ソニーは来春「AIBO」で再参入。トヨタ、NTTなど「国内大手20社」のロボット事業の動向を一挙紹介

インバウンド対応をする存在として、高齢者を楽しませる存在として、人間の新たなコミュニケーションパートナーとして、世界中で数多くのロボットが発表されている。特に日本では、2014年にソフトバンクから発表されたPepperを皮切りに、名だたる大手企業が一挙に参入しているのが特徴だ。


ロボスタが半年に一度発表しているロボット業界のカオスマップ。PDFはロボットライブラリから無料ダウンロードが可能。

スタートアップがクラウドファンディングを活用して新たなコンセプトのロボットを生み出す一方で、大手各社は研究所で培ってきた成果をもとに、あるいは買収を通じ、他社に勝るロボットを作り出そうと動いている。家電や自動車のメーカーが参入しているだけでなく、通信大手3社が参入をしているのも興味深い。

ソニーが2018年春よりAIBO事業に再参入をするといった報道が出るなど、この活況はまだしばらく続きそうだ。今回の記事では、日本の大手企業計20社のロボットに関する動きを紹介していく。なお、ここでは安川電機やファナック、デンソーなど、ロボット業界の既存の大手プレイヤーについては触れていない。


トヨタ自動車株式会社

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生活支援ロボット「HSR」

これまで生活支援ロボット「HSR」などを開発してきたトヨタ。シリコンバレーに拠点を置く同社の研究所「TRI(Toyota Research Institute)」がロボットやAI関連企業への投資を加速しており、急速にロボット・人工知能領域での存在感を増している。TRIの所長には、DARPAロボティクス・チャレンジのプロジェクトマネージャーを務めたギルプラット氏が就任するなど、優秀な研究者・技術者の囲い込みを世界規模で行っている。

トヨタのHSRは、高齢者の方や障害者の方が、家の中で自立した生活ができるように支援するロボット。最大速度は時速0.8km、重量は37kgで、高さは100.5cm~135cmに可変できる。遠くにあるものを拾ってきたり、遠隔操縦でカーテンの開け閉めをしたり、家の中の様子を確認することが可能だ。持てるものは重さ1.2kg、幅13cm以下のもので、ゴミを拾ったり、棚から物を持ってきたりすることもできる。HSRは、ロボットの競技大会「ロボカップ」のホームリーグにて公式のロボットとして採用されている他、2020年に向けて着々と準備が進められている「World Robot Summit」でも標準ロボットとして採用される。


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「KIROBO mini」。座った状態で10センチ程度のサイズ

またトヨタは、コミュニケーションロボット「KIROBO mini」を発表。全国販売に先立ち、東京都・愛知県の一部販売店で先行販売を行なっている。

専用アプリをインストールしたスマートフォンとBluetooth経由で接続することで立ち上がる。本体価格は39,800円で、アプリ利用料として月額300円がかかる。胸にはトヨタのロゴがでかでかと入っている。この分野を推し進めていく力の入れ具合を感じる。

このように、数々のロボットの開発を進めてきたトヨタ。本業の方でも、大学や企業と自動運転に関する研究を幅広く進めるなど、世界での存在感を示している。今後のロボット・自動運転での展開に世界中から注目が集まっている。


ソフトバンク

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ロボットだらけの携帯ショップで店舗に立った「Pepper」

今回の第3次ロボットブームの火付け役にもなったコミュニケーションロボット「Pepper」を開発・販売するソフトバンクグループ。Pepperに関わってきた人たちにとっては、開発会社のソフトバンクロボティクスに馴染みが強いが、その他にもソフトバンクC&Sがロボットの流通部門の事業化を推し進めるなど、グループ全体でロボットやIoTへの取り組みを行っている。


ARM

ソフトバンクワールドの基調講演の様子

ソフトバンクは昨年、半導体大手のARMの買収をおこなったことが話題になったが、同グループ代表の孫正義氏によれば、ARMが世界中のIoT機器のセキュリティ対策の”鍵”を握る存在になるという。3.3兆円という買収も、今後を見据えると、お得な買い物だったという印象を持っているようだ。

また、今年はなんと、あのボストン・ダイナミクス、そしてシャフトの買収と立て続けにロボット会社の買収を行なってきている。同社が立ち上げた「SoftBank Vision Fund」は、10兆円もの出資コミットメントを取得しており、以降も様々なロボット企業への出資を続けている。次のSoftBank Robot Worldでは、その一端を見ることができるだろう。

肝心のPepperは、法人向けの販売に力を入れている。法人向けモデルである「Pepper for Biz」には、店舗や受付など業務内容に応じてすぐに活躍ができるように、充実したロボアプリパックが整えられている。また、台湾や中国などに向けた世界展開もスタートしている。アメリカでも少しずつ、実証実験などを進めながら展開されているようだ。ロボットやIoTの話題では、今後もソフトバンクが中心になることだろう。個人的には、ボストン・ダイナミクスのロボットのビジネス展開が気になる。


NTT

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NTTドコモは、後述するタカラトミーとともに、2015年10月にコミュニケーションロボット「OHaNAS」の販売を開始した。オハナスには、NTTドコモが所有するしゃべってコンシェルの技術が搭載されている。オハナス自身に可動部位がなく、機能の多くをスマホアプリ側に持たせているため、価格も約2万円と他のロボットと比較しても安い。しりとりや占いなど、会話を使った遊びを楽しめるほか、クックパッドやぐるなびと連携しているため、これらのサービスを使ってレシピやオススメのレストランを教えてもらうこともできる。

