ソフトバンクロボティクスは、Pepperの導入を検討している企業に対して、質問や悩みに個別に応え、実際にロボアプリを使ったデモが見られる「Pepper for Biz アトリエ ~体験スペース~」を全国5ヶ所(東京(秋葉原、蒲田)、大阪、名古屋、福岡)に設置していることを前回の記事「ソフトバンクがPepperビジネス活用の体験スペースを開設中 基本機能から価格、導入相談やサポート体制、デモと導入相談など、アトリエ秋葉原で体験してきた」で紹介した。
今回は引き続き第二回目として、Pepper for Biz アトリエの担当者のひとり、ソフトバンクロボティクスの事業推進本部の矢野覚士氏にPepperのビジネス活用状況を聞いた。
神崎(編集部)
「Pepper for Biz アトリエ ~体験スペース~」は全国5ヶ所に展開中とのことですが、その目的について改めて教えてください。
矢野(敬称略)
ソフトバンクロボティクスでは、汐留のソフトバンク本社内にもPepperのカスタマイズやシステム開発について個別にご相談を承るスペースがありますが、そちらは営業にご相談頂いた場合に対応することになっています。
アトリエの「Pepper for Biz アトリエ ~体験スペース~」はそれとは異なり、法人のお客様であれば誰でも、気軽にPepperを体験していただける場所として設置されました。「Pepperとはなにか」「Pepper for Biz ってなんだろう」というお客様もお気軽にお申し込み頂きたいと考えています。
神崎
ロボットブームということもあって「とりあえずロボットを研究してみよう」「うちの業務にロボットが使えるか調べたい」と考える企業も多いのではないでしょうか
矢野
とても多いですし、そういう方も大歓迎です。私達もお客様の希望する業務にPepperが向いているかどうか、ご相談を受けさせて頂き、お客様ごとに「Pepperをどのように活用できるのか」「どういうアプリが用意されているのか」「もっとPepperを活用する方法としてこんなこともできます」といった内容等でご提案させて頂くことも可能です。
更に言うとアトリエでは、検討の段階でなくとも「まずはPepperと会話して、体験してみたい」という方でもぜひご予約いただきたいと思っています。
神崎
Pepperをどのように使いたいという相談が多いですか?
矢野
企業では受付、イベントでの使用、プレゼンテーションや商品説明で使いたい、というニーズが多いですね。
Pepper for Bizでもっとも利用されているアプリは「ペップレ」や「ロボピッチ」などのプレゼンテーション用のロボアプリです。
■ペップレ
■ロボピッチ
矢野
プレゼンテーションや商品説明と言っても、動画を再生したり、PowerPointのアドオン機能で使うものなど、実はさまざまですので、ロボアプリマーケットに登録されているアプリについてもご要望があれば細かく説明するようにしています。
神崎
「ビジネスにロボットを使う理由」など、根本的な質問もあるんでしょうね
矢野
はい。その場合は、主に「人との違い」と「タブレットとの違い」を説明しています。
タブレットと比較した場合、Pepperの方が確実に足を止めてもらえるし、話も聞いてもらえるということが解っています。
「情報を伝える」という意味において言えば、人の方が情報を伝える能力は優れていることは間違いありませんが、例えばセミナーのような場所に登壇する場合、人間よりもPepperの方が聴く側に心理的な抵抗が少ないのではないかという実態もありますので、人に近いコミュニケーションがとれるけれども、人よりも接触しやすいという点を紹介しています。
だからこそ、Pepperがプレゼンテーションでよく利用されていると思いますし、新入社員説明会で使用したいという企業もあります。
神崎
イベント利用だけで検討している企業などでは稼働率では相対的に高額なイメージになりますね。同じ企業内でも、もっといろいろなシーンで活用してもらうとコストパフォーマンスが上がるのでしょうけれど。
矢野
そうなんです。Pepper for Bizは3年間の契約なので、できるだけ継続して長く使って欲しいと感じるとともに、できるだけ長い時間フルに利用して頂きたいと思っています。単発の用途でご利用頂くだけでなく、もっと有効活用できる方法を常に提案していきたいと思っていますので、既にPepperを導入して頂いているお客様にも、ぜひアトリエに来て頂いて、もっとほかにも活用する方法がないか相談して頂ければうれしいです。Pepperがフロアマップを案内したり、クーポンを発行したりなど、業務に活かした様々な使い方を提案していきたいですね。
神崎
現在は圧倒的に企業のビジネス利用が多いですか?
