信サービスの「Amazonオーディブル」(オーディブル)は、本日(2022年1月27日)より、日本向けの会員プランを定額「聴き放題」制へ移行することを発表した。12万以上の聴き放題対象となるオーディオブックやポッドキャストを楽しむことができるようになる。
Amazonオーディブルは、プロのナレーターや俳優、声優が朗読するオーディオブックや、ニュースやお笑いなどバラエティあふれるポッドキャストなどを取り揃えている。従来は聴き放題コンテンツと有料のコンテンツがあり、月額1,500円で会員になると、毎月1コインが配布され、有料のコンテンツが1作品楽しめる料金を含む制度だった。今後はコイン制度はなくなり、新作を含むほぼすべて(約95%)のコンテンツが聴き放題となる。
Amazonの発表によれば、コイン制の導入を開始した2018年8月と比較して、昨年12月には会員数は約4.5倍へと増加したという。今回の改訂で、お得感は大幅に増すため、会員数は大きく伸びるのではないだろうか。
Amazonリリースを通じて「近年のライフスタイルの変化に伴い、これからも期待が高まる音声エンターテインメントを多くの皆様に届け、よりたくさんのコンテンツをお楽しみいただけるよう、会員プランを定額制聴き放題へと移行します」とコメントしている。
コインを所有している人は
既にオーディブルの会員でコインを所有している人には特筆しておきたいポイントがある。聴き放題プランでダウンロードしたタイトルは、オーディブル会員を退会すると聴くことができなくなる。一方、コインを使ってダウンロードしたり、購入したタイトルは退会後も聴くことができるため、手元にずっと所有しておきたいタイトルはコインを使ってダウンロードしておくことをおすすめしたい。
村上春樹作品も準備中
コンテンツの強化も同日に発表された。
杏さんと共同企画で制作されたオリジナルポッドキャスト作品「Journey To The Origin With Anne」を配信開始する予定。更に、今井翼さん・森川智之さん・南沙良さんらの出演で制作されるアメリカの人気コミック「The Sandman」の日本語音声版の制作と、高橋一生さん・木村佳乃さんらの朗読で、村上春樹さん著の10作品をオーディオブック化(日本語では初)する予定も発表した。冒頭の写真は左から杏さん、森川智之さん、今井翼さん、南沙良さん(記者発表会にて)
村上春樹さんの作品については、レイモンドチャンドラー作品(このシリーズは聴き放題対象外)など、今までは村上さんが翻訳を担当した作品のラインアップはあったが、村上春樹さん自身の著作の日本語朗読タイトルはなかった。
今回、村上春樹さん著の10作品の日本語版オーディオブックの制作に向けたプロジェクトが予定されていることが発表された。日本語では初めてとなる本プロジェクトでは「騎士団長殺し」を高橋一生さん、「海辺のカフカ」を木村佳乃さん、「神の子どもたちはみな踊る」を仲野太賀さん、「職業としての小説家」を小澤征悦さん、「東京奇譚集」をイッセー尾形さんの朗読で制作を予定。それ以外には、「1Q84」「ねじまき鳥クロニクル」「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」「螢・納屋を焼く・その他の短編」「辺境・近境」の制作が予定され、ファンにとっては新たな楽しみに繋がりそうだ。
ダークで文学的なファンタジーとホラーの世界「The Sandman」
「The Sandman」は、ダークで文学的なファンタジーとホラーの世界によって、世界規模の文化的現象を生み出し、ニューヨークタイムズでベストセラー入りした作品。英語のオーディブル版では、作家のニール・ゲイマン氏が本作の共同制作総指揮を、多数の受賞作品をもつダーク・マグス氏が脚色と監督を務めており、英国アカデミー賞受賞の作曲家、ジェームズ・ハニガン氏によるオリジナル曲を用いた、類を見ない映画的な音風景を再現した。これらの演出はそのままに、声のみを日本語にした日本版の「The Sandman」が今春から順次配信される予定。また、それに先がけ、今井さん・森川さん・南さんへのインタビューを収録したChapter 0が明日(1月28日)より配信予定となっている。
「オーディオファースト作品」についても、今年は新潮社との取り組みで三浦しをんさん著「墨のゆらめき」(仮題) の配信を予定している他、河出書房新社、幻冬舎、講談社、実業之日本社(五十音順)を含む多くの出版社と、新たにプロジェクトが予定されている。
村上春樹さん、高橋一生さん、木村佳乃さんからコメント
村上春樹さん著の10作品のオーディオブック化プロジェクトの始動に際しては、村上春樹さん、高橋一生さん、木村佳乃さんからのメッセージが公開された。
村上春樹さん
僕は車を運転しながら、よく小説の朗読を聴いています。僕の場合、どちらかといえば古典作品を「聴く」ことが多いんだけど、自分の小説がほとんど同時代的に「耳で読まれる」というのは、嬉しいようでもあり、また少しばかり気恥ずかしいようでもあります。でもこれからはおそらく、多様な形式をとって小説は読まれていくのだろうし、作家の側も多かれ少なかれ、そういう新しい環境を念頭に置いて作品を書いていくことになるのだろうと思います。これまでになかった新しい可能性が生まれるといいと思う。
高橋一生さん
村上さんの作品は僕にとって、とても思い入れのある作品ばかりですが、その中でも「騎士団長殺し」は大好きな作品の一つです。以前、この作品の書評を書かせていただいた際に、「これは僕の物語のように感じる」と書かせていただきましたが、今回改めてこの作品と向き合い、どう自分自身が反応していくのか、とても楽しみにしております。村上さんの作品を朗読で表現するという新しい挑戦となりますが、僕の声を通して、「騎士団長殺し」をお届けできれば幸いです。
木村佳乃さん
私は、村上春樹さんの大ファンなので、大興奮と同時に緊張しております。「海辺のカフカ」は発売時に読んでから時間が経っているので、また読み直して、皆さんの想像力を掻き立てることが出来るような朗読を目指して頑張ります。私自身オーディブルのヘビーユーザーで、音楽でもなく、ラジオでもなく、物語が聴きたい時があるので、家事をしながら聴くことが多いです。ですので、「海辺のカフカ」をずっと私の声を聴いてくださる方がいるのかと思うと、有難い気持ちでいっぱいです。張り切って務めさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。
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