2016年5月には、「おしゃべりロボット for Biz」という形で、法人向けの販売スタートしている。自社の商品等に関わる話題をシナリオとして作成することで、お客に対して商品紹介をさせることもでき、店舗や受付などでの導入を進めていきたい考えだ。


NTTがロボット用クラウドサービス「ロボコネクト」を発表、全国7万の介護施設のうち1万施設へのロボット導入を目指す
また、NTT東日本では昨年9月から「ロボコネクト」の提供を開始した。ロボコネクトは、ロボットに搭載するクラウドサービス。最初の対応ロボットにヴイストン株式会社の「Sota」を選び、介護施設向けにロボットごと提供していくところから事業をスタートする。

ロボコネクトでは、基本アプリケーションの他に付加アプリケーションが準備されており、役割に応じてSotaをカスタマイズすることができる。将来的には、全国で7万ある介護施設のうち1万施設への導入を目指しており、介護施設を皮切りにロボコネクトを広めていきたい考えだ。

そして、先日開催されたCEATEC JAPAN 2017では、NTTグループ各社が保有するAI技術「corevo(コレボ)」と、トヨタが開発を進めている生活支援ロボット、HSRを活用して、日常生活の様々なシーンにおける行動支援を実現する共同研究を開始したことを発表した。同展示会で行われたデモでは、前述のSotaとHSRが協働による接客サービスを行なった。今後も、corevoを中核とした、ロボットサービスの展開を行なっていくことだろう。


シャープ株式会社

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ロボホンの発売時の記者会見の様子

台湾の鴻海グループの傘下に入ったシャープは、2016年5月にロボット携帯電話「RoBoHoN(ロボホン)」を発売した。ロボホンは、身長約19.5cm、重さ約390gの二足歩行ロボット。サーボモーターが13個搭載されており、9軸(加速度3軸、地磁気3軸、ジャイロ3軸)のセンサーの他、照度センサーも搭載されている。ロボホンのデザインはこれまで数多くの人気ロボットを生み出してきたロボットクリエイターの高橋智隆氏。「ココロ、動く電話」というキャッチコピーがつけられている通り、自身が二足歩行で歩くことができるだけでなく、会話やお出かけなど日々の生活を通じて、人のココロを動かすようなロボット携帯電話を目指している。


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ロボット携帯電話「ロボホン」

広島の工場で専用の小型サーボモーターを開発するなど、細部へのこだわりにより、ロボホンは完成度の高いロボットとして市場に投入された。まだまだ販売数が伸び悩む一方で、購入したユーザーの評価は非常に高い。


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胸にはハート型のジルコニアが埋め込まれていたことが、発売から約4ヶ月後に明らかになった。

定期的に行われるアップデートにより、ロボホンは目に見えて賢く進化しており、アップデートのたびに新たなロボホンアプリも追加されている。アプリが充実することでユーザーの評価はさらに上がり、口コミで徐々にロボホンの良さが広まっていくことだろう。

そして、先日廉価版のWi-Fi専用モデルが発表された。これにより、法人での導入も伸ばしていきたい考えだ。アプリデベロッパーへのSDKの提供や、認定デベロッパー制度の取り組みも行われており、今後のアプリの充実が一般向け及び法人向けの導入に繋がっていくことに期待したい。


ソニー株式会社

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ソニーが再参入を発表したAIBO

ソニーのロボットといえば、犬型ロボット「AIBO」を思い浮かべる人が多いはずだ。AIBOは、1999年に初号機である「ERS-110」を発売。20分間で3,000台を販売するなど、世の中に大きなインパクトを与えた。その後ERS-7シリーズまで進化を続け、2005年に販売を終了した。多くのユーザーがAIBOに愛情を注いでいたことは、AIBOの葬式まで執り行われたことからも理解が容易い。

ソニーはそのAIBO事業へ、2018年春、再参入を行う。日経新聞が報じたところによれば、「AI技術の深層学習を取り入れ、ネットにつなげて家中の家電製品を操作する機能も持たせる」のだという。

今回のロボット事業は、3年程度での事業化を目指すこと、「脱娯楽」を前提に開発を進めていることを共同通信が以前伝えていた(現在はリンク切れ)。脱娯楽という報道からのAIBOの発表。AIBOをただのペットではなく、役に立つペットにしていくという意味なのだろうか。

また、ソニーは、新規事業創出プログラムとして進められている自社の共創プラットフォーム「First Flight」にて、「ソニーのおもちゃ」と銘打った「toio」を発表した。このtoioは、同社が培ってきたロボット技術が投入されている、新感覚のおもちゃだ。12月1日に発売予定で、価格は基本セットが21,557円(税込)。子供達の想像力を掻き立てる、新世代のおもちゃになる可能性もあるだろう。

ソニーはロボット・AI領域への出資を行う100億規模のファンドも設立している。これまで、AIBO以外にも、世界初の走るヒューマノイドロボット「QRIO」等を開発してきた実績を持つソニーの、これからのロボット事業に期待しているロボットファンは少なくないだろう。

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望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。元ロボスタ編集長。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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