【総力特集】SoftBank World 2015レポート~その9「最先端のロボット技術をビジネスに生かす!」
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7/30〜7/31開催の「ソフトバンクワールド2015」。ロボットスタートも参加してきましたので、Pepperを中心としたロボティクスに関するプログラムを一挙紹介していきます!
■最先端のロボット技術をビジネスに生かす!
これまでロボットとはあまり縁のなかった消費財の事業担当者。それが、ビジネスとして投資効果を十分に期待できる形でPepper1,000台導入を命題として与えられたとき何を考えたか。プロジェクト立ち上げから導入に至るまで、実際に関わったからこそお話しできる生の体験や、今後どのような展開・発展を見据えているかについてお話しできればと考えています。
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ネスレ日本株式会社
コーヒーシステムビジネス部 部長
大谷 謙介 氏
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昨日から会場内をいろいろ見て回ったのですが、私たちがこの会場で一番IT業界から遠い業界と思いました。
どうしてそんな人間がここに登壇しているかというと、私たちがPepperが発表されてから一番最初のPepper B2Bプロジェクトをとりかかれたからです。
私たちのような食品メーカーでも新しいテクノロジーである「ロボット」を取り扱うこともできると思います。
メーカーの方は是非参考にして欲しいし、ITの方はメーカーが考えているのはこんなことなんだと参考にしてください。
ネスレはコーヒーの粉をずっと売ってきたメーカーです。最近はコーヒーメーカーを売っていたりもします。
日本の状況を見ると、少子化が進んでいるし、家族でコーヒーを飲むというよりも一人一人がコーヒーを飲むということになったり、カフェでも各々がコーヒーだけではないいろいろな種類を飲んだりしているという変化が起こっています。
そんな中、食品メーカーなのですが、現在コーヒーメーカー市場ではNo.1となりました。
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去年の上期にソフトバンクが初めてPepperを発表しましたが、我々の社内で新しいテクノロジーを扱おうと考えていた時期にちょうど合致して、マーケティング的にPepperを活用しようという話になりました。
マーケティングとは、何かを解決するという職種です。
物が売れなくなったらマーケティング担当者はどうするか?
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今までは、マスメディアを活用するという方法をとってました。メーカーとしては便利ですが、消費者から見ると、企業のメッセージが溢れている時代にはうんざりされてしまいます。そのアンチテーゼとして、近年口コミが広がってきてると言えます。
次は店頭コミュニケーションをしようと試みます。ポスターを作ろう、リーフレットを作ろうとするのですが、これもマスメディアと一緒です。店頭にはあらゆる商品のリーフレットがあって、情報が乱立してしまう状態となります。
最後は、実際に試飲してもらう方法があります。これは消費者にとっては優しい形ですが、問題はコストが比較的高くなってしまう。ネスレが取引している家電量販店2,000店で試飲をすると、1日5,000万ほどかかる。すぐに予算が尽きてしまいます。
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ここでPepperがいいソリューションになるんじゃないかと考えました。Pepperはハイスペックフル機能の販売員になれるんじゃないか?と。
マイクやカメラがありコミュニケーションが取れるし、タブレットもある。情報更新が頻繁に行えると思いました。ポスターだと一回作るとしばらく変更はできません。タブレットなら毎日情報を取り替えても大丈夫です。そして、Pepperだと販売員の質の均一化も可能です。
そこでソフトバンクさんに販売員として使いたいとお願いしました。
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Pepperは消費者にとって価値のあることができるんじゃないかと思いました。
・消費者の欲しい情報
・正確な情報
・最新の情報
・エンタテイメント
仮に2,000台のPepperだったとしても、メーカーとして正しい情報を提供することができる。明日新製品の発表があったとしても、今からでも情報の更新が行える。
Pepperは会話も行えるので、集客効果もある。
そこで、なんとかツテを使ってソフトバンクさんにお会いし、今お話ししたようなことをプレゼンしまして、去年の12月1日はじめてPepperをB2Bで使用しました。
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試みとして斬新でした、数億円のプロモーション効果があり、全世界ほぼすべてのメディアで取り上げられて、各国のテレビ局も取材にきました。
Pepperは接客人数もカウントできるので見てみると、安定して集客も増えていることがわかりました。10%-20%増で売れ続けています。
現在、家電量販店50店舗ほどに展開していて、ソフトバンクさんから100台弱Pepperを供給してもらってます。
ここまでは序章です。
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マーケティングには悩みがあります。
・消費の実態がわかったようでわからない…
・調査をしても新しい発見が少ない
よくあるオンラインの調査だと意識調査になります。大量の回答をすぐに取れるといういい点がありますが、一方で精度に難があります。
精度を深くしようとするとグループインタビューとなるんですが、それはそれでマスのデータとして扱っていいのかと悩みます。
ネスレという会社は食品メーカーとしては珍しく、デジタルやオンラインに取り組んできました。
ネスレ会員は現時点で400万人登録してもらってます。そこにEコマースをつなげているんですけど、400万人分のプロフィールや購入履歴などの情報をとることができます。
我々ではIoTに注目しています。
残業をしていると、社内の担当者が商品をみながら「うーん。どうしてお前は売れてるんだ」ってつぶやいてたりします。でも、商品には目や耳や口がないから、商品に問いかけても答えはわかりません。
IoTをつかうことで、今まで取れなかった情報が取れるようになると思います。いつどこでどのように飲まれているかといった情報です。正確な情報が取れるんではないかと思っています。
現在、販売員として使っているPepperは不思議な存在で、IoTと人の物の中間と思っています。Pepperでしか取れない情報が出てくるんじゃないかと考えています。
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まとめると、1,000台のPepperが60人の人と365日対応すると、2,000万以上のデータが取れます。今後コーヒーメーカーの出荷も増えていきます。オンラインのユーザも増えていくと、様々な経路から延べ2,000万以上のデータが手に入り、嬉しい悲鳴となります。
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2,000万人分のデータ処理がメーカーでできるかというと、現状難しいです。Pepperから得た情報をEコマースと結びつけられるかというと、難しいと思います。
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例えば、梅雨の時期になってコーヒーの消費が減ってるとします。今のデータやIoTでは分析は難しいと思います。今後は、データの整備等を行う必要があると考えます。
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現在のデータを一人の担当者の脳みそで覚えられるかというと無理です。担当者を100人に増やしても無理です。ここで注目しているのがAIです。具体的にはIBMのワトソンになるでしょう。
我々は、新しいテクノロジーを使って新しいビジネスを作りたいと思います。メーカとしてテクノロジーを取り入れて、競合優位なビジネスモデルを作っていきたいです。
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Pepperなどで情報を収集して、ワトソンで処理をする。そんな時代になっていくと思います。
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北構 武憲
本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。