IBM Watsonがメールの最適な回答を提示する「テクノマーククラウド+」NTTデータ先端技術
NTTデータ先端技術のクラウドサービス「テクノマークメール」は企業のホームページの「お問合わせフォーム」や「サポートセンター」宛に届くメールの回答を、複数の担当者で対応している企業が導入の対象になるシステムです。既に、金融・メーカー・自治体など、分野や業種を問わず70社以上が導入していて、メール対応の効率化に成果を上げています。
そのシステムにはNTTデータ先端技術が開発した独自の日本語解析エンジンが搭載されていますが、同社が社内でIBM Watson 日本語版(以下Watsonと表記)と連携したバージョンとの比較検証を行ったところ10%以上も正答率が向上した結果が出たと言います。
その結果を受けて、昨年11月、Watsonと連携した「テクノマーククラウド+」をソリューションパッケージとして発表したのです。
その特長としくみ、利用料金などをNTTデータ先端技術の小谷氏に聞きました。
メール対応ヘルプデスクの現場
メールの問い合わせ件数が増えてくると様々な問題が起こり、業務を煩雑にします。
件数が増えれば対応の回答パターンが増えることはもちろん、キャリアが浅い(スキルが低い)担当者が適切な対応ができずにこじらせてしまったり、CC(同報送信者)が増えることによってメール件数が雪だるま式に増えたり、返信すべき担当者が不明瞭になって回答の出し忘れが発生したりと、問題も出てきます。
これらの課題を解決するのがテクノマークメールであり、今回紹介するのはその拡張版のテクノマーククラウド+です。
拡張版「テクノマーククラウド+(プラス)」は昨年10月末にソリューションパッケージとして発表されました。大きな特長が3つあり、そのうちのひとつに、Watsonと連携して人工知能技術がメールの用件を理解、回答内容のひな形を担当者に提示してくれる機能を持っています。これが今回のコラムで伝えたい新しい特筆点となります。
【テクノマーククラウド+の3つの特長】
- 問い合わせワールフローによる統制/管理
- ナレッジマネジメントサイクルのサポート
- 人工知能によるオペレータ支援
サポートセンターに問い合わせた経験は誰にでもあると思いますが、問い合わせ先の担当者のスキルによって満足度が大きく異なります。
とはいえ、現実的にはサポートセンター側は常にベテランの担当者だけを配置しておくわけにもいかず、経験の浅い担当者は多忙なベテラン担当者に質問するのも難しい環境にあり、顧客に早く回答したいという気持ちとの板挟みとなり、大きなストレスを抱えているのが現状です。
Watsonによる回答支援
Watsonの最も大きな特長のひとつは、様々な聞き方に対して適切な回答を返すことができる、ということです。それは音声対話でも、メールのようなテキストでも同じく有効です。
例えば、自動車保険のサポートデスクを例にすると「タイヤがパンクした」「車の空気が抜けた」「輪っかがペチャンコだ」「バーストした」等、聞き方や言い回しは異なっても、返すべき回答は同じです。
特定のシナリオに対して回答するルールベース・システムでは、このたくさんの言い回しの違いによって質問事項が膨大になり、それが負荷となったり、回答の精度が落ちる、という課題があります。
Watsonは言い回しの違いを同じ質問内容であると理解して適切な回答を返すという部分が優れています。
ベテランの担当者らによって教育(機械学習)されたWatsonが適切だと判断した回答を、担当者のパソコン画面上に表示することで、担当者はその内容を確認し、自分も正しいと同意すれば、簡単な操作で送信して回答業務を行うことができます。
経験が浅い担当者にとっては心強い支援となると考えられます。
メーラの操作画面は大きく3つに分割されています。
件名とお問い合わせ内容、コンタクト履歴(この顧客から過去に受けた問い合わせ内容)、最適な回答の候補が表示されます。
Watsonは登録されているFAQのデータベースを参照し、類似の問合わせを発見したら、回答の形式で表示します。この内容も繰り返し機械学習の対象になるので、FAQの通りの回答が正答なら精度は更に向上していきます。
Watsonが提示した回答が適切ではないと判断した場合は、担当者が手動で検索することができます。それをこの質問に対して適した回答として送信した場合は、Watsonの回答より手動検索した回答の方が適していたことがフィードバックされます。
このサイクルを回せば回すほど、Watsonへのフィードバックが蓄積され、回答精度が上がり、業務の効率化が加速することが期待できます。
テクノマーククラウド+の利用料金
気になる「テクノマーククラウド+」の利用料金は、同時にログインするユーザー数によって料金が異なってきます。サポートデスクで言えば席数ですが、カウント方法が「同時ログインユーザー」であるため、席数は10あったとしても、同時にテクノマークメールにログインしているユーザーが5人であれば「5ユーザー」のライセンスで使用できるということになります。同時に対応する担当者の数が5人の場合は、初期登録費用が30万円、月額が24万円となります。1担当者あたり月額4万8千円の計算です(すべて税抜)。
最大3ヶ月間のお試し期間もありますので、興味があれば問い合わせてみては如何でしょうか。
次は製薬業界に詳しい木村情報技術が開発したAIチャットボットソリューション「AI-Q」を紹介します。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。