映画にも、医療にも。そしてドラえもんの手も!進化を続けるロボットアーム


意外と知られていないロボットアームの活用法

ロボットアームってご存知ですか?

多くの人にとってあまり馴染みのないこのテクノロジーは、実はメーカーの工場などで大活躍しています。産業用ロボットの一つとして、部品のピックアップから製造まで幅広く人を助けているのです。

そして今、このロボットの「手」はあらゆる場面で、新たな活用が始まっています。
ということで今回はロボットアームの新しい活用法をご紹介します!


ロボットアームの「進化」が映画を変える

ゼロ・グラビティ

昨年12月に公開された映画『ゼロ・グラビティ』。宇宙空間の息をのむような美しい映像とともに、リアルな無重力空間が描かれています。これらの映像、すべてCGかと思いきや、舞台裏ではロボットアームが活躍しているのです。

ゼロ・グラビティの撮影では、出演者を 操り人形 の様に12本のワイヤーで吊るし、ワイヤーを伸び縮みさせて役者を動かしました。そして、その動きに合わせてカメラやライトを搭載したロボットアームが自在に動き回り、撮影をおこなったのです。

ときには顔のすぐ目の前まで近づいたり、離れたり、あるいは回転したり。従来のモーション・コントロール・カメラだけでは不可能だったカメラワークを、ロボットアームを駆使することで可能にしました。

IRIS

この撮影にはBot & Dolly社の『IRIS』というモーション・コントロール・カメラロボットが用いられました。『IRIS』は、既存のモーション・コントロール・カメラのようにカメラワークだけをコンピュータ制御するのでなく、照明や撮影セット全てをプログラムによって制御し、リアルタイムに役者の動きを追尾することができます。

そのBot & Dolly社は今年、Googleに買収されました。今後Googleのコンテンツ内でその技術が用いられた”何か”を目にする機会があるかもしれませんね。

このように映画の表現の幅を広げるのに、ロボットアームが一役買っているということは、あまり知られていないことかもしれません。


ロボットアームの「精密さ」が命を救う

Da-Vinci

ロボットアームは医療の分野でも素晴らしい発展を遂げています。米インテュイティブ・サージカル社が開発した、Da-Vinci(ダ・ヴィンチ)はその一例です。

Da-Vinciには、先が内視鏡になっている複数のアームが搭載されています。
傷口を最小限にとどめる事ができる為、患者の負担が少ない内視鏡手術ですが、患部を直接見ながら手術をすることができないのでとても難易度の高い手術法と言われています。

Da-Vinciは普通なら人間が横に立つ手術台の上に覆いかぶさるように配置されます。
執刀医は遠隔地から映像を見ながら直感的にロボットアームを制御することが可能です。

Da-Vinci

加えて、単にディスプレイに映った2Dの映像ではなく、Da-Vinciに搭載された3Dカメラを用いることで、立体的な3Dの映像を見ながら手術をすることができるようになっています。

ロボットアームを用いて手術する方法には多くの利点があります。
例えば、Da-Vinciの場合、

1.人間の手の動きを任意の倍率に縮小した、精密な動作をさせることが出来る。
2.手ぶれ補正を搭載しているので、手の震えや意図しない手の動きを取り除いてくれる。
3.回転などの、本来人間の手では行うことのできない動きも可能。

など、ロボットならではの構造を武器に人間の欠点を補う動作をしてくれるのです。

将来、Da-Vinciの遠隔操作を用いて、遠く海外にいる名医の手術を日本で受けることができる、そんな日が来るかもしれません。


ドラえもんのような手をしたロボットハンド!

ロボットアームの先には、通常ロボットハンドというものが装着されています。
ロボットアームは腕のように、ロボットハンドは手のひらのように動きます。

このロボットハンドは開閉するものだけではありません。

「ドラえもん」の手のようなロボットハンドがすでに実現しているのをご存知でしょうか?


2012年に公開されたこの動画では、球体状の装置を取り付けたアーム(Universal gripper)が形を気にすることなく、物を次々に持ち上げています。こちらのロボットハンドは、アメリカの大学の研究者や国防総省の開発者、ロボット関連の企業の開発者といったスペシャリストで結成した開発チームによって作られました。

仕組みは至って簡単です。

風船の中には細かく砕いたコーヒー豆が入っています。
持ち上げたい物に押し付け、そして風船の中の空気をポンプで抜くのです。
そうすることによって、物を風船が取り囲んだ状態でコーヒー豆が密着して固まり、持ち上げることができます。

このアームの良いところは、様々な物を持ち上げることができるのに加え、細かい部品や閉開する構造がないので掴むものを傷つけない点です。

doraemon-hand

また、この技術の凄いところは、最新技術であるにもかかわらず風船・コーヒー豆・掃除機があれば個人でも簡単に作ることができるという点です。

もちろんまだ、確実に何でもつかみ取れるというわけではないですが、将来的にはロボットの手に使われているかもしれません。


まとめ

少し前までは単純作業しか出来なかったロボットアーム。
技術の進歩で、今ではここまで未来を感じることができる物に進化しています。

いつか人間の手を超える技術が登場してしまうのでしょうか? 今後に期待しましょう。

ABOUT THE AUTHOR / 

望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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