ソフトバンクと日本気象協会が「来店客・需要予測サービス サキミル」開発 小売・飲食業界向けにフードロス削減や勤務シフト最適化に

ソフトバンク株式会社と日本気象協会は、小売り・飲食業界向けに需要予測サービス「サキミル」を共同開発し、2022年1月31日からソフトバンクが提供を開始することを発表した。同日に報道関係者向け説明会を開催した。

ソフトバンクは人流データと解析技術を、日本気象協会が気象データとデータサイエンティストを提供し、このサービスが実現した 注)人流統計データは個人を特定されないように匿名化および推計処理、統計加工したデータとなっている

ソフトバンクが携帯電話の基地局情報を基にした人流データを、日本気象協会が気象データとデータサイエンティストによる分析技術を提供し、実際の小売店舗のデータを加味して、高精度の来店予測・購買予測を行う。高精度な来店予測・購買予測は、在庫管理、スタッフのシフト管理、販促キャンペーンにも繋がるとしている。


導入のベースとなる料金は「来店客数予測」(14日予測)で、1店舗につき初期費用3,300円、月額5,390円となる(いずれも税込)。

導入しやすい料金設定で、普及をめざす




人流・気象データなどを活用したAI需要予測サービス「サキミル」

需要予測サービス「サキミル」はフードチェーン全般、様々な分野に対応したものに発展する予定だが、サービス開始当初はまず、小売り業・飲食業界向けに店舗ごとに来店客数を予測する「来店客数予測」機能として提供する。

「サキミル」は当初まず、図右の「来店客数予測」機能から提供を開始

「サキミル」を導入することにより、企業は「サキミル」が予測した来店客数を基に、店舗ごとの商品の発注数や従業員の勤務シフトを調整することができるとしている。




バロードラッグ店舗で効果を実証

「サキミル」は、中部地方を中心にスーパーやドラッグストアなどを展開する、株式会社バローホールディングスのバロードラッグ10店舗に先行導入。効果実証を行った。


来客予測と商品需要予測で発注数を最適化することにより「過少発注」による販売機会ロス、「過剰発注」によるフードロス(廃棄)の削減を目指した。



効果検証の結果、来店客数の予測精度は約93%を達成。機会ロスとフードロスの改善に貢献でき、満足の結果を得た。

中部地方を中心にドラッグストアを展開する中部薬品株式会社が運営する店舗で事前検証。来店客数の平均予測精度は93%となり、高い有効性を示す結果が得られた

この結果を得て、バローホールディングスはグループ企業がそれぞれ運営する合計約1,200の店舗を対象に、2022年1月31日以降、順次「サキミル」の導入し、来店客数予測を活用した在庫発注業務に活用することを決定しているという。また、来店客数予測を活用した在庫発注業務に活用することも視野に入れていく。

提供:ソフトバンク

また、ゴディバ ジャパン株式会社は、同社が運営する約300店舗を対象に「サキミル」の導入に向けた検討を進めているという。

ゴディバ ジャパンは「サキミル」で需要予測を軸としたオペレーション改善を検討。「在庫切れ/廃棄」や「スタッフの適正配置」に「長期客数予測」や「商品需要予測」で対応、顧客満足度向上に繋げたい考え




「サキミル」で「SDGs」の達成を支援

「サキミル」は、ソフトバンクの携帯電話基地局から得られる端末の位置情報データを基にした人流統計データや、日本気象協会が保有する気象データ、導入企業が保有する店舗ごとの売り上げや来店客数などの各種データを、ソフトバンクと日本気象協会が共同で開発したAIアルゴリズムで分析し、高精度な需要予測を行うサービス。


まずは「来店客数予測」を提供開始、商品の需要予測機能の開発を目指す。その後、在庫発注やシフト作成などの機能を順次追加する予定となっている。


説明会で「サキミル」の特徴について詳細が説明され、「フードロス」(食品廃棄)と「労働人口の低下」に対するソリューションの位置付けも強調した。日本では年間570万トンの食品が廃棄されており、大きな社会問題となっている。また、特に小売り・飲食業界においては、高い離職率や新型コロナウイルス感染症の影響による消費行動の変化、外国人労働者の来日が難しい状況の中で、人材確保が課題、とする。


ソフトバンクと日本気象協会は「サキミル」を提供することで、予測された来店客数に応じて商品の発注数や勤務シフトを調整するなど、フードロスの削減や人員配置の最適化に貢献する考えだ。また、キャンペーンやイベントの企画、クーポンの配信など、売り上げ向上のための施策の検討時に活用できる。両社は「サキミル」を通して、データやAIなどのテクノロジーの活用により、業務効率化や販促などさまざまな側面から小売り・飲食業界を支援してDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。また、フードロスの削減や生産性の向上に貢献することで、SDGs(持続可能な開発目標)の達成を支援するとしている。




「サキミル」の特長



1. 各種気象データや独自のAIアルゴリズムの活用による高精度な予測

日本気象協会が保有する、気温・日射量・風速・降水・降雪・湿度・天気などの気象データを活用。また、ソフトバンクのデータサイエンティストおよび日本気象協会の気象分析データサイエンティストが、それぞれの専門スキルを生かして共同開発を行ったAIアルゴリズムにより、高精度な分析・予測を可能にする。




2. 人流統計データの活用で人々の行動を予測

ソフトバンクの携帯電話基地局から得られる数千万台の端末の位置情報データを基に、日本の人口約1.2億人に拡大推計した人流統計データを活用して、店舗周辺の商圏エリアの人流の動向を把握。これにより、過去の来店実績だけに頼らない予測が可能になり、新型コロナウイルスの感染拡大などで人々の行動が短期間で大きく変容した場合にも、最新の人流データを基に予測を行うことができる。なお、位置情報データは、個人が特定できないように匿名化し、統計的に処理したものを利用する。




3. 導入しやすい価格体系

一般的に、AIを活用したデータ分析により来店客数や商品需要の予測を行うサービスは、精度を高めるために企業のニーズに合わせて細かくカスタマイズすると、導入コストが高くなる傾向がある。「サキミル」は、クラウド型・汎用モデルとして、高精度なデータを基にした「来店客数予測」を1店舗当たり月額5,390円(税込)で提供、より導入しやすい価格体系とした。


なお、サービス開始時点では、仕様上、クライアント(店舗)のシステムと「サキミル」をAPI連携できることが導入条件となる。今後、継続してサービス開発を行うことで導入条件を緩和し、幅広いクライアントに導入できるようにする予定とのこと。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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