未来の部屋を体験できる、「&AND HOSTEL」にしかない提供価値
「&AND HOSTEL」には、個室部屋が全部で6つ、その他ドミトリータイプの部屋が2部屋用意されている。個室6つのうち4つがIoTルームとなっており、各部屋では5種類のIoTデバイスを体験することができる。
IoTセミダブルルーム
IoTセミダブルルームでは、「MESH」「IRemocon」「Qrio Smart Lock」「Philips Hue」「mornin’」の5つのプロダクトを体験することができる。
MESHは、ソニーの新規事業創出プログラムから生まれた新しいツール。「タグ」と呼ばれる各種センサーを配置し、専用のアプリからつなぐことで、「湿度が下がって乾燥したらメールで通知する」といったデバイス間連携を容易に行うことができる。
この部屋には、カーテンレールにめざましカーテンの「mornin’」というデバイスが設置されており、MESHの「明るさタグ」と連携することで「朝明るくなったらカーテンを開ける」というデバイス間連携が行われている。
また、そのほかにも受付で渡されるスマホにインストールされた専用アプリからスマートIoT照明「HUE」を操ることで部屋の色合いを変えることができたり、IoT連携の高機能学習リモコン「IRemocon」に指示を与えることで、テレビやエアコン操作も行うことができる。
ドアには「Qrio Smart Lock」が備わっており、こちらもスマホアプリから鍵の開け閉めの操作が可能だ。
取材に際し、担当者にお話を伺ったところ、「&AND HOSTEL」では、IoTデバイスを用いて「ビジネスをしていく」という姿勢を強く感じた。全ての部屋がIoTルームになっていない理由については「コストとのバランス」であること、また一部の部屋がIoTルームになることで「それ以外の部屋の宿泊料の相場も上がる」ということを明かしてくれた。
導入されたIoTデバイスの選定については、1号店をオープンしたことで各メーカーからの売り込みがあったようで、その中からきちんとユーザーに価値を提供できるものを採用したのだという。物珍しさ、注目度が先行してしまうIoTデバイスを、きちんと利用していきたいという意図が感じ取れる。
IoTを繋げるシステムを持ち、デバイスの知見も溜まった同プロジェクトは、容易に横展開が可能になるだろう。
支持される理由は「未来の体験」と「交流」
今回「&AND HOSTEL」を覗いた最初の正直な感想は「狭い」だった。客室も広くはなく、「ホテル」ではなく「ホステル」なだけあり、階段も廊下も広くはない。
ただ一方で、客から支持され、2店舗目を出店するに至った理由も理解できる。最新のIoTデバイスを一挙に体験できる場所は他には見当たらず、テクノロジーが好きな方にとっては貴重な場所だ。「未来の家」を体験するという意味では、有意義な宿泊施設になるだろう。
また、ホステルならではの外国人客との交流も体験として興味深い。個室以外にベッドが複数並んだドミトリールームがあるが、そこにはバックパッカーの外国人旅行者が多く宿泊している。英語が堪能な方であれば、テクノロジーに対する「すごい」という共感・共通の話題を持つことで、最初の喋るきっかけが生まれそうだ。
外国人観光客が今後ますます増えていく日本においては、最先端テクノロジーの体験と同様、外国人客との身近な交流も「未来の体験」と言えるのかもしれない。
ABOUT THE AUTHOR /
望月 亮輔1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。