一般企業ではなく、介護や医療等の現場での利用は進んでいますか。
矢野
相談や導入件数としては、一般のビジネス利用が多いですがそれはやはり全体のパイが大きいからだと思います。
Pepperの介護利用の事例は既に多く紹介されていることもあって、感覚的には介護現場での導入に関しては注目度が高く、問合わせも多いように思います。
神崎
珍しい使い方の事例はありますか
矢野
珍しいというより、私が感心したケースがありました。ある経営者の方が言うには、Pepperを導入する目的は会社の将来のためということなんです。「今後は仕事の中でロボットを活用することが必須になっていくだろうから、今からPepperを導入し、社員にも将来のロボットとの協働を考えさせるべきだ」と考えていらっしゃいます。その意味でロボットを現場に導入することで社員がロボットにも慣れて、更にはほかの使い方を考える機会にもなるだろうということなのです。
神崎
なるほど、未来を見据えたロボットの導入ですね。
ほかに最近のおもしろい事例があれば紹介してください。
矢野
はい。例えば武蔵野銀行さんの「受付番号呼出システム」導入事例が印象的です。
銀行などの受付システムの事例はほかにもありますが、ひとつは待合の番号札を発行する機器との連携し、受付番号を発券するとともに、順番が来るとPepperが大きな声でお客様を呼び出してくれます。さらには来店客に天候に応じた挨拶を行ったり、Pepperが何もしていないときは近隣施設のイベント情報を喋って紹介するなど、来店客へのサービス向上や行員の負荷軽減を進めています。
■Pepper導入事例 武蔵野銀行
受付や挨拶の仕事も、他の機器やクラウドとの連携によって大きく拡張することも可能だ。
武蔵野銀行の「受付番号呼出システム」はフィンテック導入のあしがかりとして捉えることができる。ローレルバンクマシン(株)が開発した受付番号呼出システムと、(株)生活革命のロボット接客・受付システムと連動し、発券と窓口の案内はもちろん、「今日は雨で蒸し暑い中〜」など、その日の気温や天気を反映して挨拶にねぎらいの言葉を添えるなどの気遣いを加えた仕様を盛り込んでいる。また窓口案内をしていないときは、埼玉スーパーアリーナや埼玉県の公式情報提供ページから自動で情報を取得し、近隣施設のイベント案内などを行うことができる。
神崎
待合室でのPepper活用を考えると、お客を集めて楽しい雰囲気作りをする、いわゆる賑やかしについてはPepperは上手だけれど「会話はうまく続かない」「質問に対して十分に応えられない」という辛辣な意見もあると思います。
矢野
できるできないは別として、Pepperに強く期待されることは、喋ること、顔を認識すること、動くこと、だと感じています。喋ることと顔認識は開発が進んでいて精度も向上しています。例えば、顔認識ではヘッドウォータースさんが開発したシステムを紹介することがあります。また、カラオケのジョイサウンドで知られるエクシングさんの「健康王国トーク」も高齢者の顔を覚えて、名前を呼んで挨拶をしたり、個々人にあった会話をすることができます。
Pepperの基本機能だと数名から数十人が限度ですが、ヘッドウォータースさんが開発したクラウド連携のアプリパッケージ「SynApps」であれば人数の制限なく認識することができます。
あとは移動ですが、動くことを進化させるのは簡単じゃないのですが、トライアルとしてやっている会社はあるので、近い将来は移動するPepperがビジネスシーンに登場してくることを期待しています。
Pepperの会話能力には過度に期待されている部分があることも否めない。
沖縄銀行は株式会社リクルートテクノロジーズが独自開発した会話エンジンをPepperに流用し、会話の精度を向上させたと言う。この会話エンジンはLINEのアカウントのパン田一郎等で使用している「TAISHI」。金融知識を盛り込み、金融に関する会話業務も可能になるよう学習したエンジンとなっている。Pepperが聴きとった言葉はネットワークを通じてクラウド上にアップされ、意図解釈、辞書DBなどを参照し、0.5〜1秒でレスポンスを行うようになっている。
沖縄銀行は行員として活躍するPepperの愛称を募集し、応募総数512通の中から決定するなど、地域に密着したコミュニケーションをはかるひとつの方法としても活用した。ちなみに名前は、結丸(ゆいまる)、おっきー、おきまる。沖縄銀行の喋るアイドルになることができるだろうか?
神崎
最後に読者にひとこと頂けますか
矢野
できるだけ多くの人に「アトリエ秋葉原でPepper for Bizを体験することができる」ということを知って欲しいと思います。Pepperを見てみたい、どんなロボットなのか知りたいという人も気軽にご予約して頂ければうれしいです。
また、Pepperを導入したけれど、もっと有効に活用できる方法がないかな、と考えている方も是非、ご連絡ください。更に有効に活用する方法を一緒に考えていきたいと思っています。
前述のとおり「Pepper for Biz アトリエ ~体験スペース~」は、全国5ヶ所(東京(秋葉原、蒲田)、大阪、名古屋、福岡)に設置されている。詳しい情報や予約は下記のページから可能だ。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。