アスラテックとM-SOLUTIONSは、遠隔地から人間がPepperを操作することでコミュニケーションや見守りを行うしくみを、介護施設において実証実験を実施したことを発表した。
高齢者とオペレータがPepperを通して流ちょうに会話したり、オペレータが遠隔から見守りを行うことで、介護スタッフやヘルパーの負担を軽減したり、更に充実した介護サービスの提供を支援することが目的。このしくみにはアスラテックが開発した「VRcon for Pepper」(ブイアールコン・フォー・ペッパー)を活用している。
「VRcon for Pepper」はPepperをテレプレゼンスロボットとして活用することができる。
テレプレゼンスロボットとは、遠隔にいる人間の代理になって動いてくれるロボットのこと。欧米ですでに実現している例としては、顔の部分にディスプレイが配置され、遠隔地で操作する人間の顔がディスプレイに映し出されて会話ができる、言わばビデオ電話やフェイスタイムをロボット型に埋め込み、移動できるようにした形態が多い。
アスラテックの「VRcon for Pepper」は遠隔で人が操作するものの、高齢者から見える姿はPepperのみ。Pepperがまるで人間のように流ちょうに対応できる点が特長。
最近では、受付や案内所に配置されて活躍しているPepperだが、まだまだ「受け応えが十分ではない」「気が利いた案内ができない」などの課題がある。そこを補完するカタチで裏方や遠隔の人間がPepperの頭脳や会話を操作して対応を受け持つことができる。
アスラテックでは解りやすいイメージ動画を公開している
オペレータが話した声をそのままPepperで出力できるほか、オペレータが話した内容をPepperの声で変換して話したり(読み上げ)、キーボードで力した内容を話すこともできる。
操作する人間はスマートフォンをハコスコやGoogle Cardboardなどにセットしたり、VRスコープを装着することで、Pepperの視界を得て、人が首を傾けたとおりにPepperが頭を動かしてコントロールすることができる。同様にスマートフォンやタブレット、パソコンなどで操作することも可能。
今回の発表は、このシステム「VRcon for Pepper」を活用し、介護施設において十分な介護サービスの提供とヘルパーの負担軽減の両立の実現性を目指して実証実験を行ったもの。ヘルパーがPepperを遠隔操作し、離れた場所にいる介護サービス利用者に対してロボットを通じてコミュニケーションや見守りなどを行ったという。実証テストは東京都足立区の介護施設「わかばケアセンター」で2016年8月24〜25日に実施し、実際に多くの介護サービス利用者やヘルパーが体験した。アスラテックはソフトバンクおよびM-SOLUTIONSと協力し、今回の実証テストを体験した方の声も反映させて、介護施設でのPepperおよび VRconの本格導入に向けて取り組むとしている。
なお、ソフトバンクロボティクスが「VRcon for Pepper」を活用し、Pepperをテレプレゼンスロボットとして活用するシステムを「テレプレゼンス for Pepper」と呼んでいる。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。